さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

中河與一編『女流十人歌集』

2016年11月04日 | 現代短歌
一太郎ファイルの復刻。かなり前のもので、中澤系さんの歌集が出る直前の文章だ。

〇余白に〇 
 
 昭和十七年五月刊の中河與一編『女流十人歌集』を先日入手した。中河與一の短歌史における位置の微妙さもあるのだろうが、あまり話題にのぼらない本である。

 序文には、「思ふにわが国文芸の中心としての和歌の大半は女流によつて支へられてゐたのであつて(略)それは多くの男性をしのぐ優美の感情と、心を展かしめる放胆を歌の形式に託して歌ひいでてゐるのである。」とある。

 十人の顔ぶれは、与謝野晶子、四賀光子、若山喜志子、今井邦子、杉浦翠子、中河幹子、岸野愛子、吉川たき子、齋藤史、倉地與年子。

 編者は「自分はこれを大胆に選出したのである。世間の常識に従はず、昨今の和歌の危機を嘆くが故に寧ろおほらかに伝統の発想を女流の詠風の中に求めようとした。」とのべている。集中には日中戦争、欧州戦乱、対米開戦の衝撃が色濃く出ている。岸野愛子という大連に住み、歌誌「ごぎやう」に所属していた人の歌を一首引いてみる。

  わが念ひうちにしのべば流星の地にひきおとす光せつなき  岸野愛子

悪くない歌だと思う。話は変わるが、近いうちに中澤系さんの歌集が出る。中澤さんは難病で療養中である。  (さいかち真)


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