興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

bite the hand that feeds you

2009-04-26 | 戯言(たわごと、ざれごと)
 これは日本の諺、「恩を仇で返す」に類似する英語の諺だ。

 直訳すると、「食べ物を与えてくれた人の手に噛み付く!」、
となるけれど、「犬は人間の親友」という
大の犬好きのアメリカ人たちにとっては
いかにも馴染み深そうな言い回しだと思う。

 余談だけれど、「恩」という概念は、厳密には日本文化固有のものであり、
たとえば英語のobligationなどとは微妙に異なるものだ。
「恩」という事象は、「甘え」の概念の考察において土井が触れているけれど、
実際、甘えの文化、以心伝心、暗黙の了解の日本において、
「恩」という関係性がはぐくまれていったのは興味深いことだと思う。

 話がいきなり大幅に逸れたので強引にもとに戻すけれど、
「恩を仇で返す」とは、自分にとってなかなか耳が痛い言葉だ。
ダイレクトに、具体的に何かをして、仇で返す、ということこそないものの、
たとえば過去に自分によくしてくれた人のことを
いつの間にか忘れかけていたり、その後のことを報告できていなかったり、
なんらかの行為を持って好意を返したり、礼をしたりする、
ということを怠っていたり、そういうことは少なくない。

 そういう自分は、間接的に、恩を仇で返しているように思えることがある。
「恩知らず」という言葉があるけれど、それは誠に恥ずかしいことだと思う。
食べ物をくれた手は、せめていつでもきちんと覚えていたいと思う。