自分セラピー

「自分を好きでいる」ことは人生を豊かにしてくれます。そこに気づかせてくれる沢山のファンタジー文学を紹介していきます

『そのときは彼によろしく』 市川拓司

2013-11-09 06:19:17 | ファンタジー
娘に「この本読んだことある?」と聞かれた。


「いや、読んだことない」


下の娘は、やたら小説を読んでいる。


忙しい仕事、夜は夜でダンスレッスン。


一体いつ読む時間があるのかと思うけれど、結構な読書家だ。


「いいお話だよ」


「わかった、今読んでる本が終わったら・・・・」


そして読み始めたのが、この『そのときは彼によろしく』


作者は知らないけれど、裏表紙のあらすじに「ロマンチック・ファンタジー」とあるので、


そうか、ファンタジーか・・・・

ところが、ボクの持っている「ファンタジー」の定義とは違う。


でも、なぜか引きこまれてしまう。


「29歳になった〝ぼく”智司」が、回想を始める。


転校を繰り返していた〝ボク”が出会った、小学生だったころの友達の話。


祐司と花梨。そして老犬のトラッシュ


クラスで群れることなく、用水路やごみ置き場でひそかに身を寄せながら放課後の時間を過ごす3人。


この3人の子供時代の様子が何とも愛らしく、せつない。


ボクは池袋まで電車で小学校に通っていたから、住んでいた場所には友達はいなかった。


かぎっ子少年のボクは、家に帰ったら何もすることのなかったからなぁ。


ものがたりは、ファンタジーの体を全くとらずに進むのだけれど、後半に入って一気に「もう一つの世界」が登場する。


確かにファンタジーだった。


それよりも、登場人物たちが呟くひとこと一言が、なんとも優しい。


いくつも紹介したい部分があったけれど、ほんの一部だけ・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「この世界には物理学の教科書にも載っていない強い力がひとつある」

いいかな?と言う感じで父さんは花梨を眺めた。彼女が頷く。

「それは磁力なんかよりもずっと強力な力だ。なんといっても、それはどんなに距離が離れても、少しも弱まることがないんだから。地球の裏側に行こうが、冥王星の裏側に行こうが、あるいは、こぐま座のしっぽの先につかまっていようが、その力は何ら変わることなく伝わるんだ。たいした力だよね」

「私たちは、そのとびきりの強い力で引き合っているんだよ。だから、15年離れていても再開することができた。そうだよね?」

「ええ、そうです」

「ならば、また再会するはずだ」

「はい」

「じゃあ、もう涙はいらないね」

「はい」

「その強い力って、何て名前がついているんですか?」

「さあ、なんと呼ぶんだろうね。まあ、それは人それぞれが、自分に一番しっくり来る言葉を当てはめればいいんじゃないかな」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ボクだったら、何て名前を付けるだろうか。

あれも、これもいいし、あっちでもいい。


でも、やっぱり今だったら・・・・・


ファンタジーは、ボクたちのイマジネーションを刺激してくれる。


そして、その想像の力は創造の力を誘発してくれる。


もう少し、この作家の本を読んでみたくなった。



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