以前、ホームページのトピックスに「水田は地球を救う」という小文を掲載したことがあります(内容はhttp://urcf.co.jp/topics/100203.htmlをご覧下さい)。
水田は単にお米を生産するだけの食料生産の場としてではなく、環境保全や災害防止などの面でも様々な効果を発揮していることを紹介しましたが、今、再びそのことを思い出す時期に来ているのではないかと思います。
もし、TPP交渉で農産物の関税撤廃が聖域と言われる「お米」にまで及んだら、その影響は日本だけに留まらず、地球全体にまで及ぶかもしれません。
雨が多く温暖な気候の日本はお米作りには最適な国です。タイやベトナムなどの東南アジアも同様です。
アメリカやオーストラリアもお米を生産していますが、日本や東南アジアとは気候条件が異なり、決してお米の生産に適しているとは言い難いものがあります。
例えばアメリカは水田用水を確保するために地下水を利用していますが、既に地下水の汲み上げ過ぎで、地盤沈下などの悪影響が出ている所もあるそうです。
また、オーストラリアは平地のほとんどが砂漠でもともと雨の少ない国ですから、そのような所で沢山の用水を使う水田作を行うこと自体に疑問を感じます。
仮にTPP交渉の結果、日本でお米を作ることが価格的に難しくなって、その代替品としてアメリカやオーストラリアのお米を大量に輸入することになった時に、彼の国の人達の貴重な水を使って作ったお米を日本人が食べることになる訳です。
一方、使われなくなった日本の水田はどうなるでしょうか?
それは火を見るより明らかで、今全国で進行しつつある耕作放棄地の増加に拍車がかかり、荒れ放題の元水田が全国の農村地帯に溢れることになります。
このような事態は、日本にとっても、アメリカやオーストラリアにとっても、決してプラスになることではありません。
これはほんの氷山の一角で、単に経済効率だけで物を動かし売買しようとすると、いろいろな所に障害が生じ地球環境にも大きな影響を及ぼす事になります。
農業はもともと土地利用型農業の形態をとる事が自然で、そこの気候や地理的・地形的条件に適した農業を営なむことが最も理に適っているというのが土地利用型農業の考え方です。
したがって、日本の水田はまさしく土地利用型農業そのものと言えます。
アメリカやオーストラリアの水田のように、もともと稲作に適さない気候や地理的・地形的条件のもとでお米を作ると、どうしても無理が生じます。
確かに広大な農地で大型機械を駆使して農産物を生産すると、コストは下がりますから価格競争では間違いなく有利になります。
しかし、水源の枯渇や地盤沈下などの障害を引き起こし、やがてはお米を作ることができなくなるというリスクも抱えている訳ですから、長期的・総合的な視点でTPP交渉を進めて行かなければなりません。
今、このような議論を経ないままにTPP交渉が始まろうとしています。
自分たちが生きている間だけ何とかなれば良い、というふうにしか思えないのは私だけでしょうか?