また忘れられない映画がひとつ増えた。
さすらい日乗さんに
BSで放送されることを教えていただき、
篠田正浩監督の「涙を、獅子のたてがみに」を見る。
冒頭、瓦礫の中をとぼとぼと歩く野良犬は
強い獅子に憧れながら、騙され傷ついた主人公サブ(藤木孝)のようだ。
白黒の、港の映像にガムを噛む藤木の顔がかぶさる。
これはフランス映画?と思うタイトルバック。
藤木孝の鞭のようにしなやかな肢体、
ほとばしるような生気。絶叫。そして歌の素晴らしさ。
この映画は彼が渡辺プロから独立したときに作られたそうです。
ずいぶん前に「懐かしの・・」みたいなTV番組で
ロカビリーの曲をちらっと聴いて、
悪魔的な魅力に打ちのめされた。
それ以来聴きたくても聴けなかった彼の歌を
この映画の中で存分に聴くことが出来た!
舞台は横浜の港。
港湾荷役労働者(早川保ら)の組合設立を阻止する会社側(南原宏治)に
騙され利用される若者(藤木)の悲劇。
サブを愛するウエイトレス・ユキに、これがデビュー作である加賀まりこ。
いじらしく可愛い。
アンニュイな人妻に岸田今日子。
篠田正浩監督の画面は
構図が最高に美しい。
横浜の街、港、海。
飛び跳ねるように歩くサブを追いかけるカメラ、
労働者たちの群。
ラストシーンは劇場にいるような陶酔を覚えた。
港近くにあるサブの狭い部屋。
ユキの前で歌う、
「私を捨ててしまってくれ」は
一度聞いたら忘れられなくなる歌だ。
(この曲はもう一度ヨットの上でも歌っている)
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「私を捨ててしまってくれ」
作詞寺山修司 作曲 八木正生
年老いたカモメよ 哀しみよ
心あるならどうかわたしを捨ててしまってくれ
すっと遠くの日の沈む沖よりも
ずっと遠くの海に
私を捨ててしまってくれ
カモメ、カモメ
昔の愛よ
カモメ、カモメ
汚れちまった私の夢に
海のうねりが高すぎる
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・・・
「いいわよ。一度だけなら・・」(ユキ)
金持ちパーティに潜り込んだ貧しいサブが
体中から搾り出すようにアカペラで歌う
「地獄の恋人」も衝撃。
寺山修司と八木正生のコンビはあの
「あしたのジョー」「力石徹のテーマ」でも有名。
脚本にも寺山修司の名がある。
寺山の葬儀で「100年経ったら帰ってきてくれ」と誰かが言ったとか?
100年と言わず帰ってきて欲しい。
篠田+寺山の大傑作。
DVD出しておくれやす!
1962年 篠田正浩監督作品 脚本 篠田正浩、寺山修司、水沼一郎
■藤木孝「24,000のキッス」もどうぞ!
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