興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

思わぬ盲点

2011-11-05 | 戯言(たわごと、ざれごと)
2007年9月執筆


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 新しい仕事のパートナーと
一刻も早く連絡を取らねばならない状況下で、
4日前から連絡が取れなくなっていた。

 彼女とコンビを組んでからまだ日が浅く、
携帯電話の番号のみしか知らなかったのもまた
事を複雑化させていた。
オフィスは今週移動したばかりで、
そこの電話は今の時点ではまだ使えない。
電子メールのアドレスもしらない。
おうちの電話番号も知らない。

 難儀なものだった。

 4日前から、彼女の携帯電話に連絡すると、
呼び出し音すら鳴らずに、留守録に繋がる。
毎日、どの時間帯(真夜中とか知らないけど)に
電話しても、そのようになる。

 そこで自分はいくつかの仮説を立てた。

1.携帯をどこかになくしてしまって
  そのままバッテリーが切れている状態。

2.携帯を持ったまま、どこか海外へ出張している。
  家族や親戚の緊急事態で
  イスラエルに戻っているのかもしれない。

3.携帯が壊れてしまって使えない。

4.何らかの理由で携帯の電源を切り続けている。

5.私のことが嫌いで普通に着信拒否。

 さて、まずオプション5はないと思われた。
何もまずいことをした記憶がないからだ。それから
自分の電話を拒否することで彼女が得られる利益は
ゼロである。

 次に、オプション1、3、4も
除外できそうに思われた。なぜなら、
彼女はいかにも携帯電話が不可欠そうであるからだ。
4日間も、携帯が故障、紛失した状態でやり過ごすとも
思えなかった。しかしこれらは完全に除外できない。

 残るはオプション2だった。
これは実際別のパートナーにあったことだった。
その人は、週末、海外の友人の結婚式に行ったのだ。

 おかしいなぁ。困ったなあ。と思いつつ、
善後策を立てて、彼女と連絡が付かなくても
その件においてのダメージが最小限に留まるように
今日のうちに手を回すことができた。

 ところが、先程、いつの間にか彼女から
自分の携帯電話に着信とメッセージが入っていた。
寝耳に水である。なんだかとてもホッとすると同時に、
一体答えはなんだったか、止め処ない好奇心が沸いてきた。

 回答を求めるように、メッセージセンターに電話した。

 なんと。

 今週の水曜日ぐらいから、
ユダヤ人の祝日で、正統派ユダヤ教の彼女は
携帯電話を使うことすら禁じられていた
ということだった。

 結局オプション4が正解だったわけだけれど、
ユダヤ教の決まり事で携帯電話にアクセスできない
状況だとは思いもよらなかった。
留守電で平謝りに謝る彼女が可愛すぎて笑ってしまった。
いずれにしても、連絡がついてよかった。

 自分のイマジネーションの限界を感じた。
もっとももっと視野を広げないとなあ。狭すぎ。

 でも、世の中思いもよらないことだらけだから
人生面白いのだろうとも思う。


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 教訓

 特にアメリカ社会で重視しても
 し過ぎることがないのは、
 個人の信仰という要因だ。
 政治的、法律的、社会的にも、
 信仰の優先順位は高い。