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融通性か?和・洋・中・無国籍・ジャンクとなんでも食べる胃袋と脳みそ。

アルバート氏の人生…アルバート・ノッブス

2013年11月06日 | 日記
前から見たかった映画。

舞台は19世紀末アイルランド…<40年以上を男として生きていく事になった女性>のお話。
演じるグレン・クローズは見事に表情を殺している。
気配りのあるウェイターで物静かな雰囲気。
さすが、演技派大女優。写真左。右のジャネット・マクティアも巧い。

彼女が…アルバート・ノッブス氏で生きていく理由。
それは経済的なものだ。
両親に早く死に別れ…施設で暮らし…里親とも死別。
職を得て自立するためには男にならなくてはならなかった。
19世紀のアイルランドの経済構造は映画の中にいろんな形で表現されている。
オープニング…ノッブス氏が勤めるホテルの晩餐会場。
別のホテルのベルボーイが客の不興を買ってクビを切られる場面。
階級差が歴然としている。
階級だけでなく、ナショナリティ<イギリスの支配>においても不自由な大地。
どんよりと曇った空の下…首都ダブリン。
支配する者…支配される者の暮らしの差は哀れでもある。
中年男の仮面を被る女<アルバート>は少しずつお金を貯めている。
最下層の若者<ベルボーイ改めボイラーマン>は自由の国アメリカに渡る事を夢見る。
ハンサムだが、粗暴でどうにもならない奴…見事に演じている。地か。

アメリカに渡ったアイルランド系移民は、他国からの移民に比べて相対的に若い単身女性の割合が高かった。
餓えと従属に苦しむ土地からの脱出。
支配階級の女性以外は、農耕<じゃがいも>を食べるのがやっと。男性からの暴力。婚外子を産む。結果捨てる。
都市部でも下働き<小間使い>で食べるだけが、やっとの生活。

ノッブス氏は粛々と働く。彼<彼女>が望むのは、お金を蓄える事。
彼<彼女>は一日の終わりに稼いだチップを計算し、メモをつける。
いくら貯まったか確かめ、狭い自室の床板の下に隠す。
結構な額が蓄えられている。
一定額になれば、小さな商店主になり、プライバシーが保てる部屋と暖かい空間。
お金を計算しながら、その事を想像するのが…多分、彼<彼女>の人生の至福の時間。

街には腸チフスがはやり、罪のない人々が死んでいく。
女性が生きていく事が至難の時代。それは、男性も老人も子供も貧しき者すべてが悲惨な時代でもある。

映画は、二転、三転する。
写真右のジャネット・マクティア。
彼女も彼<アルバート>と同じ人生を生きている。
アルバートに影響を与える女性<彼>として登場している。
深い表情の演技が心打たれる。

グレン・クローズは、もともとは舞台でアルバート氏を演じていた。

映画においては、製作・主演・共同脚色・主題歌の作詞の4役を務めた。

才能を磨く。

表現する。

グレン・クローズの次を見てくれ。

余韻が残る映画でした。










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