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のち
9月24日に上巻の感想を書いてから3ヶ月、やっと下巻の感想です
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「亡国のイージス」(下) 福井晴敏
イージス艦は宮津以下幹部と北朝鮮の工作員ヨンファたちに乗っ取られ、東京湾の入口に停泊して新型爆弾搭載のミサイルを東京都に向けつつ日本政府に要求を突きつける。
動揺する日本政府。アメリカの動向と政治しか考えない首相を始め要人達が集まった市ヶ谷のコマンドルームは、幾度も作戦変更を迫られる。
一方、艦内に囚われた如月行を思い、艦底の裂け目から内部に戻った仙石は工作員達と激闘をくりかえしながら救出に向かう。仙石の必死の思いは行の心を次第に溶かしていく。
戦闘の合間に描かれる工作員達の正体。ヨンファもまた、時代と政治に翻弄される国で苦難の人生を歩き、愛国心故に宮津に近づいたのだった。
やがて対峙する護衛艦「うらかぜ」が犠牲になり、「いそかぜ」の内外にも危機が迫る。工作員達との死闘を繰り返し傷つきながら、苦悩する本部へ連絡を取り続ける仙石と行。二人の行動が序々に市ヶ谷の考えを動かしていく。
潜水艦という逃げ場のない空間に生きる男達に迫る非常事態と究極の選択。
国家という大儀に生きるか、人間として自分であるべき姿で生きるのか。
建前で事態を処理しようとする首脳達に対し本音で迫る渥美情報本部長、捨て身で自分の生き方を通す熱い仙石と冷静に構える行。情の宮津と非情に思えるヨンファ。全編に男達の対比が深く鮮やかに描かれる。
軍事品の説明が詳しすぎて難しいのと、感情表現が時々少し大げさでは?という所を除けば、ハラハラドキドキで楽しめる男達のドラマ、まさに海洋冒険小説でした。