長屋暮らし？

「バターが切れたんだけど、ちょっと貸してくれる？」
２軒隣のA子がやって来る。

「あ！酢がほんのちょっとだけ足りない～。お酢、少しだけわけてくださいってもらって来て」
私は息子をA子宅によこす。

彼女の隣のMちゃんからは、毎年そこんちの子供服のお下がりがやってくる。

その向こうのNさんからは、時々総菜のおすそわけ。
彼女が働いているデパートの総菜売り場の残り物。
残り物と言っても、サラダが￥800もするような気取った総菜屋のものなので、
いつもありがたくいただく。

上階のNちゃんのママは、実家から送られて来たというメロンやらスイカやらを持って来てくれる。

外では近所の子供たちがうろちょろしている。

「長屋みたいだね」
妹が笑う。


独身の時はもちろん、結婚して子供が生まれてからもしばらくは、近所付き合いなんて面倒だから絶対しないと思っていたのに。


長屋みたいって言われるよ。
自転車貸してとやって来たA子に言うと、ゲラゲラ笑った。



隣近所との付き合いが希薄になってきたと言われるこの頃だけど、ほんの少しドアを開ければ芋づる式に友達は増えていって、
ゆるやかに繋がっていけると思う。
うろついている子供がどこんちの子か、ちゃんとわかる地域での子育ては、とても安心できるから。