「梅咲きぬ」山本一力著
時代は七代から八代将軍吉宗に変わる頃。
深川の老舗料亭江戸屋の女将は、身代と共に「秀弥」の名前を譲り受ける。
七歳になった玉枝は四代目の女将になるべく、踊りの師匠、春雅のもとに弟子入りをして厳しい芸と女将の修行も続けるが、成長につれて徐々に才覚を見せ始める。
折からの米不足で、世情が落ち着かない中で、客が店で飲食中難癖をつけて代金を払わず、逆に脅して金をとる事件が多発し、江戸屋も警戒を深める。
ある日青物町の銚子屋店主ら三人が、女将不在の江戸屋を訪ねて宴会を予約する。
客あしらいに熟練の大人達を騙した三人に、九歳の玉枝は不審をもち、春雅の連れ合い福松に相談する。
玉枝は福松に連れられ、青物町に出かけて銚子屋がないことを確かめる。
その途中の船が通った大名屋敷から川を見つめる一人の武士との運命の出会いが・・・。
偽りの宴会に向けて、江戸屋の信用をかけた準備が始まる。
大人達が思いもかけないその準備を考えたのも、また玉枝の一言からだった。
格式のある料亭と女将の名前を受け継いで行く者の背負う重さと厳しさ。
そして結ばれない者たちの出会いと別れ。
全編にわたって、現代でも通じる人としての在り方、生き方が語られます。
女将が玉枝に教える教訓には、読んでいる途中から思わず背筋が伸びました。