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弁当屋「弁菊」に嫁いだハナは「丙午」の生まれを昔から疎ましがられ肩身が狭い。丙午の女は気が強いとか、亭主を食い殺す、火事を呼ぶなどと言うからだ。
嫁いでからも何かにつけて言われるが、舅、姑や夫に仕え懸命に家業を切り盛りしている。
時代は昭和14年から戦後の数十年の話。まだ下町の風情が残り、良くも悪くも隣近所が銭湯で裸の付き合いをしていた時代。夫は兵隊にとられ家業はさらに忙しく、ケガや病気でもゆっくり休む暇がなく立ち働く。夫は復員し家業が落ち着くと浮気するが、ハナはそれにも目をつぶり家と家族と家業を支え生活する。
今からは考えられない、プライバシーもなく、親の意見には逆らえない時代、ハナは自分を犠牲にしながら、しかし着実に実績をあげ居場所を作り、自分の意思を通すしたたかさも身に付けていく生き方に、懐かしさと共感を覚えました。
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子育ての忙しい時に読めなくて、最近手にとったら随分年数が経っていた事に驚きました!
テレビでも大活躍され、青島さんの母の事を書いたこの小説で直木賞を受け、その後都知事にもなりました。今はどうされているのでしょうか?
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