繁浩太郎の自動車と世の中ブログ(新)

モータージャーナリストとブランドコンサルタントの両方の眼で、自動車と社会をしっかりと見ていきます。

急拡大の中国EV市場

2016-11-24 11:38:00 | 日記

「中国EV市場は何故急拡大しているか?」

ちょっと、ブラタモリを真似たお題にしてみました。笑

 

2015年には中国のEV販売台数が前年比5.5倍の24.7万台となり、米国を追い抜き世界最大のEV市場になったそうだ。

また、2016年1~10月におけるEV販売台数は102.5%増の25.8万台に至っている。

 

何故、中国EV市場はこんなに拡大しているのか?

 

中国でEVの販売が伸びた理由はシンプルで、EV購入時の政府施策です。

まず、EV購入時にインセンティブをあたえています。

中央政府からの平均的な金額として70万円ほどで、さらに、地方政府からもほぼ同額の金額で、ざっと150万円程度のインセンティブになるわけです。

さらに、ユーザーからみて費用的に大きいのは、ガソリン車の自動車ナンバーの取得です。中国は自動車購入をナンバー取得に制限をかけコントロールしてきました。

抽選に殺到する中国ユーザーのニュースを見られた方もおられると思います。

ナンバーはオークション形式でも購入できますが、この場合ナンバー1枚当たり100万円以上なることもあるらしいです。

しかし、EVなら政府施策で優先的にナンバー取得できます。取得費用に関しても様々な恩恵があります。

また、ガソリン価格も勿論高く、さらに今後政府の意向で高くなる可能性もあります。

 

このように、政府の政策としてEVを後押ししているのです。

 

じゃ何故、政府はEVを後押しするか?

 

元々自動車産業に関して、中国は人口も多く経済発展とともに自動車マーケットも拡大することが見込め、それを自国の発展の基礎、基幹産業の1つにしたいと、つまり、戦後から続く日本の自動車産業発展を目指したと思われます。

日本等の海外自動車メーカー進出も促し、先進国自動車メーカーはマーケットの大きさから外せないと考え進出したいと考えたと思います。

しかし、中国マーケットを先進国自動車メーカーに簡単に譲るわけにはいかないので、合弁会社とし投資比率を50%までとした。

あくまでも、投資を促しつつ主権は中国とし、自国産業として育成していこうとしているのです。

投資した先進国自動車メーカーは、契約内容は各社異なるとは思いますが、中国の売上収益は現地の合弁会社のもので、いずれにしても、ロイヤリティが各国本社に入る形だと思います。

これで、先進国自動車メーカーの開発投資などの費用がまかなえているかどうかはわかりません。

 

しかし、中国としては、中々思ったように自国産業として育たない。

 

これは中国人気質もあるかも知れないと私は思います。

それは、「技術を頑張る」より「金を頑張る」という考え方の人の方が多いのではないかということです。

私の経験からしても、2〜3割位は「技術を頑張る」人材はいるのですが、大方は「金を頑張る」。しかも、目先の「金を頑張る」。

コピーすればいいじゃないか・・。手っ取り早い。何でそうなるか、こうなっているか、なんて不要(ぷーよ~)。

これを続けていては、永遠に先進国自動車メーカーに勝てません。

しかし、大方はこういう人材なのです。

 

人材の件はさておき、とにかく中国政府としては自動車産業を自国の基幹産業にしたいということだと思います。

 

そんな中、中国の大気汚染は世界中から注目されることになり、先進国の仲間入りのためには解決する必要があり、EVにという考え方もあると思います。

さらに、先進国でも環境規制が厳しくなり、ICE車(ガソリン等の内燃機関)の先行きが怪しくなり、EVしかないということが、トレンドとして見えてきました。

そこで、先進国自動車メーカーはICE体質(開発も工場も投資はICEでされている)で中々急には曲がれない状態なっているのを見て、新興の中国はICE車に較べて簡単に造れるとも考えEVを選択したのだと考えます。

 

他にも中国事情として、台数の増加にガソリン供給がおっつかず、逼迫しているということもあると思います。

また、開発の遅れている山間部などでは、ガソリンスタンドはないが、電気はとりあえずいっているのです。

また、品質保証されていない、つまり薄めたガソリンの横行もあると聞きます。

 

つまり政府は、諸々の状況からEVに行き着き、販売普及にインセンティブという形で、投資し始めたと言う事だと思うのです。

 

ただ、課題として、EV造りはそんなに簡単か? という問題もあります。

 

課題はバッテリーと制御です。

バッテリーは今のところ韓国のLGが価格と品質でリードしているそうで、日本のバッテリーメーカーも追いかけています。

中国にこれらを抜く為の、技術と人材が集まるか?

これらは、どうもお金で解決できそうな気もします。

 

また、共産党の分だけ、原資配分はやりやすく、つまり政策が実行しやすいというメリットもあると思います。

 

お金で解決できない課題としては、目先のお金を追求する気質の人材をどうするかということになると思います。

モノ造りは「造り手の使い手への想い」、造るための「技術の本質への興味」など、お金とは違った次元のものが大切です。

このあたりが解決されると、中国のEV(EVに限らないが)は脅威になると思うのです。

 


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