公孫龍 巻四 玄龍篇(宮城谷昌光/新潮社)
宮城谷氏の『公孫龍』は、第四巻で完結した。
なお、第三巻の末尾に「名家としての公孫龍」が登場したのは、主人公とは別人であることを示しただけで、第四巻では登場しない。
戦国時代末期。公孫龍は、表向きは商人として活動しつつ武力も蓄え、小国並みの勢力を築いている。
第四巻は、「和氏の璧(かしのへき)」のエピソードから始まる。公孫龍は趙の恵文王からの依頼により、使者として秦に赴く藺相如(りんしょうじょ)に同行する。
という具合に、義に基づいて趙や燕、周王室を助ける働きをする。作者は、その働きはあたかも、諸侯を扶助する王のようだ、と作中の人物に語らせる。
やがて、時代は動く。孟嘗君の死、燕の昭王の死、楽毅の亡命。孟嘗君や楽毅が弱国を助けて強国を討ち、諸国間の均衡を保っていた「大志の時代」が終わり、新たな時代へ。
公孫龍は、その時代を、歴史的な事実を曲げることなく、かつ、重要な局面で大きな働きをして、さっそうと駆け抜けていく。
そして物語は、彼が呂不葦の店を訪れる場面で終わる。