睡蓮の千夜一夜

馬はモンゴルの誇り、
馬は草原の風の生まれ変わり。
坂口安吾の言葉「生きよ・堕ちよ」を拝す。

ヤブ蚊

2009-07-24 07:18:07 | 身近にいる生き物

何年か前のお盆の日
木立にかこまれた菩提寺で先祖供養の法要が始まっていた。
ぶ~んという羽音もやかましく目の前にヤブ蚊がとんできた。

隣に座る叔母は、さかんに頭を左右に降ってヤブ蚊を追い払っている。
中気で寝込んだ電気屋のお爺さんみたいだ・・・ぐふふふ。
横目で見ながら、おかしくて、おかしくて声を殺して笑った。

ぶ~~ん・・・
私のとこに飛んできた。

目で追いかける。
さんざぶんぶん飛び回り、ピタリと私の左腕に止まった。
すごいでかい。

息を止め、叩こうと身構えたとき、間髪を入れず叔母が、

「お盆の真っ最中ですよ、殺生はいけません」
澄ました顔でささやいた。

宙に浮いた右手を膝におろし、叔母に負けないほど澄まして前を向いた。

きた、きた、痒っ。
流し目で腕を見た。
みるまにヤブ蚊の黒いシマシマの腹が赤くふくれてゆく。

かゆ、かゆっ、かゆいぃぃ。

さんざ吸って満たされたヤブ蚊は重そうによろよろと飛んでいった。
叔母は下を向きながら「くっくっく」とハンカチを顔にあてながら笑っていた。
どうやらそういう家系らしい。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿