金子光晴と中野重治はぼくの血と肉の一部のようなもの、
希求と拒絶を繰り返しながらアタマの中に居座っている。
希求と拒絶を繰り返しながらアタマの中に居座っている。
歴史的な扉が拓かれた8月2日の夜に思いだしてから
この二日間、ぼくの頭を離れない中野重治の詩がある。
この二日間、ぼくの頭を離れない中野重治の詩がある。
「雨の降る品川駅」 中野重治詩集
辛よ さようなら
金よ さようなら
君らは雨の降る品川駅から乗車する
金よ さようなら
君らは雨の降る品川駅から乗車する
李よ さようなら
も一人の李よ さようなら
君らは君らの父母(ちちはは)の国にかえる
も一人の李よ さようなら
君らは君らの父母(ちちはは)の国にかえる
君らの国の河はさむい冬に凍る
君らの叛逆する心はわかれの一瞬に凍る
君らの叛逆する心はわかれの一瞬に凍る
海は夕ぐれのなかに海鳴りの声をたかめる
鳩は雨にぬれて車庫の屋根からまいおりる
鳩は雨にぬれて車庫の屋根からまいおりる
君らは雨にぬれて君らを逐(お)う日本天皇をおもい出す
君らは雨にぬれて 髭 眼鏡 猫背の彼をおもい出す
君らは雨にぬれて 髭 眼鏡 猫背の彼をおもい出す
ふりしぶく雨のなかに緑のシグナルはあがる
ふりしぶく雨の中に君らの瞳はとがる
ふりしぶく雨の中に君らの瞳はとがる
雨は敷石にそそぎ暗い海面におちかかる
雨は君らの熱い頬にきえる
雨は君らの熱い頬にきえる
君らのくろい影は改札口をよぎる
君らの白いモスソは歩廊の闇にひるがえる
君らの白いモスソは歩廊の闇にひるがえる
シグナルは色をかえる
君らは乗りこむ
君らは乗りこむ
君らは出発する
君らは去る
君らは去る
さようなら 辛
さようなら 金
さようなら 李
さようなら 女の李
さようなら 金
さようなら 李
さようなら 女の李
行つてあのかたい 厚い なめらかな氷をたたきわれ
ながく堰(せ)かれていた水をしてほとばしらしめよ
日本プロレタリアートのうしろ盾まえ盾
さようなら
報復の歓喜に泣きわらう日まで
ながく堰(せ)かれていた水をしてほとばしらしめよ
日本プロレタリアートのうしろ盾まえ盾
さようなら
報復の歓喜に泣きわらう日まで
今日の暑さは今までと少し違った
かすかに微々たる秋の気配
夕方にベランダに出ても汗をかかない
渉る風はさわやかに頬をなぶる
これが暑さになれるということなんだね。
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