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3つ目の附属高校奮戦記!私に鞭打ってくれた人々ー6

2019年05月04日 | 1歩前へ踏み出す!

5 傘持って16km持久走小林君 
① 雪降る中、傘をさして16㎞を走りきった小林君
職場を変わると言うことは、このことかと思い知らされた幾つかの出来事の内の1つに、今から述べることが大きな教訓となった。私が新米教師として大学卒業後最初の赴任先は先にもあるように、建学の精神明確な私立東山学園であった。読者推測の通り、宗教教育の枠付けがあります。二つ目の職場は公教育の現場で、しかも、新設高校の立場でもあり、職員も生徒も保護者、地域も一緒になって学校造りに夢を託した勢いとエネルギーを感じた10年間であったが、これから、お話しする国立京都教育大学の附属高校は、前二校とは違いがあったのは言うまでもない。先進的な研究実践教育を狙いとする高校である。
 職員(先生)もだが、生徒ももちろん保護者も、普通では無いのである。そんな、環境に身を投じての数々の、これまでにない経験をする中で、私は鍛えられて来たのである。 その日は朝から小雪がちらつき、それでもグラウンドは一面白くなるほどでも無かった。いよいよ、二時間連続の体育実技である。始まる時間になっても小雪は止まないまま生徒達は、グラウンドに集まっていた。二年生のクラスである。アイパーをかけて前髪の手入れに心を砕いていた、小林君は小柄で運動神経は悪いわけではなく、どちらかというとサッカーやバスケット等のボール種目が得意な生徒であった。綺麗にセットされた前髪を気にして、・・・先生、今日の持久走休みます見学させてください。と申し出でをしたのである。場面は授業開始の集合体型で出欠確認をした時にである。他の生徒にとっては、またわがままな 小林が 授業を邪魔し始めたなと、早く走りはじめたく、気持ちがはやっている生徒達をしりめに、駄々を言い出したといつもの反応、小林本人よりも他の生徒は私(指導者から)から一刀両断に彼を打ちのめさせて、早く走りはじめたい。のが本音で、でも誰ひとりとして、声や行動に出ないまま、・・・私は、閃いて近くの事務所まで走って、傘を持って、小林に傘を貸すから前髪は大丈夫、小林!ほら!・・・みんな走りだそう。小林はこうだ!前髪が小雪のため型くずれするので、見学させて!と皆の前で、言った手前、無理矢理でなく、先生(私)が小林の、明らかな わがまま のために、わざわざ傘を準備するという、咄嗟の反応で彼は引くに引けない局面にはまったのであった。
みんなは走っているさなか、次の小林のわがままを予測しながらの走りであったが、なんと、彼は傘をさしたまま、16㎞(約90分)を走りきったのである。この件は忘れられない教訓として、私をまた一段教師業の階段を上がらせてくれた附属高校での一幕であった。前任校では全くもってあり得ない小林のわがまま加減さである。次ぎに話題となる巨匠、藤田一郎氏なら果たしてどうされるだろうか?あれこれ思いめぐらし私は、苦闘していったのでありました。

② 持久走を好きになるために
 冬の高校体育実技は多くの学校で、持久走の授業をするのが定番となっている。附属高校はグラウンドに恵まれ、フエンス沿いに一周ジョグギングすると四百メートルはある。 体育実技50分×2と間の休憩を入れると110分ある。体育の次の教科の事を考慮する必要はある。着替え、身体の手入れなどの時間に余裕を持たせ無くてはならない。
 そこで、このグラウンドを参加生徒全員で ゆっくり駆け足からはじめる 事としている。一番持久走の苦手な生徒を対象に ゆっくり 駆け足である。中には日頃から陸上競技部活動をしている得意生徒もいるのは、常にあり得る事である。ここで工夫が必要となる。
 私は陸上競技を専門とする指導者である。私の得意種目はハードル競技である、後に混成競技を少しやるようになり、陸上競技の楽しさを探し当てた実感を持ったのである。走りっこは、速く、強い子が、前を行く、反対に運動が苦手な子、遅い子が、後ろから、敗北感と苦痛を伴いながら追いかける事になる。後からゴールに入る子の気持ちが、晴れ晴れとし、又次の機会も待ち遠しく、気分は果たしてなってるだろうか? 負けん気大きい性格の子は、よーし!次には速い子に勝って、見返してやろうと思うだろう。であっても負けん気だけで、果たして逆転する事が可能なのか!考えて見たい。
 先ず、速い子に上回る身体的準備が必要なのではないか、身体的に同等の者同士なら、やる気、つまり、精神的充実の度合いで逆転の可能性がある。ところが、各個人の身体的条件は、高校生なら過去十数年間の生育歴にさかのぼる、個人差があるわけである。従って、走る前から各人のこれまでの生活様式まで、得意、不得意、の精神面の差、得意なら、大いに運動環境を我が物にして、ますます、身体能力に磨きを掛けることとなる。反対に環境で後天的に造り上げられた、運動不得意群の人格は、ますます、動き回る環境から遠ざかることとなるのは当然の成り行きなのです。
 これらの要素を理解し、実施する高校体育実技では、この時間的経過をくつがえし得る視点が必要となるのです。ここが、指導者の本領発揮のポイントとなるのです。
 ひとりひとりが覚醒しなければならない事柄を、彼らに強く求めるのです。競技者ではない生徒に何を考え、体感させるかが問われているのです。学校体育実技は比較論でも無く、勝ち負け論でないわけを十分に知らしめる事が生命線だと確信するのです。
 各人が充実すればいいのです。今まさに花盛りの市民マラソンブームの底流に流れる考え方そのものです。自分との闘いの楽しさを知る事が、皆さん最も大切な視点でしょう。 長々と述べましたが、この課題に真っ向から立ち向かう持久走の時間としたのです。
それは、同心円上を講座の生徒が走るのです。得意な生徒は外側円周を、不得意な生徒は内側円周上をそれぞれ走るのです。同じ時間を!走る距離は違うのです。いつも横を見ると級友が一線で、トップを走っているのです。こんな、走り方を許容する事はこれまでの考え方に無かったのであります。
 私はヒントを当時ももちろん著名な旭化成陸上部の日頃の練習中からもらいました。強い選手は、わざと遅れて練習に参加し、集団に追いつく為のスピードとスタミナを選手自身に課していたのです。他の例には、こんなのがあります。強い選手は本来のコースから意図的に外れ、また元の集団に合流するために余分な距離を走っていたのです。ある選手は走行中に立ち止まり靴ひもを締め直し、ふたたび先頭集団に合流する様に接し、これだと、閃いたのです。チームの底上げが大きな目標であり、名実共にナンバーワンの実力を保つための工夫ある日々の練習のスタイルなのでした。
 私は、この考え方を学校体育実技の持久走に活用できないか考えました。正直難しい事でした。これまでの考え方をくつがえす必要があるからです。遅くて苦手な生徒が先頭を走ることはあり得ないのが常識なのです。この考え方が払拭出来て、約90分間を走り続けられた生徒達は、何とも清々しい表情と汗を、真冬のグラウンドで流したことか!
 生徒の感想に、持久走が始まると思えば胃が痛くなるこれまでと違って、次の持久走が待ち遠しくなるようになりました。まさに、世界が開けました。先生ありがとう!と
 この生徒は、高校までの体育の成績は、ずーっと「2」で、他の科目が優秀なだけによほど悔しかったし、この持久走後は「4」の成績が付いて今後に勇気をもらったと感想がありました。
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