自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

『沼地のある森を抜けて』 梨木香歩

2009-01-23 11:29:20 | ファンタジー
ずいぶん前に、久米宏の「ニュースステーション」で、最後の晩餐という企画コーナーがありました。

毎回ゲストを招いて、「人生最後に食べたいもの」というテーマでインタビューする企画でした。

ときおり特集されるコーナーでしたから、すべて見たわけではありませんが、見るたびに「自分だったら…」と考えさせられました。

皆さんはどうですか?

ボクはいろいろと食べたいものがあるけれども、すぐに浮かぶのはぬか漬け。
それも、ボクのおばあちゃんがつけていたぬか漬けで、少しつけすぎたふる漬けを細かく切ってショウガを混ぜたもの。

すでにしょっぱくなっているので、ほんの少しだけお醤油をかけてそれをあったかいご飯にまぶして、バクバク食べるのです。

大好きなおばあちゃんの古漬けと、大好きなお醤油と、大好きな白いごはん。
ボクは、これを自分の人生最後の食事にって、いつも思っています。


『沼地のある森を抜けて』 梨木香歩

これは、なんと、その「ぬか漬け」が話の中心にある不思議な物語。

すでに両親が他界している久美が、亡くなったおばから引き継ぐ遺産。
それが、ぬか漬けのつぼ。

一人暮らしの久美にとってお荷物なんだけど、仕方なしに毎日ぬか床をかき回す。
そのうちに、漬けた野菜以外にぬか床に小さな卵を発見します。

そして、ある日家に帰ると、ひとりの小さな少年がうずくまっている・・・・。

なんとも恐ろしいでしょ?



ぬか床から、何かが生まれてくるんです。

物語は、もう一つのお話が展開します。

毎晩寝て、朝になるともう一人の「僕」が生まれていく世界・・・。

はっきり言って、梨木さんの頭の中どうなってるの?って感じのお話です。
昔、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んだ時に感じた何とも説明のできない世界。

正統派ファンタジーの『裏庭』のデビューで感動し、ファンタジー作家だと思いきや『西の魔女は死んだ』は、ほのぼのとしたお話。

今回の作品は、全く違う展開です。

それにしても、このぬか漬けのお話が壮大な生命の神秘につながるんですから、作家ってやはりすごいんですねぇ。

あ~、おばあちゃんのふる漬け・・・・あの味は忘れられないなぁ。

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4 コメント

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Unknown (れいちゃん)
2009-01-26 00:05:19
私、友達のお母さんから、代々伝わってきたという、100年のヌカ床を頂いたことあるんですよ。

朝晩手入れをして、ずっと大事にしてきた家宝のヌカ床だそうで、入院のため管理出来ないからとの事だったんですが、それはそれはもう「メチャ、ウマイ!」の一言でしたね。

この過去形の表現で、今は過去の物となったことがお分かりと思います。
そうなんです。管理が大変!

とにかく100年物は、匂いも半端でなく、毎日仕事にいく私には、朝晩の手入れは所詮無理でした。

家宝を一瞬にしてダメにして、お母様ごめんなさい。
でも、美味しかったナ~・・・。
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100年のぬか床 (しばしば)
2009-01-26 07:45:27
それは残念でしたね、れいちゃん。
「100年のぬか床」をYahooで検索すると、ずいぶん出てきます。
小倉の200年伝来ものや、北九州や福岡あたりの100年物。
何で九州に多いのでしょうね。
不思議です。

この物語は、そのぬか床から「何か」が生まれてくるのですが、ネットで見ていたら、不思議な微生物が生まれる事が書いてありました。

やはり・・・・何かが生まれる。
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Unknown (れいちゃん)
2009-01-26 23:32:02
ヌカ漬けは、九州は小倉(私の住んでいる所)が発祥の地なんです。

だから九州に伝来物のヌカ床が多いのだと思いますよ。

それと小倉には、小倉にしかいないヌカ床菌が居るらしいんです。(ちょっと、こわ~い。)

それもあって、小倉独特の味ができるのだと思われます。

ファンタジーのコラムから、とんでもなくヌカ床論議をしてしまい、申し訳ございません。シュン・・・。
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ぬか床 (しばしば)
2009-01-27 18:02:44
ぬか床の世界はまさにファンタジーということでしょうか?
小倉が発祥ですかぁ・・・。

初耳でした。
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