https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190821-00000019-ykf-soci
歯を失う原因の第1位(40%以上)の「歯周病」。歯に付着したバイオフィルム(細菌の塊)に含まれる歯周病菌によって引き起こされる。進行すると歯と歯肉の間のすき間(歯周ポケット)が深くなり、放置すると歯を支えている歯槽骨などの歯周組織が破壊されて歯が抜ける。国内の有病率は30~50代で約8割、60代で約9割とされる。
その破壊されかけている歯周組織を再生させる薬が「リグロス」だ。国内の薬品メーカーによって開発され、歯周組織再生医薬品としては世界初。2017年に保険適用になっている。幸町歯科口腔外科医院(埼玉県志木市)の宮本日出院長が説明する。
「リグロスが画期的なのは、歯槽骨だけでなく歯と歯肉を結合させる歯根膜やセメント質も再生させることです。有効成分の『bFGF-2』という成長因子は、すでにやけどや床ずれなどの治療に使われていました。リグロスによる歯周組織再生療法は、フラップ手術に併用して行います」
歯周病の治療は大きく分けて「基本治療」と「歯科外科治療」がある。基本治療は器具を使ってバイオフィルムや歯石を除去する。しかし、歯周ポケットが深かったり、歯根や歯周組織の形態が複雑で除去しきれない場合は歯周外科治療が行われる。
フラップ手術は歯周外科治療の1つで、歯肉に局所麻酔をして切り開いてバイオフィルムや歯石を取り除く治療。再生療法はフラップ手術できれいにした後に、歯槽骨の欠損部にリグロスを塗布してから切開部を縫合する。抜糸は1~2週間後だ。
◆抜歯せず温存
ただし、すべての症例でリグロスが有効というわけではない。適応症例は基本治療が終了し、フラップ手術が必要な歯。そして、歯周ポケットの深さが4ミリ以上、骨欠損の深さが3ミリ以上の垂直性骨欠損(骨が部分的に垂直に溶けている)の歯が対象となる。歯槽骨全体が水平に下がっているような症例では、効果は見込めないという。
「良好な効果が期待できる進行度は中等度の症例で、軽度に改善できます。しかし、重度の場合でも状態によっては中等度へのステージアップが可能。つまり、これまで抜歯になってしまった症例でも、リグロスによって温存できるようになったのです」
研究で確認されている効果で言えば、術後6カ月の骨再生量はリグロスを使用しない場合と比べて約2倍、術後9カ月の骨再生率は約60%。重要なのは術後3カ月ごとのメンテナンスで、きちんと長期にわたり継続していれば9年後の骨再生率が119%という研究報告もあるという。
歯周病菌は常在菌なので、歯周病に治癒はない。放置していれば症状がなくても必ず進行するので、最低でも3カ月に1度は歯科クリーニング(PMTC)をしてもらおう