博士と彼女のセオリー(映画)
2014年に公開されたイギリス映画で、世界的に著名な天才宇宙物理学者、スティーヴン・ホーキングをめぐる愛の物語である。11月29日に放映されたものをビデオで観た。
1963年、ケンブリッジ大学の大学院で物理学を研究するスティーヴンは、文学を学んでいるジェーン・ワイルドと恋に落ちる。
しかし、スティーヴンは全身の筋肉が麻痺する難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)にかかり、余命2年を宣告される。
ジェーンは、スティーヴンの父親の危惧を互いに愛し合っているからと説得し、スティーヴンと結婚する。
スティーヴンはブラックホールと時間の始まりに関する研究論文で博士の学位を得る。そして、順調に結婚生活と研究を重ね、宣告された余命2年を超えて、ジェーンとの間に2児を得る。
電動車椅子を家族から贈られ、スティーヴンは行動の自由を広げ、子供との接触も活発になる。そして、自分の学位論文の誤りを訂正した「ホーキング放射」として有名な理論を発表して、世界的な名声を得る。
一方ジェーンは自分の研究と育児の両方に追われ、ストレスが溜まっていく。見かねたジェーンの母親は、教会の聖歌隊に加わることを勧める。躊躇したジェーンだが、聖歌隊の指導者ジョナサンの人柄にひかれて聖歌隊に加わる。
ジョナサンは1年前に妻を亡くしていて、生来の人助けの気性と自身の寂しさを紛らわす気持ちから、長男のピアノ教師としてホーキング家に出入りするようになる。
スティーヴンは、ジェーンにはジョナサンの援助が必要で、自分は気にしないといって、ジョナサンを家庭に受け入れるようにジェーンを説得し、家族の一員として受け入れるようになる。
この辺の、3人の間の微妙な感情の動きが、見事に表現されている。
ジェーンは3人目の子供を身ごもり、その父親がジョナサンではないかとあらぬ疑いをかけられる。それを知ったジョナサンは、ホーキング家とは距離を置くとジェーンに告げ、お互いの好意を確認しながら去っていく。
ある日、スティーヴンはフランスのボルドーでのオペラに招待され、航空機嫌いのジェーンにはジョナサンから車で送ってもらえばいいと、自らジョナサンに依頼する。
ボルドーへの途中、キャンプで一泊した夜、ジェーンはジョナサンが一人でいるテントを訪ねる。
そのころスティーヴンはオペラ観劇中に肺炎の発作を起こし病院に運ばれる。急を聞いて駆け付けたジェーンに、医師は人工呼吸装置を外すか、気管切開をして延命するかの選択を迫り、ジェーンは医師の忠告を拒否して手術を希望する。
ジェーンを送ってきたジョナサンは、自分は身を引くと別れを告げ去っていく。
手術は成功するが、スティーヴンは声を失い、瞬きとスペリングボードで文字を拾うようになる。その指導と介護に言語療法士で看護師のエレインが雇用される。さらに、コンピュータと電子合成音声装置を使って、スティーヴンは話して書くことができるようになり、エレインの助けを借りて本の執筆を始める。
ジェーンはそんな二人の関係に入り込めない疎外感を覚える。そして、アメリカへの受賞講演にエレインを同道させたいとのスティーヴンの申し出を聞き、彼のもとを去り、ジョナサンと再婚する。
何年か後、スティーヴンとジェミーはエリザベス2世から大英帝国勲章叙勲のための招待を受ける。
久しぶりに再会した二人は、互いの敬意と愛情を確認する。そして、すっかり成長した3人の子供を指さして、スティーヴンは「僕たちの創造物を見てごらん」という。
エンディングロールで、時間をさかのぼるように映画のシーが映し出される。なんともしゃれた終わり方である。
難病を患うスティーヴンを演じたエディ・レッドメインはアカデミー賞主演男優賞を獲得している。
スティーヴン・ホーキングが亡くなったのが2018年なので、この映画は彼の存命中に公開されたことになる。
天才物理学者を愛をテーマにして描いたこの作品は、見ごたえのある佳作である。
なお、映画に出てくる彼の著書”A Brief History of Time”は世界的なベストセラーになり、日本でも百万部以上が売れたという。たまたまわたしは、ずっと以前書店で見かけて購入した。
拾い読みしかしてないが、最後の結語の部分が好きである。略して記す。
「もし、完全な理論が見つかったなら、それは万人が理解できるものであるべきで、なぜわれわれと宇宙が存在するかという議論からその答えを得ることができたら、われわれは神の心を知るだろう。」
STOP WAR!