邦画ブラボー

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「酔いどれ天使」

2005年11月27日 | ★人生色々な映画
この顔!
若き三船敏郎の美貌に驚嘆する。

黒澤映画には
「顔」インパクトの俳優が多々出演する。

志村喬の個性的な容貌も一度見たら忘れられない。
強烈な+極と+極が激しくぶつかりあう「酔いどれ天使」。
この映画から黒澤映画に三船敏郎はかかせない
俳優となった。

肺を病んだヤクザと、
変わり者の「酔いどれ」医者との物語。

風紀が乱れた戦後の町にはヤクザがはびこり
通りの脇には
ガスがたえずぶくぶく出続ける汚れた水溜りがあった。

その泥の中であがいているような松永。(三船)

絶望した松永が雑踏を歩くバックに
陽気な「カッコー・ワルツ」が流れるシーンがある。

「野良犬」と同じくまたもや音楽の魔術がここにも。
軽やかなメロディが哀しみをより際立たせるのだ!
なんと残酷な演出だろう。

夜になると街角から聞こえてくるギターの調べは
もの哀しく洒落ているし、
ナイトクラブで笠置シズ子が歌う
名曲「ジャングル・ブギ」は黒澤明が作詞!

音楽がこんなに魅力的に使われている映画はなかなか無い。

薄情な情婦役の木暮美千代、清らかな花のような久我美子。
女優の使い方もばっちり。

いつもは、「腹にいちもつ」とか、「蓮っ葉で実がない」とか、
「ぐうたらだらだら」とかの役が多い千石規子が
情を見せてくれてほっとした。

終盤に近づくにつれ
三船がだんだんとやつれ、
逞しい体もペラペラになり、さながら
「吸血鬼ノスフェラトゥ」のように変貌していく。
それは大げさだとしても、
海辺の幻想の場面は
ドイツ表現主義の映画を思い起こさせた。

ラストの格闘の場面圧巻。

志村喬の深い表現力もすごいが
三船の静と動のコントラスト、
衝撃ともいえる存在感に圧倒される。

私は「酔いどれ天使」は
眞田(志村)ではなく
松浦(三船)なのだと思っている。

1948年 黒澤明監督作品  脚本:植草圭之助 黒澤明  撮影: 伊藤武夫
音楽:早坂文雄  美術: 松山崇

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「県警対組織暴力」

2005年11月27日 | ★ハードボイルドな映画

シリーズDVD全部揃えたあなた、
「広島死闘篇」がまだ忘れられない御仁は
ぜひ「仁義なき戦いシリーズ」のとどめ、
笠原和夫脚本「県警対組織暴力」も見て!!
そこまでのコアなファンは見ておられると思うけど・・
はっきりいうて「新・・」は別ものですから。

この題名は東映の岡田社長がトイレでポン!と思いついたという。

のっけのつかみがすごい。

若いもんをずらっと並べ菅原文太の声が響く。

「拳銃不法所持!」ビンタ、
「武器道具集合罪!」ビンタ!張り倒し。
「公務執行妨害!」ビンタ!

「お前らみたいな雑魚をブタ箱に放り込んでみても
税金の無駄遣いじゃ。やるだけやって死んでこい!その方が掃除が早いワイ!!」


台詞で頭殴られるってこんなかんじですかね。

「ぼけーとしちょらんとはよう出入りにいかんかい!」

あの、広能昌三が帰ってきた!と
一瞬錯覚するこのど迫力。
でも実は180度立場逆転して警察側。部長刑事。

警察官になったのは、ピストルを持ちたかったから・・
という動機の久能。

「捕まえられるより捕まえる方になろう思うてのう。」

ダーティ・ハリーなんか目じゃないダーティさ。

どっちが県警でどっちが組織暴力かわからないような血と暴力場面は続く。

川谷拓三が菅原文太と山城新伍に取り調べ室で
ボコボコにされるシーンは歴史に残る。
菅原文太と松方弘樹のからみ、松方VS池玲子タッグマッチ。
梅宮辰夫のエリート警部。金子信雄、成田三樹夫も出ている!

この映画は深作欣二の・・というよりは
「総長賭博」、そして
「仁義なき戦いシリーズ」で我々の度肝を抜いた
脚本家、笠原和夫の映画だと思う。
構成がかっちりタイトにきまっている。
そして躍動する登場人物たち!

終わりは当然ハッピーではありません。
この緊迫感、疾走感そして絶望感よ!
ブラックユーモアもバシバシ効いている。

笠原は晩年「やくざ映画の笠原と言われるのはうんざり」と
言っていたそうだが、自分が書いた作品の中でこの映画が一番好きだったとか。

だがこの後、深作監督とは色々あって完全に決別することになる。
笠原は最後にコンビを組んだ「やくざの墓場・くちなしの花」を見てもいないそうである。

1975年 脚本:笠原和夫 監督:深作欣二  東映

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