数十年前に読んで、未だに強烈な印象を残している作品はわずかですがその中の1冊です
「砂の女」安部公房
一人の若い男性が昆虫採集に海辺に出かけた。しかし3日の予定で出かけたのに、それきり妻にも連絡がない。
一方男は虫を追いかけてたどり着いたで宿を借りる。一晩だけのつもりで、案内され入りこんだ洞穴の砂だらけの家で、砂を掘り出す一人の女との奇妙な生活を強いられる。
砂の中の生活に取り込まれそうになりながら幾度か逃亡を企ててみるが・・・。
流動する砂の重みや匂い、ざらざらとした砂がこちらまで溢れてきそうな表現力。全編に描写された砂に埋もれた生活と異形の世界。
あるはずが無いと思いながらついひきこまれてしまう別世界の圧倒的な存在感は実にみごとです
読んだ頃は難しくてストーリーを追うだけでしたが、再読してあらためてすごい!と思いました
すこしずつ男の思想をも変えていく恐さがジワジワとこちらにも伝わります。
最後のページの文書が男の行く末を暗示しています。
今の若い人にもぜひ読んでほしい名作です