“さるかに合戦”  臼蔵 と 蜂助・栗坊 の呟き

震災や原発の情報が少なくなりつつあることを感じながら被災地東北から自分達が思っていることを発信していきます。

イギリス労働党の話

2011年10月17日 15時54分35秒 | 臼蔵の呟き
以下は北海道大学山口二郎教授のレポートです。
熊本日日新聞への投稿記事です。

 九月下旬、しばらくイギリスを訪れた。折しも、欧州財政・金融危機が深刻化し、また野党労働党の年次大会が開かれていた。この二〇年、日本ではイギリスの政治システムを模範として、改革を進めてきた。改めてイギリスの悩みや、両国の距離を見ることで、日本の課題を考えてみたい。
 私自身は、資本主義の暴走を是正し、人間の尊厳を守る社会経済政策を追求するという理念に共鳴してきた。その意味で、イギリス労働党をモデルとして日本の民主党に政策提言を行ってきた。その労働党が一三年続いた政権を失った後、どのように再建するかは興味深い問題である。三日間に及ぶ大会は、野党といえども、多くのメディアが詳しく伝えていた。まず感心したのは、議論の文化が続いていることである。大会には多くの分科会が設けられ、様々な政策テーマについて、党員による議論が行われた。いつ政権に戻れるか分からないが、自分たちの党が誰を代表し、どのような社会を目指すのかという議論を怠らないというところに、政党の原点を確認した思いである。
 
 また、全体会で母子家庭に育つ一六歳の高校生が保守・自民連立政権による歳出削減を糾弾する演説を行い、喝采を浴びていた。メディアは、現政権のヘイグ外相が三四年前、一七歳の時に保守党大会で演説を行ったのを彷彿とさせると評していた。日本では、未成年者による選挙運動は禁じられているくらいで、高校生が党大会で演説することなど想像できない。この青年を見て、政治家や指導者の育成は時間をかけて、若者を鍛えることによって行うのだと感心した。日本で、十代の若者を政治的な意味での無菌室に入れておいて指導者不在を嘆くのは、何とも矛盾した話である。
 
 最終日に、ミリバンド党首が演説を行い、あぶく銭を追求する従来の資本主義モデルを変革し、新たなモラルに基づく社会経済システムを構築すると訴えた。彼はまだ若く、堅苦しい雰囲気で、支持率も低い。しかし、党員はこれから数年かけて、ミリバンドを首相候補に鍛え上げていこうと考えているようである。
 
 野党指導者だけでなく政権指導部も一定期間持続することが、政治論議の自明の前提である点は、日本と大きく異なる。民主的な手続きによって選ばれた指導者には、途中不人気であっても仕事をさせ、次の選挙の時に国民が評価を下すというのが、イギリスの民主政治である。この五年間、毎年首相が交代してきた日本と比べると、権力に対する感覚がまったく異なることに、愕然とする。イギリスの国民もメディアも、ある意味では権力者に対して寛大である。多少のスキャンダルがあっても、辞めろという声は出てこない。国民は、数年間の政権の実績を吟味して、選挙でその政権の持続を許すかどうかを判断することを、自らの役割と認識している。
 
 現政権のキャメロン首相は、深刻な財政赤字に対処するために、たとえば、大学の授業料を三千ポンドから九千ポンドに引き上げるなど、様々な歳出削減と負担増に取り組んで、各層の国民から不平、不満を招いている。確かに与党支持率は低い。しかし、党首の支持率では、キャメロンがミリバンドを大きくリードしている。つまり、国民は不満を持ちながらも、現政権が進める緊縮政策を、やむを得ないものと受け止めている。
 
 二大政党が単独過半数を取れず、連立政権を作る。そして、政府は財政赤字や経済危機に対処するために、不人気ながら歳出削減と負担増に取り組む。これは、近未来の日本政治の姿かもしれない。大震災に見舞われた日本は、イギリスよりも政策選択の余地がないとも言えよう。イギリスを範とした改革を完結させるためには、日本でも目前の課題をどう解決するか、議論を蓄積し、次の選挙を迎えることが必要である。




アメリカ貧困反対デモと政治問題

2011年10月17日 08時00分00秒 | 臼蔵の呟き
アメリカウオール街における集会、デモが全米、世界的な広がりを見せています。「1%の富裕層が99%の国民を支配し、富を独占していることへの抗議と是正」をもとめた抗議行動が拡大しています。この背景には、アメリカ社会の経済不況、高い失業率、大学を出ても就職できない社会問題があります。ブッシュ前政権が新自由主義経済を徹底して追及し、規制緩和、国家機関の縮小、民営化する(軍事行動を民間軍事会社に委託、教育を公共機関から民営化するなど)ことで一部大手企業に富(アメリカの巨額な税金)が流れ集中する仕組みが出来上がりました。国家機関が行わなければならない事業、行政が民営化されることで、アメリカ国民からの税金が民営化事業、民間企業に大量に投入、投資されてきました。そのことで、国家が行わなければならない公的な事業が営利目的になり、資金力のある富裕層には民営化された行政サービスという形で提供され、貧困層は資金力がないためにサービスが受けられなくなっています。その社会資本整備がされない格差がますます拡大しています。その結果、富裕層はますます富を手にし、貧困層は収入低下とますます劣悪な社会環境に据え置かれることとなっています。その格差が許容できないところまで大きくなってきていることが今回のデモの底辺にあります。

日本社会も小泉構造改革で公的事業の民営化、規制緩和、自由貿易、新自由主義経済の徹底で、一部大手企業が富を独占する状態になっています。反面、中小企業、農業、漁業、林業への投資はされず、後継者すら確保できない状態になっています。その代表的な事業が郵政(国民の財産であった)民営化です。このことで、金融機関は郵貯(預金)資金を獲得し、結果として利益を増大させました。また、その郵便事業、金融事業、物流事業に民営化することで民間大手企業が参入し利益確保の事業にしようとしています。新自由主義は「弱肉強食」を至上命題とするために徹底して弱者を痛めつけます。中小企業などが破綻、衰退する事は自然の摂理として気にもかけません。したがって、政治が貧困層の救済、富の配分に配慮しないために富裕層への減税、貧困層の放置でますます格差が拡大しました。それが非正規労働者の拡大、自動車産業の期間労働者解雇問題となり、社会問題化しました。規模は違いますがアメリカも日本、イギリス(国有企業をほとんど民営化した)などは全く同じ経済、政治状況になっています。構造自身がそのようになりつつあります。日本はそこに3.11東日本大震災、福島原発被害が重なり、このままでは日本社会がおかしくなるとの認識が広がってきているのだと思います。

アメリカの貧困反対デモ、抗議の運動と震災復旧、原発被害の救済、民主党が進めようとしている消費税率10%への引き上げ、TPP交渉への参加は全て同じ根源を持った政治、経済問題だと思います。

一緒に頑張ろうと言って

2011年10月17日 07時01分51秒 | 蜂助の呟き
こんにちは。蜂助です。今日は、原発と闘っている人たちの気持ちの話です。

福島市の保育園保護者会の会長さんは、「除染の徹底を始めとして、私たちの要望にこたえて国や行政が[一緒に頑張ろう]と言ってくれないことが腹立たしい。福島に住み続けている私たちを応援してもらいたい」と言っています。

この言葉は、原発に立ち向かっている方、津波の被害から立ち直ろうと努力している方達の気持ちです。先日書いた、宮城県が出した水産特区も、本質はここが問題なのです。宮城県が一緒に頑張ろうと言わずに、お前らは年寄りだし、金も無いのだから民間の力を入れて漁業を復活させようという発想で村井知事が対応したことが問題なのです。正確にいえば、村井知事はこのような発想しかできないのです。

全村避難している飯舘村の菅野村長は、「原発で何十年も重い十字架を背負った。三十年、五十年先に生きている人たちから大震災と原発事故で大変な思いを背負った人たちの努力のおかげで良い日本になったと 言われるように頑張りたい」と訴えています。この訴えが国や役人、県などに伝わらないのがもどかしいです。