興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

認知の歪み その4-「個人化」 (Personalization)

2014-02-24 | プチ臨床心理学

 自分の言動について、その結果や成り行きにおいて、責任を取るのは大切なことですが、責任意識の強い人が陥りがちな認知のゆがみのパターンに、Personalization (過度に個人的に取ること)というものがあります。これは、必ずしもあなただけの責任ではないことに対して、必要以上に自分を責める傾向です。これはまた、誰かがあなたに対してネガティブに振る舞ったときに、その理由についていろいろな可能性を考慮せずに、それは自分に問題があるからだ、と思ってしまう傾向でもあります。

 たとえば今日、どういうわけかあなたの上司の機嫌が悪かった時に、「私何かしたかなぁ。もしかしたらXXXのことかな、YYYのことかな」、などと憶測を立てて、悶々としてしまう人もいますし、あなたの配偶者がなんだかイライラしていたら、それが自分のせいだと思ってしまう人もいます。

 しかし、彼らが悪いムードなのは、あなたとは全然関係のない理由によるかもしれないし、あなたと関係があったところで、もしかしたら、彼らは自分の責任をあなたに擦り付けているだけかもしれません。まず、彼らの悪いムードの理由がわからなかったら、いろいろひとりで憶測せずに、言葉に出して聞いてみるのがいいでしょう。実は自分とはまったく無関係のことで機嫌が悪かったと知ってほっとすることは多いでしょう。ところで、あなたが彼らの悪いムードに巻き込まれてなんとなく気を遣っていると、それが相手に伝わり、今度は本当にあなたに対して彼らがイライラする、ということもあります。つまり、誰かのムードが悪いときに、それを個人的に取らないこと、巻き込まれないことが大切です。

 また、あなたの友人が実際直接何かについてあなたを非難してきたとします。このときに、友人の非難することを鵜呑みにしてしまい、ものすごい罪悪感を感じたり、自己嫌悪に陥ったりしてしまう人もいます(脚注1)。しかし、前にもいいましたが、人間関係というのは、どちらにも責任があるもので、どちらかが100%悪い、というようなことはほとんどありません。人は、誰かを非難しているとき、往々にして、自分自身の責任については忘れがちですが、彼らが忘れてしまった分の責任まであなたが呑み込む必要はありません。話し合ってみて、どこまでがあなたの責任で、どこからはそうでないか、見極めて、その部分について反省し、行動を改め、責任を持てばいいのです。

 また、より現実的な問題として、あなたが仕事で何か失敗をして、その結果、上司や顧客など、誰かが困ったり、腹を立てたりする、ということは実際にあるでしょう。これは、「あなたの失敗」が、実際に彼らの気分を害しているわけですが、この場合においても、「責任をとる」ことと、「個人的に取りすぎる」こととは異なります。その失敗の結果について、反省して、同じことを繰り返さないように気を付けたり、また、その損失について償えることがあればする。それが責任をとる、ということで、自分を責め続けるのは、責任を取ることとは違います。

 こういうわけで、人間関係において何かネガティブなことがあったときに、それについて、必要以上に個人的に受けすぎて、自責の念に陥ってしまわぬよう、注意が必要です。自己嫌悪の感情は、うつと密接に結びついています。自責がはじまったときに、「本当に全部自分が悪いのかな」と、まずは疑問を持ってみてください。それから、「すべてあなたが悪い」という事象は、世のなかそうそうないことを念頭に入れておいてください。


 

(脚注1)これとは逆に、誰かが自分に対して腹を立てていることに対して、まったく責任を取ろうとしない人もいます。「あの人はああいう人だ。個人的にとってもしかたない。私のせいじゃない」、といった具合です。また、このように、責任が取れないゆえ、常に非難の矛先が他者に向いてしまうひともいます。こういう人は、うつや不安にはならないかもしれませんが、他者と良い人間関係を築くのは非常に難しく、うつや不安とは全く異なるこころの問題があります。

 



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