北のパラダイス

思いつくままにいろいろな事を発信していきたいと思います。

お米の話

2015年02月22日 | 農業問題
私が農業に関わりを持ちはじめてから40年以上が経ちます。

平均的なサラリーマン家庭に生まれ育ち、都会で暮らす期間が長かったわりには、子供のころから実家では家庭菜園をしていたこともあって、わりと農業を身近に感じてました。

農薬や化学肥料を使わないで作った自家製のしかも採れたての新鮮な野菜を食べる機会が多かったせいか、今でも安心・安全・新鮮な食品にこだわり続けてます。

最近はこだわりの農産物を求める消費者が多くなり、生産者もそれに応えるために、農協や市場に出荷する分とは別に減農薬や減化学肥料で作った農産物や畜産物を、直売所やインターネットなどで販売するケースが増え続けてます。

5年ほど前から、こだわりのお米を作っている生産者と組んで安心・安全・新鮮で美味しいお米の直販に取り組んでますが、固定客いわゆるお得意様も徐々に増えて来ました。

お客様のお米に対するニーズは、まず「美味しいこと」です。

特にお米はほぼ毎日食べる主食ですから、美味しいことは絶対条件ですね。

幸い、どのお客様からも「美味しい!」という評価を戴いており、中には「このお米を食べ続けたらもうほかのお米は食べられない」と言って下さり毎月必ず注文して下さるお客様もいます。

あと「価格」と「品質」も重要です。

価格はスーパーなどの小売価格より若干安く設定しているのと、「品質」は減農薬・減化学肥料・今摺米なので付加価値も相当高いと自負してます。

それに加えて、10kg以上ご注文の場合は自宅まで無料で配達しているので、コストパフォーマンスもかなり高いと思います。

ところで話は変わりますが、生産者米価が今までにないほど下落しており、全国各地の稲作農家から悲鳴が上がってます。

生産者米価とはお米を買い上げている農協や市場が稲作農家に支払うお米の値段のことですが、ほとんどの生産者は農協や市場に出荷しているため、生産者米価が下がると当然収入も下がることになります。

今までも生産者米価が下がったことは幾度もありましたが、2014年度は、コシヒカリ60kg(1俵)の価格が10000円を割り込むなど過去最低の米価となりました。

稲作農家が他産業並みの労賃を得て米作りをするには、農水省の調査によると平均で玄米60キロ16000円が必要となっています。

ですから、現在の生産者米価では稲作農家はまったくやっていけないということになります。

実際、一緒にやっている生産者も「本当にまいった。先が見えない。」と言ってました。

原因は「米余り」と「米離れ」です。

豊作が続いているお蔭で余剰米が増え、在庫を減らすために安い価格で余剰米を放出せざるを得ないことが大きな要因で、さらにお米の消費量が減少していることがそれに拍車をかけてます。

このままいくと米作りをやめる農家が増えることは目に見えてます。(もっとも政府はそれを目論んでるんでしょうが)

本州に多い第二種兼業農家(たとえばサラリーマンをしながらお米を作っている農家)であれば、まだ他にも手立てはありますが、北海道や東北のようにお米だけしか作っていない米作専業農家にとっては、まさに死活問題です。

我々の生き残る道は、農協や市場に頼らない適正な価格での販売ルートの確立です。

今の消費者への直販量をあと数倍に増やさなければやっていけなくなるのが実情ですが、幸い、我々には少ないながらも先立って直販をやってきた実績とノウハウがあるので、この正念場をなんとか乗り切って行く所存です。

緩衝帯

2014年01月10日 | 農業問題
今日は今年一番の寒さだそうで、一日中気温が零度以下のいわゆる真冬日です。

道路もツルツルの氷状態で、クルマもノロノロ運転ですね。

こういう時はできるだけクルマでの移動は避け、地下鉄やJRを利用したほうが無難です。

私も先ほど、地下鉄で仕事の打合せに行って来ました。

さて、本日のテーマ「緩衝帯」ですが、耳慣れない言葉だと思います。

分かり易く言えば「クッションとなるゾーン」のことで、もう15年以上も前になりますが、北海道開発局のサロベツ地域再編整備計画策定業務を請け負い、道北の豊富町において2年間にわたり調査・計画を行なった時に、報告書の中で使った言葉です。

当時、「緩衝帯」という言葉は、学術用語にも、技術用語にも明確に謳われていなかったので、私が勝手に作って用いた造語でした。

具体的に説明しますと、牧草地と湿原との間に幅を数十メートルとって、牧草地でもない、湿原でもない、その中間とも言うべき「緩衝帯」を設けることを提案しました。

サロベツ地域はもともと湿地帯の多い地域ですが、戦後の開拓時代に湿原を牧草地に転換する土地改良事業によって広大な牧草地を造成しました。

その際に、排水改良や土層改良によって牧草生産に適した土地を造成したことにより、湿原が急速に乾燥してどんどん湿地帯が減って行きました。

サロベツ湿原は国定公園に指定されていますから、周辺地帯の乾燥化による湿原の減少は由々しき問題であり、サロベツ湿原の保存とサロベツ地域の酪農振興を両立させることが、開発局や豊富町の課題でした。

当時、豊富町でも離農などによる農家減少が進み、耕作放棄地という離農跡地の処理に悩まされていました。

離農跡地は放っておくと荒れ放題になってしまうので、誰かが買い取って牧草地として使い続けることが望ましいのですが、なかなか買い取り手もいない状態でした。

そこで、私が提案したのは離農跡地を湿地帯に戻してしまおうという考え方で、最初は賛否両論ありましたが、牧草地と湿原を共存させるという考え方で話が進められました。

これはミチゲーションという考え方で、アメリカやドイツなどで実際に湿原を復元した事例がありました。
ただこれらは環境保護の観点から実施された例で、牧草地と湿原との共存というテーマではありませんでした。

サロベツ地域で問題となったのは、既存の牧草地のすぐ隣の離農跡地を新たに湿地帯とした場合に、既存の牧草地にあまり良くない影響を及ぼす恐れがあることで、これが解決しない限りは進められないということで話は途中でストップしてしまいました。

では、どのように解決したのか?

なんせ前例のない話だったのでなかなか良い考えが浮かびませんでしたが、ある日ふとヒラメイタのが、既存の牧草地と新たに造成する湿地帯との間に設ける「クッションとなるゾーン」でした。

日本では勿論のこと、世界的に見ても公共事業で取り組んだ例はないようだったので、関係者に受け入れられるかどうか分かりませんでしたが、開発局との打合せ時に「クッションとなるゾーン」を「緩衝帯」という名前で表現して考え方を説明したところ、面白い!!と言ってくれた人達が居て、そのまま報告書に載せることが認められました。

報告書を提出したのが1998年3月ですから、もうかれこれ16年前の話になります。

その後、この「緩衝帯」は試験施工が行われ、たびたび学会誌の論文などにも掲載され、現在は、開発局と豊富町と地元の酪農家との間で具体的な造成作業の話し合いに進んでいるようです。

この間に発案者の私の名前が出ることはなく、いったい誰が「緩衝帯」を提案したのか今では誰も知りません(笑い)。

もっとも、それが私の役目ですから、ひたすら社会の黒子に徹しています。

さて、この「緩衝帯」ですが、実はいろいろなケースに当てはまります。

私が住んでいる北広島市も、私に言わせれば「緩衝帯」です。

何故か?

それはまたこの次に書きますね。






2013稲刈り

2013年09月22日 | 農業問題
今年もタカシマファーム(北海道北広島市・長沼町)の稲刈りが真っ盛りです。
長沼の水田はほぼ終了し、昨日から北広島の水田で始まりました。



稲刈りはタカシマファーム6代目の良平君の独壇場です。



コンバイン(稲刈り機)を縦横無尽に駆使し、約20haの水田をたった一人でやってのけます。



長沼で収穫したゆめぴりかの新米を先日お裾わけして戴きましたが、ゆめぴりか本来のネバリとコシに、新米特有の香りと甘みが相俟って、たいへん美味しいお米に仕上がってます。



明日か明後日にはいよいよ「合鴨米タカシマスペシャル」の収穫が始まります。
地元だけでなく東京や千葉のお客様も首を長くして待っている「合鴨米」。
さて、どんなお米に仕上がってするか楽しみです。


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農村空間研究所

2013年09月09日 | 農業問題
札幌駅北口から西へ200mほどいったビルの6階に「農村空間研究所」という事務所があります。
所長は北海道大学名誉教授のU先生で、32歳の時にタカシマファームの水田で土壌・土質調査のご指導を受けたのがお付き合いの始まりですから、もうかれこれ26年になります。

そのU先生が「宮の森アイス」を30個もご注文して下さり、先ほどお届けに行って来ました。

先生はお酒が飲めないかわりに、大の甘党でアイスクリームには目が無いことは昔から存じ上げていたので、先日ご挨拶がてらに「宮の森アイス」を持参したところすっかり気に入って下さり、その場でご注文を戴きました。

さて、農村空間を研究するというのはあまり馴染みがないかもしれませんが、北海道で言えば、美瑛町とか富良野町などの田園風景は、農村空間が貴重な観光資源になっている代表例です。

毎年、北海道には美しい田園風景を見るために観光客がわざわざ美瑛町や富良野町などを訪れ、いわゆるアグリツーリズムと言われる観光形態が定着しつつあります。

農村空間学あるいは田園景観学と言う領域は、そういった貴重な農村空間や美しい田園景観に対してある一定の評価を与え、それをさらに有効的に保全して観光資源としての価値を高めていく、といった役割を担っています。

その北海道における第一人者がU先生という訳です。

私も若い頃はU先生達のグループに付いて回り、貴重な農村空間や美しい田園景観を探し求めて北海道中の農村地帯を駆け回ったものです。

水田地帯の景観も素晴らしいですが、北海道と言えば、やはり畑作地帯の景観のほうに軍配が上がります。

畑作地帯では、夏から秋にかけて、色とりどりの小麦畑、ジャガイモ畑、ビート畑、トウキビ畑、牧草畑などが、遠くから眺めるとまるでパッチワークのような景色を醸し出します。

農業者の人達は、とりたてて意識してそのような景観を創り出しているわけではありませんが、輪作体系と言って同じ畑で同じ作物を2年続けて栽培しないことが、同じ場所でも毎年違った景観を創り出していることに繋がり、それがまた魅力の1つとなっています。

しかし、このような感動的な景観が創り出せるのもそこで健全な農業が営めるからで、仮にTPPによって小麦やビート、ジャガイモなどを作ることが出来なくなり、農業者が離農せざるを得ないような事態になってしまえば、農村空間や田園景観の保全も意味を成さなくなってしまいます。

ですから、農地は単なる作物を生産する場所ということではなくて、美しい田園風景を醸し出し人々に安らぎと潤いを与える場所であることを、農村空間学を通して広く世間の皆様に伝えて行かなければなりません。

そのためにも、北海道農業を維持しさらに発展させて行く必要があります。
でもTPP交渉は、残念ながら、貴重な農村空間や美しい田園景観の維持には貢献できないと思います。

U先生はなんと80歳を超えたそうです。
しかし、エネルギッシュな雰囲気は今も変わらず、そのお元気さには圧倒されます。

何とかU先生の何十年にも渡る研究実績・成果を、微力ながら後世に伝えて行ければ幸いです。



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食料自給率

2013年08月11日 | 農業問題
農林水産省から平成24年度の食料自給率に関して発表がありました。
概要は以下の通りです。


1.食料自給率

○ カロリーベース 39%(前年度と同率)

○ 生産額ベース 68%(前年度※より1ポイント上昇)


2.主な品目の食料自給率に対する影響

(1)カロリーベース食料自給率の主な変動要因

○ 米については、天候に恵まれ生産量が増加した一方、価格の上昇等の影響により、主食用米の需要量が減少

○ 小麦については、北海道を中心に天候に恵まれ、単収が増加 したことにより、国内生産量が増加

○ 大豆については、全国的に天候に恵まれ、単収が増加したことにより、国内生産量が増加


(2)生産額ベース食料自給率の主な変動要因

○ 米については、新米への切り替わり時期の前年産米在庫水 準が低かった中で、高値による集荷が行われたこと等を反映 し、価格が上昇したことから、国内生産額が増加

○ 牛肉については、東日本大震災等の影響により需要が低下し 価格が下落した昨年に比べ、需要と価格が回復したことから、 国内生産額が増加


同時に、平成23年度の都道府県別食料自給率も発表になりました。

1.カロリーベースの都道府県別食料自給率

○ 平成23年度においては、13の道県で上昇、18の県で低下、16の都府県で前年同。

2.生産額ベースの都道府県別食料自給率

○ 平成23年度においては、5の道県で上昇、35の府県で低下、7の都府県で前年同。



特筆すべきは都道府県別食料自給率(カロリーベース)で、東北6県のうち、秋田県を除く5県で7%~18%前年度より低下しており、特に東日本大震災と福島第一原発事故の被害が甚大だった福島県が18%、宮城県が12%の低下となりました。

また、自給率(カロリーベース)が20%を下回る都府県は、低い方から、東京都~1%、大阪府~2%、神奈川県~2%、埼玉県~11%、京都府~13%、愛知県~13%、奈良県~15%、兵庫県~16%、静岡県~18%と、大都市圏及び周辺に集中しています。

一方、自給率(カロリーベース)が100%を超える道県は、高い方から、北海道~191%、秋田県~178%、山形県~132%、青森県~112%、岩手県~104%、新潟県~102%と、北海道・東北・北陸地方に集中しています。

大都市圏及び周辺への食料補給を北海道・東北・北陸地方が担っているという構図は相変わらずですが、東日本大震災と福島第一原発事故の影響で東北地方の自給率が低下しているのは、大きな不安材料です。

特に、福島第一原発事故の影響は長期化すると考えられますが、放射能汚染とその風評被害というこれまでに経験した事の無い事態にどう対処して行くのか、総力を上げて取り組んで行かなければならない問題です。

水田は地球を救う(再掲載)

2013年08月06日 | 農業問題
 2月25日のブログに掲載した「水田は地球を救う」の原文を、3年ほど前にホームページに掲載したトピックスから再掲載します。
食糧不足に悩む国々に日本の稲作技術を伝えることは、地球を救うことにダイレクトに繋がります。


 先日、水田の持つ様々な機能を紹介するテレビ番組がある放送局から放映されていましたが、最近、お米や水田に関する話題が多くなってきたような気がします。

 もう20年以上前になりますが、「水田は地球を救う」という本が発刊されました。

 その本には、水田が単なる食料生産の場としてではなく、環境保全や災害防止などの面でも様々な効果を発揮していることが紹介されていました。そして、水田を維持し保全していくことによって人類や地球が救われることが、様々なデータに基づいて力説されていました。

 私はその本を読んだ時、お米を主食とする日本人の英知に感動し、水田を守り続けていくことが我々にとって非常に重要な事であることを認識しました。

 お米という食べ物の優れた栄養価は、我々が子供のころ戦後の間違った食料政策によって歪められていました。お米を食べると「太る」とか「頭が悪くなる」とか。

 しかし、お米には人間が必要とする栄養素がバランス良く含まれていて、それにタマゴや納豆、梅干しなどを加えるだけで素晴らしい食事になることは、いろいろなデータから立証されています。タマゴかけご飯や納豆かけご飯、梅干し入りオニギリなどは、食品分析技術のなかった時代に先人達が生み出した理想的な食事です。

 ところで、小麦や豆類、野菜類など畑で栽培される作物と違って、お米は毎年毎年同じ水田で半永久的に栽培することが可能です。畑作物は連作障害による減収や品質低下を回避するために毎年栽培する畑を変えなければなりませんが(これを輪作といいます)、お米の栽培にはその必要がありません。それは、水田に水を溜めては流し、溜めては流しすることにより、病原菌が死滅し有害な物質が土から除去されていくので、連作による減収や品質低下を防ぐことができるからのようです。

 また、2005年の農林業センサスによると日本の水田面積は約180万ヘクタールであり、そのうち実際にお米を作った水田が約140万ヘクタールでした。お米の栽培期間中に水田に貯留される水量は膨大な量であり、仮に水深を10cmとして計算しても、全国で14億トンの水量が水田に貯留されることになります。お米の栽培期間中は梅雨や台風の時期と重なりますから、まさに、水害を未然に防ぐ防災ダムの役割を水田は担っています。

 さらに、水田には「水質浄化機能」や「豊かな田園景観の創出効果」、「習わしなどの伝承機能」などの様々な機能や効果があります。

 さて、米という字の由来は八十八の手間がかかるということから来ています。水田という効率の良い農地で毎年毎年繰り返し手間を惜しまず作られるお米は、多収で栄養価に優れた作物であり、人口増加や自然災害、環境悪化などによる食料不足から我々を守ってくれる貴重な食料です。

 まさに、水田は地球を救う。我々日本人は瑞穂の国に生まれたことを誇りに思い、お米を通じ、地球を救う旗頭として行動していかなくてはいけないと思います。


【都市田園協働ファームホームページ・トピックスより再掲載】


アイガモ田

2013年07月17日 | 農業問題
タカシマファームのアイガモ田もピークを迎えました。



先月始めにタンボに放たれたアイガモ君達もすっかり大きくなりました。
毎日お仕事に励んだおかげで、稲も青々とスクスク育ってます。



稲は今月中に穂出し開花する予定ですが、それまでにはアイガモ君たちも役目を終えて陸に上がります。
それまでもうひと踏ん張り!!

北海道農業の実力と魅力

2013年06月04日 | 農業問題
-北海道農業の実力と魅力についてのPRです-

 
 北海道の農業は、恵まれた土地資源を活かし、専業農家を主体に、地域の気象や立地条件などに即した多様で生産性の高い土地利用型農業が営まれています。

 厳しい自然条件の下、近代的な農業技術の導入や生産基盤の整備によって気象条件に影響されることの少ない安定した農業経営への努力が続けられ、現在では稲作、畑作、酪農、肉用牛などを基幹とする北方型農業が確立しています。

 平成24年の耕地面積は約115万haと全国の25%を占め、戸当り経営耕地面積では22.3haと都府県平均の約10倍の広さを持っています。一方、農家戸数は約42千戸で全国の2.8%を占めるに過ぎませんが、主業農家は73.0%(全国22.9%)と大規模で専業的な農業経営が展開しています。

 作付面積の比率では、水稲が10%、小麦、てんさい、馬鈴薯等の普通畑が25%、牧草等の飼肥料作物が55%となっており、土地利用型作物が80%と大部分を占めています。また近年は、野菜や花卉等について気象条件を有利に活かし作付面積を拡大してきています。

 農業粗生産額は約1兆円で全国の約12%を占めており、耕種部門では畑作物、米、野菜の順に生産額が多く、畜産部門では生乳が半数以上を占め、生産量は、小麦や馬鈴薯など多くの畑作物で全国一を誇っています。

 さらに、北海道はその冷涼な気候によって病害虫の発生が他の都府県に比べると少ないことから、元々、化学合成農薬の投入量が低く抑えられています。

 また、酪農・畜産が盛んなため、家畜の排泄物と田畑の残滓物を混合した堆肥などを耕地へ投入する、いわゆる有機物施用などによる土づくりも積極的に行われています。

 このように北海道農業は広い農地を生かした低コスト生産が行われ、さらに、冷涼な気候と有畜農業による安心・安全な農畜産物の生産が行われ、我が国最大の食料供給地域として重要な役割を担っています。


-TPPが来ようが何が来ようが我々は頑張り続けます!!-
-いざとなったら北海道独立だ!!-

就農支援

2013年05月16日 | 農業問題
石狩市の後藤農園に20代前半のT君が農業を学ぶために通っています。
4月中旬からスタートしたので、ちょうど1カ月が経過しました。
最初の頃は慣れない作業に腕や腰を痛がってましたが、最近では重労働にも慣れ後藤さん夫婦にすっかりあてにされるほどになりました。

T君は工業大学で情報処理を学び卒業しましたが、子供の頃から自然や農業に関心があったそうで、コンピューター相手に仕事をするより、農産物を生産するほうが性に合っていると判断したようです。
将来は水田と畑を両立させるような農業をやりたいということで、まさに今それを実践している後藤農園で稲作と畑作のイロハを何年間かかけて学ぶことになりました。

ところで、新たに農業を始める場合には、市町村や農協が窓口になっている国の就農支援制度を活用するケースが多いです。
T君の場合も、就農支援の話がいろいろなところから舞い込み、昨日も、JA石狩の会議室で石狩市やJA石狩の担当者を交え、石狩市で就農支援制度を活用する場合の条件や手続きの仕方について打合せがありました。

私も後見人という立場で同席し、T君に解らない部分は本人に代わっていろいろ質問をさせてもらいました。
事前にある程度は解っていたつもりですが、あらためてそのハードルの高さには驚きました。
私が驚いたぐらいですから、当のT君には不可能に近い事と感じたようで、私もあらためて新規就農の難しさを思い知りました。
T君の農業をやりたいという気持ちは強いものの、現時点では国の就農支援を受けることは難しいと本人を含め出席者全員が判断し、とりあえず最低1年間は後藤農園で修業を積んだ上で、就農支援を受けるかどうかまた検討することに落ち着きました。

そんなことなら就農支援制度を利用しないで自前で農業をやればいいじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、経験も、資金も、技術も、土地も、機械もない若者が自前でできるほど農業は易しい仕事ではありません。

なにぶん自然が相手のお天気任せの仕事ですし、作物のこと、肥料のこと、農薬のこと、土地のこと、機械のこと、農業制度のこと、農協や役所との関わり合いのこと、販売先のこと、営農計画のこと、資金融資のこと、等々、農業だけに限らず必要となることは全て自分自身で勉強し、習得しなければならない過酷な職業です。

したがって、技術の習得や資金の融資、土地・建物・機械の斡旋など、ある程度は就農支援を受けたほうがスムースに農業を始めることができます。
あとは、できるだけ少ない借金でスタートし、儲かる農業を続けて行くことができれば、農業者として成功する可能性が高くなります。

T君もやっと頭の中でこれらの事を理解することができたようですが、なにぶん農業の見習い生としてスタート地点に立ったばかりなので、これからいろいろな事を学び経験して行く過程で、一歩一歩、夢の実現に近づいて行けるよう私も陰ながら応援を続けて行きたいと思ってます。

T君のように純粋に農業をやって行きたいと言う若者が居ることに、明るい未来の予兆を感じている今日この頃です。

北海道の野菜

2013年04月28日 | 農業問題
三年半ほど前のHPトピックスで「北海道農業の実力」という話題を掲載しました。
http://urcf.co.jp/topics/090903.html
その中で、下記に示した農産物の生産量が全国一であることを述べました。

品目・生産量・全国シェア
テン菜・430万t・100%
インゲン・2.2万t・95%
小豆・5.8万t・89%
ジャガイモ・224万t・78%
小麦・58.2万t・64%
大豆・5.4万t・24%
タマネギ・71.2万t・56%
カボチャ・11.0万t・47%
スィートコーン・11.6万t・45%
ニンジン・19.6万t・29%
(平成19年北海道農林水産統計年報・北海道野菜地図、平成20年北海道指定生乳生産者団体情報等より)

この中で注目されるのは、一般的に「野菜」と言われる農産物で全国一なのはタマネギ、カボチャ、スィートコーン、ニンジンですが、収穫・販売の期間が限られており、タマネギ以外は市場に出回る期間はせいぜい11月末までか、遅くても年内までです。

ホウレンソウ、キャベツ、ナス、ピーマン、ダイコン、ブロツコリーなど、食卓によく上がる他の野菜も北海道ではたくさん生産されていますが、同様に、収穫・販売期間は遅くても雪が降り始める頃の11月いっぱいまでというのが実情です。

北海道では、だいたい11月後半から4月前半までの約5ヶ月間は戸外で農産物を生産することはできないので、ジャガイモやタマネギ、ゴボウ、ナガイモ、豆類などある程度長期間貯蔵できる作物以外は、本州や海外から輸入しているのが現状です。

4月19日のブログにも書きましたが、北海道農業の泣き所はまさにここにあります。
TPP交渉で農産物の聖域なき関税撤廃という大きな問題が取り沙汰されていますが、冬期間の野菜供給問題はTPPとは別な次元で、北海道農業の古くて新しい大きな問題です。

いろいろな所で様々な方法によって、冬期間における北海道野菜の生産・販売の取り組みが行われていますが、決め手となる有効な手立ては未だ確立されていません。
TPPがあろうとなかろうと、北海道農業にとってこの問題は避けて通れません。

しかし、TPPを逆手に取れば意外なところに解決策が潜んでいるような気がします...。

農相と経団連が10年ぶり会談 農地集約など意見交換

2013年04月24日 | 農業問題
 林芳正農相と経団連の米倉弘昌会長ら経団連幹部は24日午前、都内のホテルで会談した。林芳正農相は耕作放棄地の解消や農地集約を進めるための「農地中間管理機構」(仮称)を各都道府県に整備する方針を説明。「耕作放棄地状態の発生防止と速やかな解消を図る」との考えを示した。

 経団連側の出席者からは「農地集積と経営大規模化に向けた税財政上の支援措置拡充や規制見直しなど政策の総動員をしてほしい。大規模で効率的な経営を目指す生産者にインセンティブが働く改革が必要だ」といった意見が強かった。若年層の就農促進を促す具体策を求める声もあった。

 経団連の米倉弘昌会長は会談後、「耕作放棄地はどんどん有効活用しなくてはならない。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加が決まり、農業改革は余計に喫緊の課題だ」などと記者団に語った。

 経団連側の呼びかけに林農相が応じた。経団連会長と農相の会談は2003年の奥田碩会長と亀井善之農相の会談以来10年ぶりという。

〔日経QUICKニュース(NQN)2013/4/24 10:49 〕


北海道以外の都府県の農業は昔から兼業農家が主体で、農業以外からの収益のほうが多い第二種兼業農家の数も相当数あると言われています。
所有農地面積も1ha以下というのがほとんどで、猫の額ほどの田んぼや畑で細々と農業を続けている兼業農家も沢山いるというのが実態です。
また、農業者の高齢化により農業の担い手が少なくなり、使われなくなった農地いわゆる耕作放棄地が全国各地で激増しています。

農林水産大臣と経団連幹部との意見交換で話し合われた「耕作放棄地の解消や農地集約を進めるための〔農地中間管理機構〕(仮称)を各都道府県に整備し、耕作放棄地状態の発生防止と速やかな解消を図る」というのは、上記のような実態があるからで、TPP交渉参加による関税撤廃で安価な農畜産物が大量に海外から流れ込んで来ることを想定した考え方です。

一見、理に適っているように思えますが、農業者からすると農業の本質や実態からズレていると感じると思うのではないでしょうか。特に北海道の農業者は...。

都府県いわゆる本州の耕作放棄地を集積して所有農地を拡大することにより経営の大規模化を図る、というのが経団連側の言い分ですが、仮に今の10倍、水田が10ha規模、畑が20ha、酪農畜産が30ha規模に拡大されたとしたら、ちょうど今の北海道の平均的な経営規模となります。

これで海外の農畜産物に対抗できるでしょうか?
否です。
北海道農業はTPPにより関税撤廃となれば壊滅的な状態になります。
大規模経営だからこそ壊滅するのです。スケールメリットはありません。

農地面積が数10ha規模になると専業農家にならざるを得ず、農業以外から収入を得ることは難しくなります。
仮に聖域が認められず、北海道の主力農産物であるコメやビートなどが海外産に置き換わってしまうと、専業でコメやビートを生産している農家はたちまち行き詰ってしまいます。

聖域が認められれば大丈夫だろうと思うかもしれませんが、農林水産大臣と経団連幹部との意見交換は、聖域が認められない場合の事を想定したものだと思います。
また、コメやビート以外の農産物を作れば何とかなるだろうと思うかもしれませんが、これも否です。
それ以外の物はさらに過酷な状況に追い込まれることが予想されます。

一方で、企業が農業に参入し大規模経営によって安い海外農産物に対抗するという考え方もありますが、過去、このような考え方でうまくいった話をあまり聞きません。
何故なら、農業はお天気任せ、自然任せの要素が多い産業ですから、工場で自動車や電化製品を生産するのとは訳が違います。

いくら企業が大規模経営で最新の設備を整えたとしても、天候不順による生産量の減少や品質の低下を免れることは困難です。
また、農業技術を一朝一夕でマスターすることも困難で、それこそ何十年というスパンで技術を習得し、蓄積しないと農業を続けることはできません。

ですから、農業に新規参入した企業が、何年も天候不順や経験不足、未熟な技術によって赤字が続き農業から撤退したという話は枚挙の暇がありません。

それじゃ、どうしたら良いのでしょう? 
もう、日本農業はダメなのでしょうか?
それも否です。
ちゃんと生き残る道はあるのです。
それは...企業秘密です。
嘘です(笑)。

このへんのところはまた別な機会にお話してみたいと思います。

道内農産物、雪氷倉庫で出荷調整 推進協設立へ 産地・流通基地に保管

2013年04月19日 | 農業問題
 収穫後、すぐに首都圏に運ばれる道内の農産物を、雪や氷を活用した倉庫で保管することで、産地側で出荷調整する構想が動きだす。道内の雪氷冷房に取り組む専門家と自治体、民間企業らが25日、食料流通備蓄推進協議会を設立。雪国特有の自然エネルギーを利用した倉庫を産地に建設することで、農産物の付加価値向上と新たな雇用創出を目指す。

 協議会の設立メンバーは美唄市、空知管内沼田町のほか、道銀の堰八義博頭取、釧路食料基地構想協議会の栗林定正会長、岩田地崎建設の岩田圭剛社長、北海道国際経済交流会の森田哲明会長ら50人ほどを予定している。

<北海道新聞4月19日朝刊掲載>

雪や氷を活用した倉庫(シェルター)で農産物を保管する技術は、これからの北海道農業にとってますます重要な技術になると思います。
以前から、スノーシェルター、アイスシェルター、永久凍土シェルターなどで、秋に収穫したコメや野菜を翌年の春以降まで冷温貯蔵して出荷する取り組みが、一部の農業者、企業、研究機関で行われて来ましたが、このほど設立される食料流通備蓄推進協議会のような大きな組織で取り組みが始まるのは、これまでになかった事ではないかと思います。

北海道は食料自給率190%を誇り自他共に認める日本の食料基地ですが、冬場に雪や寒さで農産物を戸外で生産できない事が泣き所になっています。
少なくても、12月始めから3月いっぱいまでは、何処の野菜売り場に行っても北海道産の野菜といえばジャガイモ、タマネギ、ゴボウ、ナガイモなど、ある程度貯蔵ができる物しか置いてありません。
たまに、雪の下で寝かしたダイコンやキャベツ、ビニールハウスで栽培したホウレン草などの葉物が、わずかに出回っている程度です。

家庭料理でよく使われるニンジン、ピーマン、ホウレン草、ブロッコリー、コマツナ、キャベツ、ダイコン、ハクサイなどは、千葉県、茨城県、埼玉県、神奈川県などの関東地方から多く入荷されているのが北海道の冬場の実態です。
これでは、食料自給率190%を誇る日本の食料基地としては片手落ちです。
ただ、個人農家や単一企業だけの取り組みで解決できるような問題ではありません。
何とか、雪や氷を活用した倉庫で夏や秋に収穫した野菜を長期間冷温貯蔵し、冬場も道内外に出荷できる体制を、これを機会に確立して欲しいと思います。

食料自給率のカラクリ

2013年04月18日 | 農業問題
以前にも弊社のホームページのトピックスで取り上げたこともある食料自給率について、そのカラクリの一端を述べてみたいと思います。
食料自給率にはカロリーベースと生産額ベースの二種類がありますが、一般的に示されているカロリーベースのほうで説明します。

農林水産省から公表されている平成21年度の確定値と平成22年度の概算値を見てみると、
まず、平成21年度の確定値では日本全体の値は40%で、この値が一般的に示されている日本の食料自給率となります。
また、平成22年度の日本全体の概算値は39%でした。
しかし、ここにカラクリがあります。

全国値の他に都道府県別の食料自給率も同時に公表されていて、この値が実にばらついています。
例えば、東京都は1%、大阪府は2%、神奈川県は3%と、大都市圏の食料自給率は非常に小さな値になっているのに対し、農林畜水産業を基幹とする地域は、北海道190%、秋田県174%、山形県134%、青森県121%、岩手県108%、佐賀県101%、新潟県100%と、食料自給率が100%を超えています。(いづれも平成21年度の確定値)

即ち、一般に公表されている食料自給率40%は見かけの数字であって、日本の本当の姿を表してるとはいえません。
大都市圏に見られる1%~3%の自給率という実態は、ほとんどの食料を国の内外からの輸入に頼っているということであり、その周辺の府県も含めると、日本の総人口の半分程度の人達が食料自給率20%以下の地域に住んでいることになります。

ですから、もしTPP交渉で農産物の関税が撤廃され、雪崩のように安い輸入農産物が国内に押し寄せて来たら、国内農業の壊滅と同時に食料自給の壊滅という事態が想定される訳です。
その結果、東京都や大阪府並びにその周辺府県の食料自給率はさらに低下し、ほとんどの食料が外国産に置き換わることも想定されます。

このような状況でも、外国産の食料で何とか賄えると考えている人が大勢いると思いますし、そんな事すら全く理解してない人達もたくさんいると思います。
何故なら、このような話をメディアやマスコミは取り上げないし、ましてやTPPを推進している政府がこんな話を公表する訳もありません。

これは非常に恐ろしいことです。
安心・安全・安定供給が担保されるかどうか疑わしい輸入農畜産物に、自国の食卓を任しきることが本当に正しいのでしょうか?
安ければどんな物を食べてもかまわないのでしょうか?
何かの事情で農畜産物の輸入がストップしたらどうするのでしょうか?
そういうことまで想定してTPP交渉に参加しようとしているのでしょうか?
参加交渉してみたらやっぱり最悪の結果になってしまったで許されるのでしょうか?

以前にも述べたように、このような議論を尽くすことをしないままに見切り発車してしまった、というのが実態です。
今後どうするかは、国民一人一人の判断と覚悟にかかっていると言っても過言ではありません。

赤毛種

2013年03月28日 | 農業問題
北海道でお米が本格的に作られるようになったのは、1873(明治6)年に、島松(現北広島市)に入植した中山久蔵(なかやまきゅうぞう)さんが米作りに挑戦したことがきっかけです。
当時の北海道では道南の渡島地方などで米作りが行われていたものの、北海道では稲作は向かないとして米作りは禁止されていました。

中山久蔵さんは道南の大野(現北斗市)から地米の「赤毛」と「白髭」を持ち帰り、当時は不可能とされていた道央地方で初めての米づくりに挑戦しましたが、苦難の連続だったことは容易に想像できます。
中山さんは数々の試行錯誤の末に「赤毛」から寒冷地向きの品種を選び出し、「石狩赤毛」と名付けたそうです。

その後、中山さんは毎年種もみを増やして各地の農家に配って行ったそうで、その成果が実を結び、明治40年代には全道の水田の約8割を「赤毛」が占めるようになり、寒冷地での稲作の基礎が出来上りました。

中山さんが初めて米作りに挑戦してから今年でちょうど140年になります。
現在、北海道米は収穫量も品質(食味)も全国のトップクラスとなりました。
特に、新品種の「ゆめぴりか」は全国で最も美味しいお米の1つとまで評価されるようになりました。
それもこれも、中山久蔵さんが140年前、不可能と言われた米作りへ果敢に挑戦したお陰です。

昨年(2012年)の春、北広島市の農家や商工会の有志が<北広島市「赤毛種」保存会>を立ち上げ、赤毛種の栽培に乗り出しました。
今年は、140周年を記念し様々なPR活動やイベントなども企画されているそうで、イメージキャラクターも決まったそうです。

弊社の取締役で北広島市のタカシマファームを経営する高嶋浩一さんも保存会のメンバーで、今年は自らの水田で「赤毛」を栽培することになりました。
高嶋さんは100年続くタカシマファームの五代目で、「中山久蔵」や「赤毛」に寄せる想いも並々ならぬものがあります。

今年の秋には、「タカシマオリジナルゆめぴりか」と「タカシマオリジナル赤毛」をセットにしたお米がお目見えするかも知れませんよ。

水田は地球を救う

2013年02月25日 | 農業問題


以前、ホームページのトピックスに「水田は地球を救う」という小文を掲載したことがあります(内容はhttp://urcf.co.jp/topics/100203.htmlをご覧下さい)。
水田は単にお米を生産するだけの食料生産の場としてではなく、環境保全や災害防止などの面でも様々な効果を発揮していることを紹介しましたが、今、再びそのことを思い出す時期に来ているのではないかと思います。

もし、TPP交渉で農産物の関税撤廃が聖域と言われる「お米」にまで及んだら、その影響は日本だけに留まらず、地球全体にまで及ぶかもしれません。
雨が多く温暖な気候の日本はお米作りには最適な国です。タイやベトナムなどの東南アジアも同様です。
アメリカやオーストラリアもお米を生産していますが、日本や東南アジアとは気候条件が異なり、決してお米の生産に適しているとは言い難いものがあります。

例えばアメリカは水田用水を確保するために地下水を利用していますが、既に地下水の汲み上げ過ぎで、地盤沈下などの悪影響が出ている所もあるそうです。
また、オーストラリアは平地のほとんどが砂漠でもともと雨の少ない国ですから、そのような所で沢山の用水を使う水田作を行うこと自体に疑問を感じます。

仮にTPP交渉の結果、日本でお米を作ることが価格的に難しくなって、その代替品としてアメリカやオーストラリアのお米を大量に輸入することになった時に、彼の国の人達の貴重な水を使って作ったお米を日本人が食べることになる訳です。
一方、使われなくなった日本の水田はどうなるでしょうか?
それは火を見るより明らかで、今全国で進行しつつある耕作放棄地の増加に拍車がかかり、荒れ放題の元水田が全国の農村地帯に溢れることになります。

このような事態は、日本にとっても、アメリカやオーストラリアにとっても、決してプラスになることではありません。
これはほんの氷山の一角で、単に経済効率だけで物を動かし売買しようとすると、いろいろな所に障害が生じ地球環境にも大きな影響を及ぼす事になります。

農業はもともと土地利用型農業の形態をとる事が自然で、そこの気候や地理的・地形的条件に適した農業を営なむことが最も理に適っているというのが土地利用型農業の考え方です。
したがって、日本の水田はまさしく土地利用型農業そのものと言えます。
アメリカやオーストラリアの水田のように、もともと稲作に適さない気候や地理的・地形的条件のもとでお米を作ると、どうしても無理が生じます。

確かに広大な農地で大型機械を駆使して農産物を生産すると、コストは下がりますから価格競争では間違いなく有利になります。
しかし、水源の枯渇や地盤沈下などの障害を引き起こし、やがてはお米を作ることができなくなるというリスクも抱えている訳ですから、長期的・総合的な視点でTPP交渉を進めて行かなければなりません。

今、このような議論を経ないままにTPP交渉が始まろうとしています。
自分たちが生きている間だけ何とかなれば良い、というふうにしか思えないのは私だけでしょうか?