自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

月に一度のデート

2015-08-18 07:42:16 | ひとり言
ボクが、家を出て一人で暮らし始めたのは、高校生のころ。


と言っても、マンションの隣の部屋だったけど、そのころから、母親は独居になった。


だからと言って、ボクが自立できていたわけじゃないし、今でも頭が上がらない。


数年前から、二子多摩川の高齢者の施設に入居している。


相変わらず、


「 食事が美味しくない 」らしく、ボクと一緒にランチに行くのを楽しみにしてくれている。


月に一度ぐらいだけど、玉川高島屋の南館。


とんかつ、うなぎ、てんぷら、日本そば、中華、、、、


母親の好きなレストランが並んでいる。


「 今日は何食べたいの? 」


「 何がいいかねぇ 」


「 うなぎにする? 」


「 うなぎはきょうはいらない 」


「 じゃぁ、とんかつ? 」


「 いらない 」


即答。


「 てんぷらか? 」


「 いらない 」


はやっ。


「 うーん、じゃあ中華 」



「 あたしはね、かた焼きそばが食べたいんだよ 」


キマッテンナラ サキニ イッテクレヨ !! と心の中で叫び、大混雑の高島屋へ。


相変わらず、マイペースの母親であります。


数年前にひじを骨折し、リウマチもあって、両手が曲がらない。


まるで 「 天国の食卓 」 のような、ながーいフォークを作ってもらって、それで食べているんだけど、今日の食卓はかた焼きそば。

( 天国の食卓を知らない人、、、いませんよね )


ぽろぽろと落ちて、まったくコントロールできずに、結局ボクがつきっきりで食べさせることに。


食べさせる。


おいしそうな顔をする。


口元を拭く。


うん、とうなづく。


焼きそばをまた、口に運ぶ。


こんな繰り返しをしているうちに、なんだか、母親が子供のように見えてきた。


この人は子どものころから奉公に出て苦労をして生きてきた。


大変な人生を生きてきたんだけれど、目の前には、自由に生きている無邪気な子供がいるようにしか見えなくなった。


「 今度は、とんかつがいいかねぇ 」


誰に言うともなくつぶやく母親のひとりごとに、微笑んでしまう。

















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