興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

自分の人生を生きている人と、自己中心的に生きている人との違いについて

2014-12-29 | プチ臨床心理学

 サイコセラピーをしていてしばしば出会うのは、長年に渡って、日々、いろいろなところで罪悪感に苛まれて生きている方です。彼らは決まって自分のことよりも他人のことを優先していて、いわゆる「良い人」なのですが、慢性的な鬱感情を抱いていて、イライラしたり、ストレスを感じたりして生きています。そして彼らには決まって、その身の回りに、彼らの罪悪感を刺激することで、彼らを支配する人がいます。

 それは彼らの親であったり、配偶者やパートナーであったり、きょうだいや親戚であったり、近しい友人であったり、職場の人であったりします。彼らはしばしば、そうした人たちから、「自己中心的」、「自分のことしか考えてない」などと、批判にあい、傷つき、再びそのように言われることを恐れながら生活しています。

 しかし、彼らの話によく耳を傾けて聴いていると、更なる共通点が見えてきます。

 彼らはそれほど自己中心的でもなければ、他人のことを考えています。むしろ、考えすぎて鬱々しています。そして、彼らを自己中心的であると批判する人たちにも共通点がみられます。そうした批判者は往々にして、タイトルにある、二つの異なることを混同しています。自分の人生を生きている人と、自己中心的に生きている人の違いです。

 そうした批判者は、彼らが自分自身の人生を生きようとすると、「自己中心的過ぎる」などという言葉を浴びせ、彼らの足をひっぱります。彼らにとって、自分のことを大切にすること、自分のことに集中することが、受け入れられないことであり、しかし、無意識的には、その必要性を感じていて、また、そうしたくても自身の罪悪感によってそれができないため、そのように振る舞おうとしている他者を自分の身近に見ると、攻撃してしまいます。こうした批判者は、彼らのなかに、自分自身の受け入れがたい願望を見ています。受け入れがたく、否定している自分のニーズを見せてくる彼らに苛立ちや怒りを感じるのです。

 こうした批判者に、幸せな人はいません。自分はこれだけのことをやっているのだから、あなたもこれだけのことをして欲しい。私はこれだけ自分を犠牲にしているのだから、あなたももう少し自分のことを犠牲にしてほしい。こういう考えが基盤にあります。

 こういう批判には、十分に気を付けてください。

 なぜなら、私たちは、自分の人生をきちんと生きながら、他人のことを思いやることは十分に可能であり、それは決して二律背反するものではないからです。

 それから、自分の人生をきちんと生きていない人は、他人のことに意識を集中することで、自分自身と向き合うことから無意識に回避している傾向があります。こういう人たちがあなたに、「あなたも自分の人生を生きずに他人のことに集中しなさい」というメッセージを発信してきても、それを呑み込んではいけません。なぜなら、真に自己中心的であるのは、あなたではなくて、彼らだからです。たとえば彼らは、自分の持っているモラルの基準をもとにして、そこから離れることなく相手を裁いているわけで、常に自分のモラル基準が正しいと信じている自己中心性があります。