興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

セッション中の配達について

2023-10-13 | オンラインカウンセリング

 皆さん、こんにちは! 

 空が高く、澄んだ空気が気持ち良い季節になってきましたね。

 

 さて、今回話題にしたいのは、オンラインの心理カウンセリングのセッション中にお越しになる配達業者さんへの対応についてです。

 これまで私は、セッション中に我が家に配達業者さんが来ても、対応しないようにしてきました。

 それは、私とのセッションに大事な時間を作ってくださり、それにお金を払ってくださっているクライアントさんとのそのセッションに全神経を集中するためです。

 私や妻が注文した商品を配達業者さんが我が家に届けてくださったものを、セッション中に受け取ることは、「セラピストが、セッション中に、セラピストのニーズを優先する」という、あるまじき行為であると、これまでは考えてきました。

 当然ですが、セッション中に、クライアントさん宅にお荷物が届いた場合は、ご自由に対応していただいております。

 それは、セッションの50分間は、完全に、クライアントさんの時間なので、クライアントさんがそれをどう使おうとクライアントさんの自由である、という考えだからです。

 ただ、最近は、ご存じのように、我が国の社会問題として、配達業者さんに、ものすごい負担が掛かっていることが日々話題になっています。

 これまでも、セッション中に、我が家のインターホンが鳴るたびに、すごい罪悪感を感じてきました。

 対応したいけれど、それはクライアントさんにとって、とても失礼なことになるから、そうすべきではない。配達業者さん、ごめんなさい、という葛藤です。

 しかし公認心理師という立場は、個人の幸福だけではなく、社会全体の幸福について考えて行動していく立場です。

 クライアントさんと、クライアントさんとの時間を大切にする態度は依然として正しいと思いますが、それによって、配達業者さんがつらい思いをしている、強い言い方をすると、配達業者さんが犠牲になっている、というのは、何かが間違っていると思うようになりました。

 そんなに毎回起きることではないですし、配達は、午前中に集中しているので、私のセッションを受けてくださっている多くの方には、今回私が話題に挙げている問題はあまり該当しません。しかし、今回、今の私の考え方や方針について、ここで皆さんにお伝えさせていただきたく、この記事を書くことにしました。

 先ほどやはり、10時からのセッション中に、我が家のインターホンが鳴りました。

 長いお付き合いのクライアントさんで、お互いに良く知っている関係性でもあったので、ここで書いた事情を説明して、対応してよいかと聞いてみたところ、快諾してくださいました。

 所要時間は30秒です。私が宅配業者さんに対応することで、そのセッションに何か大きな悪影響があるかというと、そういうことはありません。

 私としても、配達業者さんに後ろめたさを感じながら、セッションを継続するよりも、30秒中断することで、葛藤を経験せずに済んだので、その後のセッションにも罪悪感なく集中することができました。「ピンポン」を連打されるなか、罪悪感と戦う1分間の私の情緒応答性は、多少なりとも落ちていると思いますし、それこそ「クライアントさんに最善のものを提供する」、というモットーから外れてしまっているという皮肉があります。

 長くなりましたが、こうした理由から、よくあることではないのですが、配達業者さんが私の家にお越しになった場合は、大変申し訳ありませんが、今後は対応させていただきます。皆さんのご理解に感謝致します。くどいようですが、この記事を全てのクライアントさんがお読みになっているわけではないので、この状況になった時は、当面は、この記事で書いたことを説明したうえで、対応させていただきます。

 引き続き、宜しくお願い致します。

 

 黒川