興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

夜桜の花火大会とクリスマスパーティー

2023-04-03 | 戯言(たわごと、ざれごと)
 土曜日、品川で仕事をしていたら、妻からLINEがありました。Instagramの情報で、夜に中井町で花火大会があるというのです。ちょうど仕事が早く終わる予定だったので、是非行こうと伝えました。夕方、茅ヶ崎で合流して3人で車で会場に向かいました。

 中井町は人口の少ないのどかなところですが、会場に着くと、そこでは驚くほど多くの人たちで既に賑わっていました。なんとか無事にレジャーシートを敷けて、長蛇の列に並んでなんとか夕ご飯も確保できたらまもなく花火が始まりました。

 10分という比較的短い時間ですが、うちの4歳児も含めて、特に子供達の歓喜が印象的でした。「た〜まや〜」とかかわいい声がそこら中から聞こえてきます。老若男女、みんな楽しそうです。

 そこでふと思いました。特に未就学児はこの3年のコロナ禍で、近くでじっくり花火を楽しむ機会は非常に少なく、今回が初めての子もたくさんいるのではと。

 夜空には大きな花火で、その辺り一面は満開の桜並木で、外気はまだ肌寒く、不思議な感覚でした。

 花火が終わった後も、熟年者の方たちのジャズバンドの演奏が、アマチュアとは思えない程にレベルの高いもので、「A列車で行こう」から「愛しのエリー」まで、素晴らしいものでした。気づいたら妻と息子は手を取り合って音楽に合わせてダンスをしていました。

 翌朝、なんとなく、アレクサにデュークエリントンの「A列車で行こう」を掛けてもらうと、息子は気に入ったようで、「あれくさ、リピートさいせいして!」と言いました。彼は音楽の好みが難しくて、こちらがリクエストした曲でも気に入らないとすぐに「アレクサ、ストップ!」と言って再生を止めてしまうので、彼と好みが合った時はちょっと嬉しいです。

 そこで不意に思い出しました。クリスマスの季節にIKEAで買った、組み立て式のお菓子の家の賞味期限が迫っている事に。そこで急遽、「お菓子のおうち一緒に作らない?」と息子に聞いてみたら大はしゃぎで「やるやる!」というので、2人で作りました。クリスマスどころか季節は復活祭です。

 その後もリビングでは「A列車で行こう」の陽気な音楽が流れ続けていて、彼が日々作っているLEGOの小さな街でも、盛大なクリスマスパーティーが行われました。彼の心の中はすっかりクリスマスです。

 しばらくして彼が、

 「おかしのいえたべたい!」

というので、

 「そうだねえ。まずはおうちが固まってからかな」

と伝えると、

「おかしのいえ、きょうたべたい!」

と、引きません。

 しかしよくよく考えてみると、クリスマスは既に過ぎているし、彼の主張の何が問題なのかわからなくなってきました。それでも直感的に、

「そうだよね。今日食べたいよね。ただ、せっかく作ったのにその日のうちに食べちゃうのは勿体ないから明日食べようか?」

と伝えてみたら、納得してくれました。

すると息子は突然スターウォーズのLEGOのミニフィギュアの「オビ=ワン・ケノービ」を持ってきて、

「これはこのひとのおうち」

と言って、オビ=ワン・ケノービをお菓子の家の前にちょこんと置きました。

 その翌朝。

「おかしのいえ、たべる」、

と息子が再び言うので、

「約束だったね。食べて良いよ」

と伝えたら、息子はなんだかあまり嬉しそうではありません。

「どうしたの?ずっと食べたかったんでしょう?」

と聞いてみると、

「う〜ん。たべたらこのひとのおうち、なくなっちゃう」

と、オビ=ワン・ケノービを見つめて言いました。

 彼はいつお菓子の家を食べられるのでしょう。