兵藤恵昭の日記 田舎町の歴史談義

博徒史、博徒の墓巡りに興味があります。博徒、アウトローの本を拾い読みした内容を書いています。

異端の金融機関・高知信用金庫

2019年03月29日 | 金融
異端の金融機関と言われるスルガ銀行が話題である。もう一つ変わった金融機関が四国の高知にある。「信金界のヘッジファンド」「土佐のはちきん信金」とも言われる高知信用金庫だ。高知市に本店を置き、従業員281名、店舗数31、預金高7,478億円(18年9月期)中堅信用金庫である。

高知信用金庫の特徴は異常なほど低い預貸率である。2018年3月期預貸率は8.48%、信金平均預貸率は約50%である。預金7,448億円に対し、貸出金はたったの623億円しかない。しかも貸出金の8割は住宅ローン、カードローンで504億円、企業向け貸出は97億円(15%)を占めるに過ぎない。不良債権の内訳は、破たん債権、破たん懸念債権は合計13億9千万円、100%引当の不良債権は少ないが、企業向け貸出がすくないから当然だ。

運用の主体は有価証券投資で、上場企業の株式投資、社債投資で5,522億円を占め、預金の74%を有価証券投資に回している。貸出先が少ないため、リスクウエイトも少なく、自己資本比率は43%と高い。総資金利ザヤは0.48%と高い。ちなみに信用金庫業界の総資金利ザヤの中央値は0.08%、加重平均では0.12%である。

投資先は九州電力2.33%、東北電力1.89%の株式を保有し、それぞれ6位、7位の大株主である。一方、地方債、国債への投資は少なく、更に非上場の中小企業への投資額は4億円余りと僅かで、主体は電力等の株式、社債などディフェンシブ銘柄中心である。

当然ながら、収益源も有価証券の受取利息と売買益である。2018年3月期純益は107億円を計上する。預金高9千億円の地元の第二地銀・高知銀行の純益17億円、預金高2兆5千億円の地銀・四国銀行の純益71億円を大きく凌駕している。ここが「信金界のヘッジファンド」と言われる所以である。但し、株式投資中心のため利益変動リスクは大きく、2016年3月期純益185億円、2017年3月期純益88億円と毎年変動幅は大きい。

理事長は2011年6月、52歳で女性として初めて理事から理事長に就任した山崎久留美氏。山崎氏は窓口業務からの信金たたき上げ職員である。証券投資経営の発案は今や90歳近くになる四国財務局官僚OBの山本正男現会長である。実質、有価証券投資の実権を把握しているのは山本会長と思われる。

今年4月からは、働き方改革の実践として信金として初めて全店舗で窓口昼休み制度を導入する。また信金連合会提出アンケートおいて、渉外人員比率はゼロとなっている。本当に渉外人員が存在しないのか不明であるが、重要視されていないことは事実であろう。

低金利の長期化、貸出先不足、地方経済衰退と金融環境の厳しい中、ユニークな経営実践であるが、地元経済振興の金融機関の在り方としては問題なしとは言えない。

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小説「実録 頭取交替」

2015年01月19日 | 金融
地方銀行再編が話題になっている。最近、面白い小説を見つけた。地方銀行役員の内部抗争事件をドキュメントで小説化したものである。

講談社「実録 頭取交替」である。著者は山口銀行の役員である。内容は元頭取で相談役をしている人物が指導して、現頭取を退任させ、影の実力者として銀行経営で院政を敷くものである。

その相談役の経歴が興味深い。日立製作所の組合対策の人事管理職であった者を銀行が引き抜き、銀行の組合対策の人事副部長になり、頭取まで登りつめる。頭取退任後、役員でもない相談役となったという。

その間、組合出身者を取締役に引き上げ、相談役の立場で、当時の頭取を解任する頭取交替劇を起こした。その経過が書かれている。昨年メガバンク中間管理職による「倍返し」の銀行ドラマが人気になったが、今回は地方銀行の役員版のようだ。

その後、この解任劇が中国財務局に知ることとなり、役員でもない相談役による解任騒動が銀行のコンプライアンス、ガバメントに問題があると指導を受ける。

指導官庁である財務局に恩を返す形で成立したのが山口銀行によるもみじ銀行合併の銀行再編であると言う。事実かどうか全く不明だが、銀行内部抗争の恥部隠しと財務省、金融監督庁の利害が一致したと言うことのようである。

「山口銀行頭取交代劇」 ここををクリック

「地銀再編と銀行頭取解任クーデター劇」 ここをクリック
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株価は上がり、債券市場も混乱収まらず。この先は・・・

2013年05月21日 | 金融
4月の異次元緩和から1カ月が経った。一時、収まった国債市場でまた金利の上昇が始まった。
これほど黒田日銀バズーカ砲で金融緩和のために大量の国債買い取りをしているのに、日銀の思惑と反対に金利は上昇気味だ。特に長期金利の上昇で、住宅ローン金利も上昇している。
政府、リフレ派の説明では投資家が国債から株式に移動しているためと言っている。
現在の株価の値上がりは海外の投資家が日本の株式を購入しており、日本の投資家はむしろ利益確保のため、株式の売り越しになっている。
日本の投資家はアベノミクスの行方に不安感を持っているようだ。積極的な財政政策でGDPは上昇、景気回復の動きはあるが、本来の企業収益の見通しはまだ不透明だ。
株式値上がりにより、株式の評価益が発生して、企業収益は上昇した。これはまだ未実現利益でしかない。
企業の設備投資につながるものではない。当面は自己資本積み増しのための内部留保に向かうしか方法がない。
インフレ率の上昇から企業の金利負担は確実に増加する。従って、政府の期待する賃金引き上げまで行くのはまだ遠い将来の話になるだろう。
国債市場での金利上昇は、先行きの金利上昇を見込んだ地方銀行がリスク回避のために、既存の国債の売却に向かったためである。地方銀行は長期国債を売り、短期国債を買う動きが活発化するだろう。
いくら、国債の金利が低いからと言って、株式や外債投資へのリスクより、ずっと国債の方がリスクが少ない。中小企業への融資拡大などは表面上は唱えても、収益確保のためには、本当のところは国債の安定性の方が確実であり、安定収益が確保できる。当分は円安での輸入価格の上昇による輸入インフレが発生するだろう。
そのうち、消費税引き上げで、前回の小泉政権同様に、賃金上昇のない、バブル気味の物価上昇と実感なき景気回復の結果、景気低迷に陥るのではないだろうか。

http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata05.html
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新たな違法貸金業者登場・・・

2013年05月03日 | 金融
NHKクローズアップ現代で高年齢者の年金担保の高利貸金業者が話題になっている。年金受給者の年金担保に、価値のない質草を入れて、融資をする新しいタイプの貸金業者である。質屋の場合は年利100%以上の金利が合法化されている。この点に着眼して、質屋の形態をとった新たな貸金業である。

年金を貸金の担保にすること自体違法だが、年金受給日に貸金の返済条件とすれば、返済原資は間違いない。年金を返済原資となれば、融資額も多額ではない。数万円から数十万円の融資額からスタートすることになる。クレジットのキャッシングと同じ扱いで、借りる方も金利負担をあまり感じなく、高利貸から借りている感覚もない。

事実、借りている本人も貸金業者に感謝している言葉も聞こえる。しかし、長期間融資を繰り返しておれば、金利負担は膨大なものになる。

番組の中での質問で、悪いのは借りた本人であり、貸金業者は悪くないとの言葉が利用者自身が述べている。考えてみれば、おかしな話だ。犯罪者・加害者より被害者の方が罪の意識を持っている。高年齢者は自己責任という考え方が強いためだろう。ゆえに相手が悪いのでなく、自分が悪いと考える。これは借りる個人の問題ではなく、高齢者への支援の制度に問題がある。

単に年金を担保にした融資を禁止するだけではなく、年金を担保にしても低利で融資をする融資制度を作るべきだ。現在の金融機関における預金金利はコンマ以下の金利状況で、100%の金利とはまさに犯罪そのものである。金融機関はもっと年金担保等の小口融資をしっかりと制度化すべきだろう。しかし、リスクと手間費用の面で、この分野に積極的に進出を考える金融機関は皆無である。そうならば、公的融資で対応せざるを得ない。

貸金業者の摘発ばかりを考えても、問題の解決にはたどり着かない。重要なのは高齢者のためのセーフティネットの構築が必要である。こういう弱者にはなかなか政治からも援助の手が差しのばされない。新自由主義的な考え方の強い現在の安倍政権には期待する方が無理かもしれない。第一に、次の選挙で票にもならない階層である。本当に、民主主義とは問題解決に時間のかかる制度である。
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黒田総裁金融緩和バズーカ砲の効果と反動

2013年04月18日 | 金融
日銀の国債買い入れで、国債市場は一時大混乱した。

その効果は思いのほか大きい。日銀がこれほどダイナミックに動くとは思わなかったためだ。
あるメガバンクが一気に国債売却したため、利回りの上がり下がりがさらに拡大した。

地方銀行はこれからどこに投資をすれば良いのか悩むだろう。一部の生保みたいに外債投資ができればよいが、ヘッジをしながらの投資では、それほどのうまみはない。しかし、せざるを得ないだろう。そうすれば、円キャリー取引が拡大して、さらに円安となる。円安バブルの発生である。株高、円安、そして資産バブルの再会である。

金融機関が、その時、昔の夢よもう一度と言って、不動産融資をする気持ちがあるか?とてもその勇気はないだろう。
今後、大手企業は、株高と今までの内部留保で当分良い時期を過ごす。しかし、中小企業はとても、その余力はない。輸入価格の値上げで、コストはアップは逃げられない。ここで賃上げなどとても無理だ。生き残るのが精いっぱいである。今までの円安と違う。対応できる企業と、メリットを受けられない企業と二分化している。

その結果は2年後には決着がつく。ちょうど、10%の消費税引き上げ時期とちょうどぶつかる時期だ。
今後の展開に目を外せない緊張感が続くだろう。

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アベノミクスの展開と銀行経営

2013年04月14日 | 金融
日銀黒田総裁の異次元金融緩和で円安が進んでいる。新たな金融政策をスタートしただけでこんなに変化があるのか?白川前総裁はどんな気持ちだろうか?

実質は何も動いていない。ただ、ムードだけが先行している。マスコミが飛びつくのもわかるが、これからが本番である。円安と株価は外国のファンドが飛びついているだけで、本来の国内の投資家はまったく様子見の状態である。

ヘッジファンドのソロスは今回の円安で巨額な利益を得ている。しかし、日本銀行の金融政策がここまでダイナミックに動くとは予想しなかっただろう。負け惜しみで黒田総裁のガッツ根性をたたえている。

これから、本格的にヘッジファンドは動き始める。日本の経済政策ほど簡単に将来予想できる国はないからだ。

反対に国内の金融機関は国債の日銀オペに混乱している。

銀行は今、国債を売却すれば利益が出ることが分かっている。しかし、国債売却で資金を得ても、運用先がない。日本国債ほど安全に且つ確実に利回りが取れるものはないのだ。国債市場の7割も日銀が買い取りを始めたら、銀行の運用ができなくなる。ゆうちょ銀行も同様だ。

日本の銀行は産業育成とリスクテイクという本来の銀行の目的を見失っている。
もう一度、銀行経営者は本来の銀行のあり方を見直すときが来ている。
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