索引 西郷隆盛『南洲翁遺訓』
明治維新の立役者の一人であり「江戸無血開城」等の政治的難事業をなし遂げた稀有な政治家、西郷隆盛。
晩年こそ反逆者として追われ不遇の最期を遂げたが今なお多くの人から慕われ続けています。
しかし、特に晩年の行動は謎に包まれており、今でも議論が尽きません。
西郷を生涯にわたって支えた思想とはどんなものだったのか?
それを知る上で大きな手がかりがあります。生前の彼の言葉が記録されている「南洲翁遺訓」です。
編纂したのは元庄内藩有志たち。西郷の仇敵にあたる庄内藩の人たちが彼の言葉を残そうとしたのは、西郷のはからいにより庄内藩に寛大な処置がとられたからでした。
その高潔な人格に感動した人々による編纂であるため、これまでは「偉人・西郷隆盛」をイメージづける名言集という読まれ方がなされてきました。
しかし、その言葉の端々に潜む意味を丁寧に読み解くと、西郷が世界史の動向を鋭く見据え、比類のない洞察力で、国家のあり方、文明のあり方、
人間のあり方を模索し、新たな時代の指針を打ちたてようとしていたことがわかってきます。
研究者の先崎彰容さんは、この書が単なる名言集を超えた一級の思想書であり、これまで謎とされてきた西郷晩年の行動の意味を解き明かす鍵を握っているといいます。
また、その言葉の裏には、せっかく維新を成し遂げたにもかかわらず志を失い私利私欲にふける官僚達、民のことを忘れ権力闘争にあけくれる政治家達、
物質的な繁栄のみを追い求めようとする政策等々への、西郷の深い憂いがこめられています。
この書は、明治新政府への厳しい諫言でもあり、現代社会の問題をも鋭く刺し貫く射程をもっているのです。
西郷隆盛『南洲翁遺訓』第1回 揺らぐ時代 2018.01. 「2」
西郷隆盛『南洲翁遺訓』第2回 敬天愛人 2018.01. 「2」
西郷隆盛『南洲翁遺訓』第3回 文明は普遍的 2018.01. 「2」
西郷隆盛『南洲翁遺訓』第4回 時代を映す「古典」
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