少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

風の名前

2021-01-17 14:56:11 | 読書ブログ
風の名前(パトリック・ロスファス)

久しぶりに、ハヤカワ文庫のファンタジーを読んだ。シリーズものの長編としては、ミストボーンシリーズ以来か。

キングキラー・クロニクルの第一部として描かれる本作では、放浪の民の少年が、おとぎ話の悪人たちに一族を皆殺しにされ、十代前半を生き延びた後、若くして大学への入学を認められる。魔法学校を舞台とする点で例の作品と比べられるのは避けがたいが、ハリポタは内容に比べて人気が高すぎ、もっと面白い作品はいくつもある、と思っている。本作は、その好例である。

第三部まで書かれる予定で、第二部「賢者の怖れ」はすでに刊行され、勢いで読んでしまった。第三部はこの夏に原作が発売されるらしいが、日本語訳はまだ先のようだ。

チャイナ・セブン<紅い皇帝>習近平

2021-01-17 09:49:56 | 読書ブログ
チャイナ・セブン<紅い皇帝>習近平(遠藤誉/朝日新聞出版)

6年余り前に、朝日文庫から出た『チャイナ・ナイン』を読んだ時の衝撃を覚えている。そこには、上位9人の多数決ですべてが決まる中国の権力構造と、習近平が国家主席に選ばれた経緯が、克明に描かれていた。ここまで内実を暴露して大丈夫なのか、と心配になると同時に、あとがきに記された著者の覚悟を読んで、心を動かされた。

その本で、9人が7人に変わったこと、その事情は近く刊行される『チャイナ・セブン』で解説する、との予告があった。文庫での続編を期待するうちに年月が流れたが、ついに文庫化されることはなく、ようやく最近になって手に入れた。刊行は2014年11月だから、文庫本のすぐ後に出たことになる。

この本では、習近平の生い立ちを詳細に記述し、そこから彼の改革の意図を読み取っている。また、次期チャイナ・セブンの予想もしている。現時点で振り返ると、その分析は正確だが、一点で大きく異なっている。従来の慣行では、国家主席は2期までで、次の国家主席になる人物が、2017年に選ばれるはずだったが、実際には選ばれなかった。習近平は、自ら国家主席を3期以上務める道を選んだのだ。この本の執筆時点でそれを見通すことはできなかっただろうが、著者のその後の記事を探すと、そのあたりの事情も解説している。

著者は、習近平が改革と強権の路線をとらざるを得ない事情を読み解きつつも、最後は「自由と民主」が勝つはずだと信じているようだ。しかし、私はそれほど楽観的になれない。

ユヴァル・ノア・ハラリは『ホモ・デウス』の中で、人間至上主義に替わってデータ至上主義が優勢になれば、自由主義と民主主義は、発展の必要条件ではなくなると示唆している。

この予言が実現しないことを、強く願っている。