水産北海道ブログ

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技能実習制度・特定技能制度のあり方で政府の対応決定 技能実習を解消し、育成就労を創設、特定技能は存続へ 本人の意向による転籍は分野ごとに1〜2年の範囲で設定

2024-02-18 22:13:36 | 系統通信
 岸田文雄首相は9日、首相官邸で外国人受入れ・共生に関する関係閣僚会議を開き、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の最終報告書に対する政府の対応を決めた。政府対応の総論は次の通り。
(1)現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、人手不足分野における人材確保及び人材育成を目的とする育成就労制度を創設する。
(2)企業単独型技能実習のうち、育成就労制度とは趣旨・目的を異にするものの引き続き実施する意義のあるものは、別の枠組みで受入れを検討する。
(3)特定技能制度については、適正化を図った上で存続する。
 岸田首相は「政府としては、共生社会の実現を目指し、我が国が外国人材から選ばれる国になるという観点に立って、本日決定した方針に基づき、技能実習制度及び特定技能制度の見直しに向けた作業を進める」として関係各大臣に今国会への法案提出に向けた作業の加速化を含め、外国人材の受入れ環境の整備に取り組むよう指示した。
 争点となっていた本人の意向による転籍については、3年間一つの受入れ機関での就労が効果的であり望ましいものの、以下を満たす場合に同一業務区分内に限り本人意向による転籍を認めるとした。
①同一の機関において就労した期間が一定の期間を超えている。当分の間、各分野の業務内容等を踏まえ、分野ごとに1年~2年の範囲内で設定。人材育成の観点を踏まえた上で1年とすることを目指しつつも、1年を超える期間を設定する場合、1年経過後は、昇給その他待遇の向上等を図るための仕組みを検討する。
②技能検定試験基礎級等・一定水準以上の日本語能力に係る試験に合格する。各分野で、日本語能力A1相当の水準から特定技能1号移行時に必要となる日本語能力の水準までの範囲内で設定する。
③転籍先が、適切であると認められる一定の要件を満たす。
また、転籍前の受入れ機関が支出した初期費用等について、転籍前の受入れ機関が正当な補塡を受けられるようにするための仕組みを検討する。転籍の仲介状況等に係る情報を把握。不法就労助長罪の法定刑を引き上げ適切な取締りを行う。当分の間、民間の職業紹介事業者の関与は認めない。
政府の調査によると、全国の「技能実習」在留者は令和5年6月末現在で35万8,159人。職種・作業別にみると、漁業関係は2職種10作業で2,720人、水産加工食品製造1万2,012人、水産練製品製造1,188人となっており、各水産分野で重要な位置を占める。

少し遅れましたが、2024年2月号を紹介します。

2024-02-18 21:09:48 | 月刊水産北海道
 

 1月〜2月は全道的な催しが札幌で多数回されされ、対面での交流が完全復活しました。昨年の本道漁業生産をはじめ、主要な魚種の生産動向が総括され、第6管理年度に向けた新たな資源管理の方針も決定される時期に当たります。
 魚食普及や消費拡大のイベント、栽培漁業の研究会や各種セミナー、大会など多くの場で今年の起点となる機会が設定されています。
 昨年は福島第一原発のALPS処理水の海洋放出に対する中国の日本産水産物全面禁輸などの対応に追われましたが、今後の戦略を落ち着いて考える大切な次期を迎えています。その一助となれば幸いです。
 

新刊紹介 『どうするALPS処理水?科学と社会の両面からの提言』 石井孝、濱田武士、小松理虔ほか(あけび書房)

2024-02-11 22:17:13 | お知らせ

 福島第一原発事故に伴うALPS処理水の海洋放出は、中国の日本産水産物全面禁輸といった反応を呼び、大きな社会問題となったが、廃炉までの30年余りどうすればいいのか、方向性がなかなか見えない。
 この2月に発行される本書は、各分野の研究者や専門家が知恵を出し合い、放射性物質の基礎知識から現在に至った経緯、漁業者、県民の反応、廃炉への道筋、政治の責任への分析を踏まえ、処理水問題の解決に向けた科学・社会両面からの提案を行う。
 漁業に関しては、北海学園大の濱田武士(はまだたけし)教授が「なぜ漁業者は処理水の海洋放出を認めないのか」を書き、地域活動家の小松理虔(こまつりけん)氏が「処理水に振り回されるいわきの漁業」を報告している。
 マスメディアの問題、漁業者と消費者の相互理解、廃炉全体の枠組みの見直し、陸上保管を迫るなど、8人の識者が提案する内容は従来の科学一辺倒、経済偏重のアプローチを超えた議論を呼び覚まし、社会的な合意に至る手引きとなることを期待したい。
 2月9日発売、A5判・172ページ、定価1,980円。