安井宗太郎の金蓉という絵について、美の巨人たちで放送していました。
この絵です。とても有名な絵です。
現在、国立近代美術館に保管されています。美術の教科書でもおなじみですね。
この絵は、もう一つのリアリズムだと言います。
要するに写真みたいにそっくりに描くリアリズムではないという意味です。
確かに、そうですね。
最近は、ホキ美術館が大きく取り上げられて、スーパーリアリズムのすごさを見せつけられましたが、
あれは、あれで素晴らしいリアリズムですが、安井宗太郎はそうはならず、自分独自のリアリズムを作り上げました。
私は、ホキ美術館の素晴らしさは、参ったと思わされました。しかし、あれは精巧なカメラがいずれあれを簡単に実現してしまうだろうと想像します。また、あの方向の絵画は、進行方向が一つなので、他の人が描いても技術を習得すれば、あそこに到達できるだろうと思います。しかし、この安井のリアリズムは、画家の眼を通して、安井でなければできないものだと思いますがどうでしょうか。
スーパーリアリズムは、誰もが実現できるものだが、安井のリアリズムは違うということを言いたいと思います。
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しかし、それでも、だから安井の方が良いとは、今は言えません。
なぜなら、私は安井のリアリズムにも疑問があるからです。
方法論は、賛成なのですが、なぜあそこまで個性を求めてしまうのかということです。
これは、私のリアリズムと違うからかもしれません。
もう少し、スーパーリアリズムに近づいても良いのではないかという意味です。
外れ過ぎているのではないかという見方です。
安井宗太郎といえば、ずば抜けたデッサン力で有名です。
仲間のみんなが嫉妬をするほどのデッサン力でした。
それが、消えてしまいます。
それは、フランスでセザンヌの影響を受けてからだと言います。
安井宗太郎は、セザンヌに出会わない方が良かったのではないかと私は思ってしまいます。
この金蓉の絵は、かなりの部分賛成です。とても良い作品だと思います。
しかし、私が疑問なのは、顔です。
顔がもう少し何とかならないかなあと思います。
肩が外れているとか、肩の高さが逆だとか、番組では言っていました。
確かにそうですが、私はそれは、わざとやったということで、魅力の一つとしてかたずけられます。
しかし、顔は、ちょっと好きではありません。これもわざとやっているのですが、どうして?と思います。
本当にこれを安井宗太郎は自分で納得していたのかなあと思ってしまいます。
構図、位置と大きさ、人物の入れ方は、私も賛成です。
ポーズも賛成です。
色味も賛成です。
離れて見た時には、いうことがありません。
私は、顔だけ気になります。
顔の左側の背景の処理。左側の眼、鼻の輪郭線、髪の毛のタッチの平面性、右側の肩と背景の関係の処理。
その辺に疑問があります。
青いドレスの色は素敵です。模様も筆で殴り書きのようですが、いい感じです。
ドレスのすそ辺り(左下部分)の模様も色も素敵です。洒落ています。
椅子のデッサンは、しっかりしたものを感じます。ドレスの端の扱いが輪郭を筆でなぜたようなタッチでも
その平面性に対比して、しっかりした空間を感じます。やや床面が違うかなとは思いますが。
手の輪郭も筆で殴り書きのような感じがします。それもそのようにする必要があるのかなと疑問です。
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勝手なことを言いました。
でも、私が感じることなのです。
みなさんも、凄い作品だと聞かされているから、凄いと思うのではなく、この部分は不満だということがあってよいと思います。
それは、まだあなたがその良さがわからないのですよと言われても、分からない物はわからないのです。
私は、この絵はいい絵だなと思う反面、安井宗太郎ならもっと違った表現があったのではないかと期待の気持ちで想像するのですが、いかがでしょうか。