少し偏った読書日記

エッセイや軽い読み物、ミステリやSFなどエンタメ系、海外もの、科学系教養書、時代小説など、少し趣味の偏った読書日記です。

おおいなる眠り

2019-07-08 22:40:03 | 読書ブログ
おおいなる眠り(レーモンド・チャンドラー/ハヤカワ・ミステリ文庫)

村上春樹訳のチャンドラーを、7冊全部、読み終えた。より暴力的で、法の限界まで踏み込むマーロウや、簡単に女と関係を持ってしまうマーロウなど、年齢とキャリアに応じて様々なバリエーションがあるが、一貫しているのは、独特の意味合いでのタフさと、それに見合う気の効いたセリフと。

以前に紹介した『ロング・グッドバイ』がベストだと思うが、細かいランク付けはせずに、全体を通しての印象を少し。

まず、村上春樹の文章と作品世界の相性のよさ。原文に忠実な訳に努めていると思うが、彼が作品に惚れ込んでいることは十分に伝わってくる。
もうひとつは、アメリカという社会の複雑さ。民主主義を成り立たせるさまざまな仕組みが息づき、極めて合理的な社会制度を築き上げる一方で、銃規制に失敗し、さまざまな分野で顔役が幅をきかせる、不思議の国アメリカ。それはマーロウが活躍した時代だけでなく、現代ともつながっている気がする。トランプ大統領という悪夢は、まちがいなく、アメリカの一面だと思う。