学生服の胸元に名札を留める。
服の布地に安全ピンの跡が残る。
白いハンカチーフを数センチ胸ポケットから出して名札を留めていた。
知的(勉強ができるという意味)ですましやだった位の記憶しかない。
実家はお米屋さんで街の駅(中心地)近く…一帯の地主だったと思う。
昨年秋里帰りした折、四万十川の支流めぐりの為、レンタカーを借りた。
故郷の四万十町駅前の看板広告。
「レンタカーご利用の方、送迎致します」
迎えの車の運転席から、「ひょっとしたら…○△※◇さんではないですろうか?」
土佐の方言も懐かしい…学生時代のすましやの面影がかすかに残る白髪頭の顔。
「あぁっと…えぇっと、 えんちゃん。 ○△としゆき君かなぁ…お久しい」
「ゆきとし…やき」「ええっ …ごめん、ごめん。お米屋さんを継いだがやったがじゃないが?」
かすかな記憶を呼び起こして失礼のない様に。
「米穀店の方は、弟がやりよらよ」
弟さんとは腹違いで歳が離れていた。
うっすらと記憶がよみがえる。
車が会社に着いた…板金、塗装、及び日本レンタカー…。
「レンタカーはボランティアみたいなもんよ」
山の中腹の広い敷地。従業員らしい若者数人が慌ただしく立ち働いている。
小半時珈琲飲みながら談笑。
びかびかの新車…禁煙車。
「40年振りだそうで、主人が喜んでます」と奥方が笑っている。
「灰皿いるんやろ、特別サービスぜよ」
「是非にでも逢いたい同級生がおるんなら場所セッティングするし、連絡するぜ…6割以上この町で頑張りゆうき」
「今でもええぜ。時間とれる時ならいつでもええがぜ」
「ありがとう…」灰皿を受け取って、四万十川天然うなぎを食べに…気もそぞろ。欲の皮だけの私だった。
中学、高校時代の同級生。
勉強、運動、生徒会活動、その時代のプライオリティから意識せず無意識にだが… 距離を置いていた私。
それでも、A君から漂う気配りに有難さと懐かしさが混然一体の奇妙な感覚。
今年年末帰郷の折には必ず飲みにいく…約束をしたのだった。
訃報が届いた。
ちょっと 逝くのは早いでしょう。えんちゃん。
やっと、胸襟を開いて人間同士、尽きぬ話…浮世の憂いも喜びも友人達の消息も…話せる時間が持てる気がしていたのに。
今月に入って、ばたばたと訃報を聞く。
知人が三人も逝ってしまった。
夕暮れ。
黄昏。
寂寥感だけがつのる。
この一週間、心が彷徨って身の置き所に困った。
服の布地に安全ピンの跡が残る。
白いハンカチーフを数センチ胸ポケットから出して名札を留めていた。
知的(勉強ができるという意味)ですましやだった位の記憶しかない。
実家はお米屋さんで街の駅(中心地)近く…一帯の地主だったと思う。
昨年秋里帰りした折、四万十川の支流めぐりの為、レンタカーを借りた。
故郷の四万十町駅前の看板広告。
「レンタカーご利用の方、送迎致します」
迎えの車の運転席から、「ひょっとしたら…○△※◇さんではないですろうか?」
土佐の方言も懐かしい…学生時代のすましやの面影がかすかに残る白髪頭の顔。
「あぁっと…えぇっと、 えんちゃん。 ○△としゆき君かなぁ…お久しい」
「ゆきとし…やき」「ええっ …ごめん、ごめん。お米屋さんを継いだがやったがじゃないが?」
かすかな記憶を呼び起こして失礼のない様に。
「米穀店の方は、弟がやりよらよ」
弟さんとは腹違いで歳が離れていた。
うっすらと記憶がよみがえる。
車が会社に着いた…板金、塗装、及び日本レンタカー…。
「レンタカーはボランティアみたいなもんよ」
山の中腹の広い敷地。従業員らしい若者数人が慌ただしく立ち働いている。
小半時珈琲飲みながら談笑。
びかびかの新車…禁煙車。
「40年振りだそうで、主人が喜んでます」と奥方が笑っている。
「灰皿いるんやろ、特別サービスぜよ」
「是非にでも逢いたい同級生がおるんなら場所セッティングするし、連絡するぜ…6割以上この町で頑張りゆうき」
「今でもええぜ。時間とれる時ならいつでもええがぜ」
「ありがとう…」灰皿を受け取って、四万十川天然うなぎを食べに…気もそぞろ。欲の皮だけの私だった。
中学、高校時代の同級生。
勉強、運動、生徒会活動、その時代のプライオリティから意識せず無意識にだが… 距離を置いていた私。
それでも、A君から漂う気配りに有難さと懐かしさが混然一体の奇妙な感覚。
今年年末帰郷の折には必ず飲みにいく…約束をしたのだった。
訃報が届いた。
ちょっと 逝くのは早いでしょう。えんちゃん。
やっと、胸襟を開いて人間同士、尽きぬ話…浮世の憂いも喜びも友人達の消息も…話せる時間が持てる気がしていたのに。
今月に入って、ばたばたと訃報を聞く。
知人が三人も逝ってしまった。
夕暮れ。
黄昏。
寂寥感だけがつのる。
この一週間、心が彷徨って身の置き所に困った。