北欧スウェーデンの生き方、習慣、面白さなどをつたえられたらいいな
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「スウェーデンで一番読まれている本は?」という質問の答えは、
「IKEA のカタログ」です。
日本でも、IKEAの店舗ができて、知っている人には、ああ、あれね。と、
もうお分かりでしょうが、スウェーデンで一番大きな家具販売会社。
というより、生活用品販売会社という方が正確かも。
IKEAという発音が、イケヤに聞こえるので、日本人の耳には馴染みやすいのですが、
れっきとしたスウェーデン人の創立した会社です。
ちなみに英語圏では「アイケア」と呼ばれています。
創立者は、イングバール・カンプラート。
1926年生まれ。2018年に91歳で亡くなりました。
彼、一代で世界49カ国(2018年データ 今はもっとふえているよね、きっと)
で、出店。
第一号店が、1958年だそうですから、60年ほどの間にすごい成長です。
その成功の秘訣は、創立者の着眼のよさにあると言っても過言ではないでしょう。
何しろ、この人は、17歳の時に、通信販売という方法に目をつけて、
自分でそれをやっていたというから、すごいではありませんか。
(5歳でマッチを売り歩いていたというのもすごいけど)
今もそうですが、スウェーデンは人口の割に国土が広いので、
街に出て買い物をするというのは、一苦労なのです。
私の住んでいた街も、本屋がなく、ちょっとした物でも、
車で20分の隣町に行かなくてはなりませんでした。
イングバール・カンプラートは、その流通に目をつけたのです。
そして、簡単なカタログを送って、マッチなど日用品を扱う通信販売をはじめました。
これだと資金力がなくてもできるからでもあります。
何しろ最初の資金は、勉強で良い成績をとった時に父親がくれたお小遣い。
資金が潤沢にあるわけではない。
今から80年も前に、AMAZONや楽天の方法を確立していたわけですね。
その時に、思いのほか家具の需要が高いことに気がつきました。
というのは、それまで、家具というのは高級家具か、とてもシンプルな安い家具か、
自分で日曜大工で作る家具しかなかったのです。
また、家具を買おうと思うと、一つの店舗では、
展示される数が限られているため、
気に入ったものを探して、
何軒も店をまわらなくてはいけない
という状況もカタログ販売には有利でした。
そこで、カンプラートは、商品を家具に絞って扱うようになりました。
しかも、いろいろな客のニーズに合うように
種類も値段の幅も広くとりそろえて、
それまで、安い家具といえば、選ぶ余地がなかった現状を
打破しました。
さらに、客のニーズにあった家具をデザイン、開発もしました。
ここで、カンプラートのすごいところは、制作はしなかったことなのです。
自分でいろいろなことを抱えるとリスクも大きくなる。
と、考えた彼は、デザインの特許はとるのですが、制作は外注。
そのためにIKEAの家具は、Made in KoreaとかMade in Portugalとか、
それぞれの家具の種類に応じて、
一番安く良いものができるところで制作されています。
そして、販売は、一手に自社のチェーン店で行います。
IKEAで家具を買ったことがある方なら、ご存知のように
IKEAは、組み立てすらやりません。
組み立ては誰がやるかって?
消費者です。
我が家もメインベッドをIKEAで買ったら、
10ぐらいに梱包が分かれた荷物が、どさっときて、
カラーボックスさえまともに組み立てられない夫と
スウェーデン語のマニュアルと格闘しながら、
汗だくになって、作り上げました。
作り上げるまで、最低2回は離婚の危機がありました。
でも、そうしたスリムな方針のおかげで、消費者は、
2~3割は、安く家具を手に入れることができます。
また、IKEAは、若手の有能なデザイナーをたくさん抱えて
よりよい製品アイディアに資金を惜しみません。
さらに、初めから消費者が、持って帰って組み立てることを念頭に
デザインしていますから、梱包に一番適した設計をしています。
凸凹のないような運びやすいパッケージにしておけば、
倉庫や配送のコストも抑えられるというわけです。
スウェーデンに来たばかりの頃、雨の土曜日にIKEAに行くと、
娘のクラスメートや、隣のクラスの先生たちにたくさん会いました。
月曜日にその話を担任にすると
「天気の悪い週末は、行くところがないからみんなIKEAにでかけるのよ」
IKEAは、スウェーデン人のディスニーランドでもあります。
確かに何も買うものがなくても、見ているだけで楽しい場所です。
IKEAの社員は幹部でも出張にエコノミークラスの飛行機しか使わず、
ホテルもその地域で一番安いところを選ぶのだそうです。
その理由は、経営者がケチなのではなく
「消費者に対していかに安くて良いものを提供するか」
を使命と考えているからなのだとか。
確かにIKEA の店舗にもその企業姿勢がうかがわれるものがたくさんあります。
まず、入り口の脇に、小さな保育園ぐらいのスペースを確保して、
託児してくれます。
親は、チョロチョロ動き回る子供を気にしながら買い物しなくてもいいのです。
また、IKEAのレストランは、安くて美味しいと評判です。
我が家では、IKEAに行く日は、そこでランチを食べると決めています。
本業は家具を売るのだからレストランは客の便宜を図るサービスと
考えているのでしょう。
さらに、そのレストランの一角にも、小さなプレイエリアがあります。
食事に飽きた子供たちがしばし遊んでいられるようにです。
さらに、さらに、その子供エリアの片隅にアイスクリームの箱が置かれ
子供たちは、自由にアイスクリームをもらって食べても良いのです。
係の人が見ているわけではないので、もし、あなたが、
自分も子供だと思っているなら、一本どうぞ。
誰も、とがめません。
さて、先日買ってきた本棚の部品が足りなくなっていました。
確認しないで買ってきた私もバカだったなあと思いながら、
サービスコーナーに行くと、
なんの追求もなく、すぐに部品を出してくれました。
よく考えてみると、不良品を出さないように、
人件費をかけてチェックを厳重にするよりも、
不良品はあるものだと考えて、
交換を容易にする方が、コストがかからないのかもしれません。
イングバール・カンプラートの語録にこんな言葉があります。
「寝ている人は決して間違いをしない。
何か間違いをするということは行動力のある人の特権であり、
間違いは後で、修正し、改善できるものだ」
励まされません?
ロシアでIKEAがオープンしたときは、衝撃でした。
開店の12カ月も前から、IKEAの前には長蛇の列ができたそうです。
良い家具に飢えているのかなと思ったら、
職をもとめて・・・・なのだそうです。
そして、このオープンは、ドキュメンタリー映画にもなりました。
2014年には、ロシアで、映画館をIKEAのダブルベッドで埋め尽くし
寝ながら見られるというプロモーションを、観客を募集して実施。
こんな映画館、行ってみたい!
でも、いびきで周囲にご迷惑をかけるかもしれないので緊張するわ!!
さて、IKEAというのは
Ingvar Kamprad, Elmtaryd, Agunnaryd
の頭文字から命名されたとのこと。
彼の名前とElmtarydは、子供の頃過ごした農園の名前
Agunnarydは、生まれ故郷のスモーランドの町の名前。
原点はそこにあったのでしょうね。IKEA
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今回の画像は、ウィキペディアとHPからお借りしました。
IKEAで、撮影していたら、「内部撮影はだめよ」と注意されて・・・とほほ。
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