北のパラダイス

思いつくままにいろいろな事を発信していきたいと思います。

いま大事なことは...

2014年07月28日 | 科学技術
昨晩、NHK特集番組でSTAP細胞の偽造論文の検証をやってました。

これまでこの問題に関しては私も敢えて触れなかったんですが、昨晩の番組を見て思うところがあったのでコメントしたいと思います。

私も若いころ所属する学会に論文を何度か投稿したことがあり、その時には北海道大学や帯広畜産大学の先生方から厳しい指導を何度も受けました。

このような経験を踏まえて言うならば、STAP細胞の論文はそもそも論文をきちんと書けないような人が作成し、しかもそれを周りの指導教官が見抜けなかった、というより黙認していたようなフシがあります。

もっとドギツイことを言うと、理化学研究所の予算獲得のために組織ぐるみで論文を偽造したのではないか、と疑われてもしかたがないように感じました。

昔と違って、現在の科学技術の研究分野は、大学にしても、公的な研究所にしても、国などからの助成金や補助金、民間企業などからの寄付金を獲得するために、日夜厳しい競争を強いられています。

ですから、世界的な科学雑誌のネイチャーなどに論文が掲載されることは、予算や資金を獲得する競争の中で一歩も二歩も抜きん出ることになります。

それゆえに今回のようなことが起きてしまった、とはいちがいには言えないでしょうが、番組を見ていてその要素は多分にあったと思います。

私が一番気になったのは、STAP細胞をマウスの受精卵に移植しキメラマウスが誕生したことがSTAP細胞の存在を裏付ける決定的な根拠になったという点です。

これについては、これまでの検証結果から、提供したマウスの細胞と実際に使われたマウスの細胞が異なることが指摘され、しかも実際に使われた細胞はES細胞だったのではないかと考えられています。

これが本当ならば、単なるミスだったのか、あるいは故意だったのかに関わらず、STAP細胞の信ぴょう性は崩れてしまいます。

もし故意だったら...そんなことは絶対ないと思いますが...完全にアウトです。

いずれにしても、残された道は本当にSTAP細胞が存在することを証明することしかありません。

これだけ世界を騒がせたんですから、一研究者の問題だけでは済まされません。

いま大事なことは、これに関わった人達と理化学研究所が、最後まで責任を持って立証して行くことではないでしょうか。


ところで、STAP細胞の問題の影に隠れて、もっと深刻な問題を日本は抱えていることが見過ごされています。

言うまでもありませんが、福島第一原発事故の問題です。

今も日々、放射能に汚染された水が大量に垂れ流されているのに、解決の糸口さえ見えていません。

昨晩のNHKでは、日本の科学技術の威信にかけても論文の偽造をなくさなければならないと締めくくってましたが、それを言うなら、福島第一原発事故の解決に向けて日本の科学技術の総力を結集して取り組まなければならないだろう、と思います。

放射能漏れが及ぼす影響は日本に限られたことではないのは言うまでもなく、事故後に、海洋中や大気中にどれだけの量の放射能が放出されたか見当もつきません。

いま大事なことは、この問題を速やかに解決へと向かわせることです。




沖内ダムと中幌ダム

2014年05月28日 | 科学技術
昨日また小平町の「沖内ダム」に行って来ました。




先週行った時より温かく気持ちが良かったですね。

ダム下流のほとんどの水田は田植えが終わっていました。








野生のカモなんでしょうか、田んぼの中で餌取りしている最中をパチリ。





帰りに隣の留萌市が管理している「中幌ダム」に寄って来ました。

ここは留萌管内の防災ダム第一号として昭和50年代に完成した、洪水調節専用のダムです。





沖内ダムと違って溜まった水を水田用水に使用していないため、台風や大雨などで大量に流入した河川水を堰き止める役割を担っています。











私が小平町の防災ダム建設事務所に赴任していた頃は、堤体の盛り立てが最終段階にさしかかっていましたが、中幌ダムには現場を見て勉強するためによく訪れてました。

昨日は約30年ぶりに訪れましたが、当時とほとんど変わらないたたずまいに、何かホッとしたような気分になりました。






沖内タ゜ム

2014年05月22日 | 科学技術
留萌管内小平町の沖内ダムを調査して来ました。







沖内ダムは、洪水を防止するための防災ダムと、水田に用水を供給するための灌漑ダムの2つの機能を併せ持つ農業用アースダムです。

今から30年以上前になりますが、まだ建設中のこのダムに昭和55年4月から昭和58年3月までの丸3年間、現場技術者として従事しました。

それこそ、測量・調査・試験・分析・計画・設計・積算・施工管理など、3年間でありとあらゆることを勉強させて戴き、私の土木技術者の基礎はここで叩き込まれたと言っても過言ではありません。

このダムが完成・竣工してから約25年が経ちますが、施設のあちこちが老朽化し補修や更新が必要になって来たため、その補修・更新事業を計画するために調査に入りました。








今日はそれこそ30有余年ぶりに堤体の上を歩き、昔一緒に仕事をした土地改良区の事務局長と管理棟の中にも入ってみました。

自分が若い頃に建設に携わったダムを、30年以上の年月を経て再び調査・計画を行う機会を得ることができて、今日はとても感慨深いものがありました。

これから約半年間、沖内ダムとまた関わることになりますが、土木技術者として私の集大成の一つになると思います。

とにかく光栄です。







2010年ノーベル化学賞受賞 鈴木章北海道大学名誉教授の記念講演

2013年10月05日 | 科学技術
昨日、第40回技術士全国大会札幌大会の記念式典があり、その記念講演で2010年度ノーベル化学賞を受賞された鈴木章北海道大学名誉教授の貴重なお話を拝聴することができました。

鈴木先生の生い立ちから、北海道大学の学生及び教官時代、アメリカ留学時代、北海道大学の教授時代、ノーベル化学賞受賞のいきさつ、受賞した時のエピソードなど、1時間という短い時間でしたがとても感動的なご講演でした。

特に私が印象深く感じたのは、学生時代に当時は日本で初めてという英語の化学の教科書を渡され、必死になって和訳し徹夜で読み込んだというお話でした。

そして、その教科書の著者であるアメリカのノーベル化学賞受賞者のブラウン先生のもとに、北海道大学の助教授時代に留学したことが、数十年後にノーベル化学賞受賞へと繋がったそうです。

2001年と2002年にブラウン先生がスウェーデンのノーベル財団に、鈴木先生をノーベル化学賞候補として選考委員会に推薦状を送ったことがきっかけでそうで、その後、ブラウン先生がお亡くなりになって推薦状の送付は途絶えてしまったそうですが、最後の推薦状送付から8年後の2010年10月に突然ノーベル財団から電話があったそうです。

ノーベル化学賞を授与したいのでぜひ受けて戴きたい、と。

予想だにしない、まさに青天のヘキレキだったそうです。

50年以上前の学生時代に出会った化学の教科書を必死に和訳して徹夜で読み込んだことが、半世紀以上を経てノーベル化学賞受賞という栄誉に繋がったという、とても感動的なお話でした。

そして、最後に、沢山の人達に協力して戴き支えられてここまで来れたことを感謝申し上げたい、というお言葉で記念講演を締めくくられました。



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北の大地から明日の日本を拓く

2013年09月06日 | 科学技術
約一ヶ月後の10月3日から6日まで、札幌市において第40回技術士全国大会が開催されます。
大会テーマは「北の大地から明日の日本を拓く」です。

大会のメインイベントは、10月4日(金)にロイトン札幌(札幌市中央区北1条西11丁目)で開催される大会式典、記念講演、交流パーティーですが、記念講演はなんと2010年ノーベル化学賞受賞の鈴木章氏(北海道大学名誉教授)の「ノーベル化学賞を受賞して」です。

鈴木先生のご講演は4日の16:00から17:00までロイトン札幌3階ロイトンホールで行われますが、一般市民の方々の聴講も受け付けておりますので(無料)、この機会にぜひ鈴木先生の貴重なお話を聞いてみて下さい。

聴講を希望される方は、公益社団法人日本技術士会北海道本部「第40回技術士全国大会実行委員会事務局」に電話かFAXで直接お申込み下さい。
お申込み先及びお問い合わせ先は、TEL:011-801-1617、FAX:011-801-1618です。

もし、直接のお申し込みがしづらいようでしたら、私宛にご連絡戴いても結構ですよ。

なお、私は当日、大会実行委員会のメンバーとして下働きしております(笑い)。



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太陽の活動に異変!?

2013年08月19日 | 科学技術
 NASA が「太陽の磁極の反転(磁場のポールシフト)」が始まったことを確認

【In Deepより転載(http://oka-jp.seesaa.net/index.rdf)】

 太陽の磁場の逆転、つまり太陽の磁場のポールシフトに関しては、一昨年以来、「いつ起きるのだろうか」というようなことを含めて、何度か記事にしていましたが、 NASA が公式に「近い」と発表しました。

 あと3ヶ月~4ヶ月くらいの間までには発生するだろうと見られているようですので、秋の終わり頃までには太陽の磁場が逆転するということになりそうです。

 この太陽の磁場の逆転事態は約11年周期(今はこの周期が崩れてきていますが)の太陽活動としては正常な動きなのですが、留意したいのは、国立天文台などの観測によって、「現在の太陽磁場には異常が起きている」すなわち「太陽磁場の4極化」という可能性が高いということです。

 太陽の磁場の変化が「もし」そのまま他の太陽系の惑星に同じような影響を与えるとしたら・・・。
 つまり、たとえばですが、「地球が4つの磁場を持つ惑星になったら」となると、これは非常に生活に大きな影響があります。


【感想】

昨年の夏も異常に暑かったですが、今年はそれ以上の暑さで、周知の通り、全国各地で観測史上最高という暑さを記録しています。

同時に、ゲリラ豪雨のような雷を伴った突発的な集中豪雨も多発しており、これについても、観測史上最多の雨量を全国各地で記録しています。

この原因については、地球温暖化現象やそれに伴う様々な気象の変化などが考えられますが、アメリカのNASAや日本の国立天文台が観測しているような、太陽活動の異変が原因していると考えている人達もいます。

だからと言って、地球に住んでいる人間にはどうすることも出来ない話で、以前のブログでも述べましたが、地震、雷、ゲリラ豪雨、洪水、土砂崩れなどの自然災害とは隣り合わせなんだということを常に念頭において、その被害を最小限に食い止める防災や減災を心がけることが肝要です。

私が住む北海道でも、一昨日から昨日にかけて大量の雨が降り、道南の厚沢部町と森町で観測史上最高の一時間降雨量を観測しました。

その結果、JR函館本線でまた土砂崩れによって列車が立ち往生し、乗客が土砂降りの雨の中を線路づたいに2キロほど歩かされたという事態になりました。

事故が起きた場所は以前にも同じような事があった所で、今回もそのような事態が起きるかもしれない事は十分に予測できたはずですが、対策を講じる事を怠った結果、また同じ轍を踏んでしまった訳です。

これは、JRだけの問題ではなく、国土交通省や周辺市町村が一体となって事故を未然に防ぐ防災や、起こった災害を最小限にする減災について、日頃から取り組んで行かなければなりません。

観測史上最高という降雨量は、これから台風シーズンを迎えるにあたってまだまだ続くような気がしてなりません。
原因が温暖化現象であれ、太陽活動の異変であれ、我々人間には物理的に食い止める事はできない訳ですから、これからはますます頻度を増して起きるんだという事を忘れずに生活しなければならないと思います。

昨日、鹿児島県の桜島で大噴火が起きました。
噴煙が5000メートル以上噴き上がったのは2000年7月以来だそうです。
2000年と言えば、8月に東京都の三宅島と北海道の有珠山で大噴火が起き甚大な被害となりました。

三宅島も有珠山も噴火後に訪れていろいろ見て回りましたが、特に三宅島はまだ有毒な火山ガスの放出が収まっていない危険な状態にあります。
有珠山も爆発時に付近の高速道路や一般道が破壊され、一般道は完全に打ち捨てられ、高速道路もしばらくは部分的に交通止めになりました。

火山の噴火エネルギーはすさまじく被害は甚大です。
当然、火山周辺に居住することはできるだけ避けるべきですが、三宅島の人達のように、また噴火することが分かっていても、全島避難解除後に半数以上の島民が帰島したといいます。
今年の9月以降に、また三宅島と有珠山が大爆発しないことを祈るのみです。


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次世代エネルギーシステム「マイクログリッド」

2013年08月14日 | 科学技術
 〖北見工大は、地域内で再生可能エネルギーや燃料電池など多様な分散型電源で電力を融通し合う次世代のエネルギーシステム「マイクログリッド」について、積雪寒冷地を想定した国内初の模擬装置を導入し、年内に実験に着手する。熱供給も組み合せたマイクログリッドの最良のモデルを地域ごとに提案する目的で、エネルギーの「地産地消」の可能性を探る。〗

 マイクログリッドは、既存の大規模発電施設のみに頼らず、小規模な発電、送電網を各地に構築し、地域特性に合わせてコンピューター管理し多様なエネルギーを補い合わせるもの。天候に左右されやすい再生可能エネルギーの普及にもつながるとされる。

 実験を行うのは、北見工大電気電子工学科の小原伸哉教授。積雪寒冷地では暖房需要が大きいため、電力だけでなく熱も効率的に併用するマイクルグリッドを想定した。道環境・エネルギー室によると、道内でマイクログリッドを考える上で熱供給の併用は不可欠だが、これまで国内で積雪寒冷地を対象とした研究はほとんどなかったという。

 実験では、太陽光、風力、潮流といった再生可能エネルギーや、燃料電池などの電源を模擬的に作る装置のほか、その電源を電力や熱として消費する装置などを実験室に整備。コンピュータと接続し、人口規模などが異なる都市のエネルギー需要や気候などをプログラムし、商業、工業、農業など地域の産業別特色に応じた最適な運用方法を調査する。例えば、人口約12万人の北見市を対象とした場合、数千分の1程度の規模に換算して実験を行う。

 実験では、厳寒地域の昼夜の寒暖差で発生する高圧ガスによる「ガスハイドレード発電」も電源の1つとして取り入れ、寒冷地の特性を生かしたシステムを構築する。

 北見工大は今後、2年程度をかけて実験を重ね、道内各地での最適なモデルを確立させたいという。小原教授は「国策で原発を前提とした大規模な電力網が維持されてきた。次世代のため、地域の特性を生かしつつ、再生エネルギーの導入割合を高められるマイクログリッドの研究は重要」としている。

【北海道新聞朝刊 2013/08/13】



【感想】

地域で得られる様々な再生可能エネルギーを組み合わせて利用する試みは、私が十数年前に訪れたデンマークで既に行われていて、実際にその現場を何箇所か見学して来ました。

風力やバイオマス、バイオガス、太陽光、太陽熱などを組み合わせたハイブリッドなエネルギーシステムは、基本的にクリーンで持続可能なエネルギー供給システムです。

再生可能エネルギーによって電力を100%自給することを目指していたデンマークのサムソ島を見学した時には、真面目にデンマークへ移住したくなりました。

すっかりデンマークのハイブリット型再生可能エネルギー供給システムに感化されてしまった私は、帰国後、自宅の駐車場のロードヒーティング化を考え、その熱源に太陽光と風力を組み合わせた小型の発電機の設置を思い立ちました。

当時は(2000年頃)、まだ日本でそのようなハイブリッド型の小型発電機など製造されていなかったので、アメリカからの輸入品の資料を取り寄せ検討してみました。

その結果、自宅に設置した場合、発電に必要な日射量と風速が足りないことが分かり断念せざるを得ませんでした。

再生可能エネルギーのうち、特に太陽光・太陽熱・風力エネルギーはお天気任せなので、バイオマスやバイオガスなど比較的安定したエネルギーと組み合わせる必要があります。

北見工大が研究に着手する「マイクログリッド」型のエネルギー供給システムは、まさに、再生可能エネルギーの弱点とも言える不安定な電力供給を補うシステムとして、非常に価値ある研究だと思います。

確かに太陽光・太陽熱・風力エネルギーなどはお天気任せで不安定ですが、賦存量はまさに無限大・無尽蔵と言っても過言ではありません。

一方、石油・石炭・天然ガスは言うまでもなく、原発のエネルギー源であるウランだって限りがあります。

未来社会では、家庭も企業も公共施設も、全て自前で再生可能エネルギーを得るようになると思います。
そうなると、原子力発電所も火力発電所も要らなくなり、使用済み核燃料の処理・保管に悩む必要も、火力発電所から排出される石炭灰の処理に苦労する必要もなくなります。

既に、ドイツとデンマークは原発廃棄を決定し、ハイブリッド型の再生可能エネルギー供給システムに移行し始めています。

そう遠くない将来、日本の発電システムもドイツ・デンマーク型に移行して行く(行かざるを得ない)と思いますので、北見工大の小原教授が進める「マイクログリッド」の研究は、日本における先駆けになることでしょう。

私も「マイクログリッド」を応援して行きたいと思います。

社説:原発新基準施行 安全神話決別の節目に

2013年07月08日 | 科学技術
【毎日新聞 2013年07月08日 02時34分】

 福島第1原発の過酷事故から2年4カ月。きょう、原発の新規制基準が施行され、再稼働をめざす電力各社がこぞって審査を申請する。

 新基準の施行は「事故前」と「事故後」を分ける、大きな節目である。事故前の安全神話を覆す最初の一歩としなくてはならない。

 にもかかわらず、徹底した切り替えとできるかどうか、心もとない点がある。第一に、早期の再稼働に向けた「見切り発車」の姿勢が、電力会社に見えることだ。

 たとえば、多くの原発が事故時の活動拠点となる「緊急時対策所」の整備を「仮設」で乗り切ろうとしている。放射性物質を含む排気に備えた「フィルター付きベント」も設置されていない。

 もし、形さえ整えばいいと考えているとしたら、事故前と何も変わらない。安全確保を国任せにする電力会社の姿勢は、海外の規制当局関係者からも批判されてきた。国の規制は「最低限」の基準である。それを超えて、電力会社自らが安全性を高めようとしなければ、原発のリスクは減らせない。

 そうした「安全文化」は規制基準では判定できないが、原発の安全確保と密接にかかわる。先週、大飯原発の運転継続が認められた関西電力は、対策を小出しにし、「基準を満たす最低線を探ろうとした」と原子力規制委員会から批判された。これでは、国民の信頼は得られない。

 過酷事故が起きた場合の対応にも懸念が残る。国際的には防災対策まで含めた「5層の防護」が常識だが、事故前の日本はそこまで考えていなかった。これを改めるのは当然だが、まだ徹底していない。

 規制委は新たな災害対策指針を定め、防災の重点地域を30キロ圏へ広げたが、大飯原発のある福井県もまだ防災計画を改定中だ。計画が策定済みの場合も、放射性物質の放出が起きた時にどう避難するか。甲状腺を守る安定ヨウ素剤を飲むタイミングをどのように住民に知らせるか。現実的な道筋はよく見えない。

 政府は再稼働に前のめりになっているが、新規制基準にはリスクの高い原発をふるいにかける重要な役割があることも忘れてはならない。運転40年で廃炉とする原則や、新しい知見を既設炉に反映させるバックフィットをきちんと守り、型が古く、老朽化した原発は積極的に廃炉にしていく必要がある。敷地内に活断層の存在が疑われるなど地震や津波のリスクが大きい原発も同様だ。

 事故から2年余を経て、「地震国」日本の原発のリスクはどれだけ下げられたのか。それを、規制委も電力会社も、目に見える形で示してもらいたい。

【感想】

私は技術屋なので、電力会社の手抜きとも言えるええ加減な対応には我慢がなりません。

本来であれば原発再稼働などもってのほかで、今までも何度も述べて来たように、「福島第一原発事故」の検証も総括もまだ全然なされていない状況で再稼働を申請し、それを審査するという電力会社と国の姿勢には開いた口が塞がりません。

何度も何度も同じ事を言い続けていますが、「使用済み核燃料」の保管・処理・再利用の問題に明確な道筋が立てられていないのが現状であり、それが解決しない限り「原発再稼働」などあり得ない、これが真実です!!

福島第一原発事故は当初さかんに想定外の事故と言われましたが、想定外の出来事を予想するのが技術屋の使命であると私は考えてます。

若い頃に農業用アースダムの建設現場で3年ほど修行しましたが、昭和56年夏の大雨で建設中のダムに洪水が流れ込み大災害になった事がありました。
現場にかけつけた私も一歩間違えたら命を落としていたような大洪水で、ダムは水没、工事用道路は決壊、機械も全損という大損害を被りました。

原因は、仮排水トンネル(工事期間中に川の水を下流まで導くトンネル)の呑口(入り口)が、洪水で上流から流されて来た流木で塞がれてしまい、行き場を失った川の水が建設中のダムに流れ込んでしまった事でした。

これは当時まさに予想もしなかった想定外の出来事でした。
降った雨の量も記録的で、他の地域でも大災害となり、石狩川の氾濫で岩見沢市の幌向などが水没したのもこの時です。
これを契機に河川やダムなどの設計基準が見直され、千歳川放水路という大プロジェクト事業が動き出しました。

自然は人間の予想や想定をはるかに超えたものである、そのことは歴史が証明しています。
先人は想定外のことに遭遇するたびに、現行の考え方やいろいろな基準を見直して来ました。

今回の「原発新基準」もまさにそのようなスタンスで進めようとしているんでしょうが、土木、建築、電気、機械などの他の技術分野と決定的に違うところは、人間や他の動植物の生存に関わる部分の最終的な安心・安全の確保が不十分であるところです。

原発建設から福島第一原発事故発生までの数十年間、たまたま壊滅的な事態に遭遇しなかったため、「使用済み核燃料」の恐ろしさを目の当たりにすることがなかっただけなんです。

私も32年前に記録的な大雨によるダム現場の水没という大災害に遭遇し、自然の恐ろしさというものをイヤというほど思い知らされました。
あの時の体験があったからこそ科学技術の大切さを実感することができ、それが今の自分の基礎になっています。

科学技術は「両刃の剣」です。
人類に幸福をもたらすか、厄災をもたらすかは、それを使いこなす人間の考え方次第です。

原発再稼働をストップし自然・再生エネルギーに転換していくことこそが、長い目でみれば真に人類に幸福をもたらすことだ、と切に思います。
人類の英知は、まさにそこに結集すべきです!!


第40回技術士全国大会

2013年06月11日 | 科学技術
今年の10月3日(木)から10月6日(日)まで、札幌で9年ぶりに技術士全国大会が開催されます。

今年は第40回目の記念大会で、テーマは「北の大地から明日の日本を拓く」です。

メイン会場のロイトン札幌(中央区北1条西11丁目)では、10月4日(金)に大会式典が行われますが、記念講演として、2010年ノーベル化学賞受賞の鈴木章北海道大学名誉教授からご講演を賜ることになっております。

一般市民の方々の参加も歓迎いたしますので、この機会にぜひ鈴木先生のお話を直に聞いて頂けましたら幸いです。

また、普段なかなか「技術士」というものを知って頂く機会がありませんので、これを機に我々「技術士」とはいったい何を考え、何をやっている人間・集団なのか、一般の方々にも認識して頂ければ幸いです。

申し込み方法など詳細については改めてお知らせします。よろしくお願いします。