さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

ブルース・チャトウィン『パタゴニア』

2017年01月17日 | 
 年末からずっと頭痛がひどくて、脳を検査してもらった。別に異常なし。昨年は腰の椎間板ヘルニアになり、それは痛みも消えて一応直ったのだけれども、今度は首の骨が変形していることが、その時のレントゲンで判明した。それが痛みの原因らしい。あーあ。それで、本の話でも書いてみようかと、思った理由は、このつながりが自分でもよくわからないのだけれども、いたた、いたた、と言いながら年末に読んでいたのは、

池澤夏樹編集の世界文学全集に入っている『パタゴニア』ブルース・チャトウィン著。芹沢真理子訳。

私はたまにケーブル・テレビでやっている西部劇を見る事があるのだが、この本には、そういう西部劇の何十本分の内容が、ぎゅっと一冊に詰め込まれている。南米に渡ったヨーロッパからの移住者たちの話と、彼らがかかわったインディオたちとの交渉史をベースにして、筆者が次々と生き残っている人々を取材しながら訪ねてゆく紀行文は飽きない。年末年始は、本はほとんどこれしか読めなかったのだが、十分に埋め合わせとなる一冊だった。そもそも私がパタゴニアに興味を持ったのは、椎名誠の『パタゴニア』という本を読んだからだったのを今思い出した。

しかし、現代は地図にあるパタゴニアの地名を検索で打ち込むと、すぐにペンギンの写真やら、人の気配があまりしない家屋や、港の船の写真などをすぐに見る事ができるのだから、世の中も変わったものだ。日本では、私は行ったことはないが、たぶん十三湖とか、そんな感じの人の気配の乏しい土地なのだろう。それでもしっかり文化の伝統と言えるようなものがパタゴニアにはあるのだ、ということを著者は熱っぽく語っている。パタゴニアは人間の希望や夢と、失意や幻滅とが交錯する土地なのだ。そこに人間の感傷とは無関係な自然が、あかるい虚無のすがたで佇立している、これはそういうパタゴニアを愛してやまない人のつづった旅行記である。




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