昨日、ヨー・ヨー・マのコンサートに行ってきました。
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ピアノとのデュオで、演奏曲はヘンデルの「マカベウスのユダ」(表彰式の時に流れる音楽「勇者は帰る」のメロディが有名)の他は知らない曲でしたが、1曲ごとに渾身の力で弓を弾く姿に時間を忘れて耳を傾けました。
ピアノの演奏も素晴らしく、チェロとのかけあいで、最初はささやきあうように優しく、時に会話のように楽しく、最後は吠えるように激しく重なり合い、それは音楽に魂を込めているかのようで、聞く人の心に響いてくる素晴らしい演奏でした。
最後の曲の後では、拍手の鳴り止まない舞台に出退を三度繰り返し、四度目でのアンコールの演奏後も再度出てきて、笑顔で両手を振りながらさよならをする退場に、観客はやっとヨー・ヨー・マを開放したのでした。
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私もいつの日か魂を込めて文章を綴りたい、と思うエネルギーをもらったような気がします。
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「山妣(やまはは)」坂東 眞砂子
第1部 雪舞台―(妙の視点)
子守として働く小作の次女、妙(たえ)は瞽女(ごぜ)になった姉、琴を待っている時に見かけない恰好の男達が来たのを見る。中年の市川扇水と若い椋之助で、村の地主、阿部家の招きで東京から来た、祭りの奉納芝居の振り付けを頼まれた役者と弟子だった。琴は椋之介と親しく話すが、妙は彼の眼差しに不安を感じる。椋之助の体には秘密があり、それを阿部家の跡取り、鍵蔵(かぎぞう)の妻てるが知った。
第二部 金華銀龍―(いさの物語)
鍵蔵から追われた椋之助を助けたのは、山の中の洞穴に暮らす、いさという初老の女だった。「山妣」と呼ばれるいさから過去が語られ、椋之助は自分の出生の秘密を知る。
第三部 獅子山―(熊狩り)
椋之助は秘かに扇水に会い独立すると告げ、琴と長岡をめざし山に向かう。扇水はてるを脅し、そこに鍵蔵が帰り、夫の怒りにてるは山に逃げる。喜介と名乗る山師があらわれ、鍵蔵と知り合い秘かに二人で金鉱脈を探す。 同じ頃毎年恒例の熊狩りに村の男達の一隊が山に向い、冬眠する熊との闘いが始まる。
昔話か民話のような話でした(伝奇小説というようです) 山のきびしい掟や封建制度が色濃く残る雪国と冬の厳しい自然、人間の限りない欲望が見事に描かれています。
作者は映画にもなった「死国」を書いた人で、この小説で1996年直木賞も受賞しました。
主要な人物のほとんどが山に集まり、そこで始まる凄惨な結末が読む者に臨場感と恐怖を与える書き方は巧みでした。
登場人物が多いのにきちんと書き分けられ、しかも無理なく関係しているという筋立ても凄いと思いました。なかでも喜助とてるの素性が不明で、終わりの方で意外な人物だと驚きました。
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作者の気迫が感じられ、今年のマイベスト5になると思う1冊です。