「吹上奇譚 第四話 ミモザ」をようやく読み終えました。
第三話を読んでから2年以上が経っていました。
第三話を読み終えた時の感想に「第四話は、すんなり読めるような予感がします。」と締めくくっていたのですが、そんなことはありませんでした。
扉を開けて物語の世界に入っていって、また扉を閉めてこちらの世界に帰ってきて、またしばらくして扉を開けるような感じで読みました。
物語の世界へ入って行くと、一番辛かった時の感覚が甦ってきたり、一番幸せな時の感覚が甦ってきて、感覚として確かに残っていることを自覚することになるので、自分でここまでにしよう!とストップをかけて、戻ってくるのかもしれません。
感覚を共有すること…が、私自身の最近のテーマでもあるのですが、感覚を言葉にしようと思考が働き出すと違ってしまうので、ばななさんは感覚を言葉で伝えられるのが凄いです。
「プロフェッショナルというものには、何かしらの狂気が必要だから」という主人公の言葉があって、真実だと思いました。
プロフェッショナルになれないのは、そういう一線が越えられないからですね。
救われたのは主人公のお母さんの存在で、カメの世話の全てを「カ瞑想」と呼んでいて、ばななさん自身がカメを飼っていて、そのカメのことをよくnoteに書いているので、実体験なのかも。
期待していたへなちょこ墓守君くんは、潔ぎよく自分の道を選んでいて、そんなに世間は甘くない!って思いましたが、世間じゃなくて自分の世界を自分に誠実に生きていくだけなのだろうと思います。
墓守くんと墓守くんの家族を守ろうとしている主人公も自分に正直すぎて、なんだか切なかったです。
副題のミモザは、生まれてきた赤ちゃんのことで、光でした。
そんな光が、ひっそりとささやかに今世を全うしていけるように見守りたいという主人公の想いは、ばななさんの大切な人への追悼の想いでもありました。
私も不器用で報われない名もなきすばらしい花に寄り添っていける強さが欲しいです。