祝日の昨日、午前中の予定が終わり、
腹ペコだった私と息子は
出先近くのショッピングモールに食べに行きました。
ところが、レストランはどこも
順番待ちの列。
そうだ、今日は祝日。
天気いいし、コロナも落ち着いてきたし、
みんな出かけたくなるよね…
ため息。
列に並ぶ余裕がなかった私たちが
押し出されて行き着いたのは、
本屋とコラボしたタリーズコーヒーでした。
二人でニヤリ。
良いね~。
お食事処としては不足だけど、
その欠点を補って余りある魅力がある。
テラス席、空いてるし!
よし、読むぞ!!
・・・テラス席が空いていたのは、
天皇誕生日で張り切っているらしい
右翼の街宣車と、
祝日なのに休めないらしい
隣接するマンションの建設現場からの騒音で
大変うるさいからだということが
ほどなくして分かったのですが。
普段なら騒音から逃げるところだけど、
今日はそんなこと言ってられない。
逆境に負けないぞ!と決め込んで、
パスタとサンドウィッチで
お腹を軽く落ち着かせた後は、
ドリンクお供に
隣の本屋から持ってきた本に没頭。
私が選んだのは、
先日、芥川賞を受賞した話題の本、
『推し、燃ゆ』でした。
歴史モノでも推理モノでも
ノンフィクションでもない、
現在の日本の作家が
現在の日本を舞台に描いた小説は、
私はあまり読まないのですが、
この日は、なんとなく手が伸びて。
「こういう話題の本は
図書館ではなかなか読めないし、
でも買う気にはなれないし、
でもちょっと気になるし、
ちょうどいい、
ちょっくらここで試し読んどくか!」
という吝嗇な精神が
働いただけなんですけどね。へへ。
で、たいして期待もしていなかったのですが…
(芥川賞受賞作に、なんと失礼な!
なんですが、
今まで「話題の本」を手に取り、
期待通りだったことがあまりないもんだから
期待しない癖がついてしまって)
結局、小一時間、
引き込まれて一気に読み終えました。
日本語が、言葉の選び方が、
ひとつひとつ瑞々しくて
感動しながら読みました。
視点、風景の切り取り方、心象の捉え方に
ハッとさせられる。
描くべきところを描き、
余計なところは描かない。
それは、
一人称で語られる主人公の視点で
きっぱり選び取られる。
その取捨選択も新鮮でした。
弦楽器で言えば、
相応しい「的確な音」を期待して聞いていたところ、
予想以上の的確さで、
しかも想像を超える瑞々しい音が
耳に飛び込んできてハッとさせられるような。
(ああ、もどかしい。私の貧弱な語彙よ!)
現代の日本の作家が
現代の社会を舞台に書いた作品というのも
いいもんだな、
食わず嫌いを少し治そう、と
しみじみ思いながら読了しました。
ふーっと落ち着き、目を上げると、
息子がアガサ・クリスティに没頭しています。
(ちなみに、彼が今ハマっているのは
『ミス・マープル』シリーズ)
…そうそう、私も中学の頃は
アガサ・クリスティ、沢山読んだなー。
趣味は違えど、
案外似たようなところを通るんだな。
そう思いつつ眺めていると、
息子が気付いて言いました。
「お母さん、もう1冊読んだの?
早っ!
で、どうだった?
ぼく、その本のあらすじは知ってるよ。
新聞に載ってたから。」
「良かったよ。
言葉の選び方がね、すごく良いと思った。
だから、あらすじでは
この本の良さが伝わらないかも。
いつか読んでみたらいいよ」
「ふーん、分かった」
息子は、基本的に
歴史モノ、推理モノが好きなんだけど、
学校では幸田文全集なども
好んで読んでいるらしいので、
こういう小説も好きかもしれない。
良い本のおかげで良い一日になったな~。