しらほぶろぐ

ブログタイトルはニックネームが由来。
日記代わりに身の回りの出来事を綴ります。

藤沢周平作品所感1

2006-02-27 10:56:03 | 08.山形探訪
今日の体重:99.5kg(-5.2kg)2006.02.01~減量開始:104.7kg

それがしがこれまで藤沢周平作品を読んだ本は(購入順に…)
 1.蝉しぐれ
2.たそがれ清兵衛
3.暗殺の年輪(第69回:直木賞受賞)
4.隠し剣孤影抄
5.竹光始末(映画:たそがれ清兵衛の原作となった短編集も入ってます)
6.三屋清左衛門残日録
7.よろずや平四郎活人剣(上下巻)
8.隠し剣秋風抄(現在読書中)

の9冊である。時々自分なりに個々の作品の所感を綴ろうかと思った… (にわかファンのくせして,評論家気取りか?なんてお叱りの声も…) 手始めに,昨年映画化になった「蝉しぐれ」を語る…それがしは,本作品の映画は見ていない…キャスティングが「いまいち」との噂もある…近くDVD化され販売されるようだが,まずは原作本の一読を勧めたい。


(ストーリー)
時は江戸時代…東北の小藩「海坂(うなさか)藩」の下級武士である義父のもとで成長する牧文四郎は15歳。父・助左衛門を尊敬し,いつか父のようになりたいと思っていた…文四郎は,隣家に住む幼なじみのふくに淡い恋心を抱きながら,小和田逸平と島崎与之助の親友とともに剣術と学問に明け暮れる日々を過ごす。

ある日文四郎の身に大きな異変が起きる…文四郎の養父・助左衛門が藩主の世継ぎ争いに巻き込まれ,反逆者とされ死罪切腹に…牧家は家禄を減らされ,家も粗末な長屋に移され文四郎の生活も一変する。「罪人の子」と中傷されながらも,与之助,逸平の友情に支えられ,剣の道を励むことによって文四郎は前向きに生きていた… 文四郎とふく,淡い恋心の思いを互いによせ始めた頃…ふくが殿の奥に勤めるため江戸へ行くことになる。

文四郎にとっても,ふくにとっても辛い別れ…江戸に立つ前,文四郎に会いたいと文四郎の家へ走るふく…だが2人は会うことが出来ない…ふくはそのまま江戸へと旅立った… 数年後,青年になった文四郎…牧家の名誉も回復されつつあった。ふくも殿の側室となっていた。やがてふくが子供を身ごもる…が,派閥闘争による陰謀で一度は流産…もう一度身ごもったふくは,郷里へ戻り身を隠して出産…反対勢力派閥がふくとその子を皆殺しにするため動き始める…文四郎はその事を耳にするが,自分ではどうすることもできない…

そんな折,文四郎は藩命で「ふくの子をさらってこい」と言い渡される。断ろうとすると,「牧家の名誉を回復してやったのは誰のお陰か」と脅され,引き受けざるを得ないことに…ある意味この藩命は罪人家に対する「罠」だと知りつつ…どうにもできない文四郎は,逸平と与之助の知恵を借り救出に臨むことに… 果して,文四郎は無事にふくとその子を助けることができるのだろうか…文四郎の知恵と剣術の腕がいま試されようとしていた。

(所感)
藤沢文学を代表する長編小説として名高い作品… と「本物」の各評論家は紹介している…私が人生で初めて時代小説という部類の本を手にし読破した作品だ。長編小説…飽きずに読みきれるだろうか…不安があった…しかし,この作品には「スピード感」があった…ストーリーの展開の速さが私を飽きさせなかった。 風景の描写がすばらしい…

目をつぶると,普請組屋敷の裏を流れる小川,海坂藩の美しい風景が飛び込んでくる…時々登場する蝉の鳴き声も風景を想像させ心地良い気持ちになる。 登場人物の情感も見事に描かれている…

牧文四郎とふく…隣家に住む幼なじみという間柄だったが,互いに思いを寄せ合い淡い恋心が芽生える…その情感の変化が「はがゆく」伝わってくる…親友,島崎与之助・小和田逸平との終生変わりようのない友情の情感描写も素晴らしい 誰にでもある青春時代…江戸時代,武士道の世界を懸命に生きる青年たちの「青春ストーリー」… 読後は気持ちが良く爽快感があった…一読を勧めたい。

(心に残る場面)※それがしの場合…
・ある夏の朝,文四郎が住む普請組屋敷の裏を流れる小川の川べりで…隣家に住むふくが蛇に噛まれ文四郎がふくの中指を吸い毒を吐き出した場面…文四郎15歳,ふく12歳…その朝も蝉が鳴いていた…
 
・尊敬する父親が処刑される直前に文四郎は父と面会した…その際,「私の欲ではなく,義のためにやったことだ。文四郎はわしを恥じてはならん」と言い残した父・助左衛門の言葉…その一言が文四郎の人生を支え生きる糧となった事は間違いない。

・父の遺骸を載せた荷車を引く文四郎に寄り添い,あふれ落ちる汗を拭こうともせずに,黙々と荷車の梶棒を引くふくの姿。文四郎を思う愛しさに感動。

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする