ずっと昔、恐らく元々この常盤平辺りに住んでいた一人の老人が、自分の敷地に手作りでコツコツと楽しい自分のお店を作りました。
私がこのお店に興味を持ったのは二三年前の事です。
道路を隔てて直ぐお隣に有った瀬戸物雑貨屋さんは、私達も昔は何か買ったような記憶も有って・・
此の家の夫婦はご高齢で店も閉め、自分達の住まいも何処かへ移られて、このお店も今は誰も住んでいない廃屋のようです。
お店がカフェとして営業し、沖縄言葉のメニューが描かれたお店の前では、これも手作りのジャガイモや人参等新鮮な野菜が無人販売で置かれていたのを覚えています・・
営業していても何と無く入り難かったのは、一段高い所に建てられた店内の様子が外からは見えなかったし、凡そ人の気配を感じない、とても静かなお店のせいだとは思うのですが・・
或る日散歩の途中で、偶然お店の前で、このお店に出入りする若い女性を見掛けて声を掛けた私・・「あの~お店は?~・・」
「お爺ちゃんが具合が悪くて・・これからは私が時々見に来て・・今の所、お店をヤッタリやらなかったりで・・」
「そうですか・・貴女にお逢い出来たので、今度営業中の時には、中に入らせて戴きますよ・・」
ニコッと笑みを浮かべた美しい女性は「どうぞよろしくお願いします・・」
私は嬉しくて、お別れした後もいそいそと散歩の続きをしたのですが・・
その後、一年余りいつもお店は開いている様子も無く・・あの女性の姿も一向に見かけない時が過ぎて・・・
長~い梅雨が続いて数日前の事、この場所を通りかかり、思わず足を止めました。
お店の前の塀が解体されて中が丸見え・・昔外から見えた美しい庭園も今は草茫々として・・
それでも今迄中が見えなかった私には、何故か広々した草っパラが曇ってどんよりした空の下でも、明るく広々して開放的にみえたのです。
アメンボウが一匹、水面をスイスイと気持ち良く泳いでいきました。水槽の水も澄んでいて、昆虫がいるかと底迄ジッと目を凝らしましたが何も見当たりませんでした・・
天気が良くなれば・・片付け作業は未だ続くのでしょうか・・淋しい気もしています。
若しかしたら、その時、あの女性にも会えるかも知れません・・
今日はゴチソウサマは有りません。