甲子園・・・
高校球児にとっての甲子園...
指揮官にとっての甲子園...
高校野球と球児を応援する人々にとっての甲子園...
甲子園という場所を巡ってチームの数だけ、それぞれのドラマがある。
『甲子園の鼓動』 甲子園を目指す選手と、人々の7つのドラマが凝縮された一冊でした。
第一章 日本の土 ~首里高校1958年の長い旅~
1972年5月15日 第二次世界大戦後、アメリカ軍に統治されていた沖縄が日本に復帰し沖縄県となった。
それ以前、沖縄は外国だった。
1958年、米軍統治下にあった沖縄の代表校から4人の選手が甲子園へ旅立った。
首里高校 主将 仲宗根 弘
那覇高校 エース 国吉 真一
コザ高校 主将 安里 嗣則
石川高校 主将 石川 善一
4人は、沖縄高野連設立の掛け橋となられた故・佐伯達夫氏 日本高校野球連盟福会長(当時) の手厚い計らいで招待され、海外...甲子園へと向かった。
(写真左下 佐伯氏から国吉氏に送られた招待状です。)
雲の上の存在、どこにあるのかさえ知らなかった甲子園。
当時の沖縄は、テレビの普及がなされていなかったことから、夏の決勝戦だけがラジオで流れ、ベースボールマガジンが輸入されていた時代。
プロ野球や東京六大学野球の情報が主で、海外...沖縄の高校球児にとって、今日のような甲子園へ想いとは掛け離れた場所だったことが分かる。
そんな沖縄の4人の球児が甲子園を訪れ、甲子園でプレーしたい想いを抱き
『次の夏、沖縄予選で勝ち抜けば甲子園にこられる。絶対に甲子園にきてやる』の想いを胸に夏の大会に挑んだ。
1958年夏、沖縄大会。
決勝を戦ったのは石川高校と首里高校。
第40回全国高校野球選手権記念大会へ優勝した首里高校が招待されることになる。
当時の沖縄高校野球が全国のレベルに遠く、首里高校は 初戦の敦賀高校(福井)戦で13三振を奪われ 0-3の3安打完封負けをする。
甲子園の大観衆から「また来いよ」と、惜しみない拍手と暖かい歓声が掛けられた。
首里高校の甲子園出場は、沖縄と本土の掛け橋となり、今日活躍する沖縄球児が甲子園を目指す原点となったのだと思う。
また、海外...沖縄にとって、この首里高校 甲子園出場でもうひとつのドラマがあったことを知りました。
沖縄の人々が本土へ渡るにはパスポートがいる当時のアメリカ領沖縄。
首里高校球児は、本土の祖国への思いを胸に甲子園の土を拾い持ち帰ろうとしていた。
首里球児が甲子園から沖縄へ帰った際、那覇港へ上陸する直前に今では考えられない心の痛む出来事が起きた。
彼らが集めた甲子園の土は「植物検疫法」に引っかかるという理由で 検疫官の手で海中に捨てられてしまったのです。
この時の首里高校ナインの心情を思うと胸いっぱいになってしまいました。
ただ、この土を海に捨てなければいけなかった検疫官の気持ちも思うと、沖縄の方々が歩んでこられた歴史には
私たちには計り知れないものがあったのだと胸が痛みます。
この痛たましい出来事は、新聞で全国に知れ渡り、心を痛めた1人の女性、日本航空のスチュワーデス 近藤 充子さんが
土がだめなら甲子園の石を・・・と首里高校ナインの元へ温かい心が届けられた。
その石は、甲子園のダイアモンドに形を変え記念碑に埋め込まれ、今でも首里高校で友愛を繋いでいる。
そして、今日は沖縄本土復帰38年を迎えました。
第二章 あららがま ~島の魂~
あららがま... なにくそ魂
甲子園を目指す沖縄離島の宮古高校球児のドラマ
第三章 酒田大火と甲子園
1976年10月29日 山形県酒田市にあった映画館が火元となった火災を背景に
「復興の象徴」として持ち上げられた酒田東ナインの想い・・・
謙虚・連帯・不屈 そして感謝と勇気を意識して甲子園出場を果たした酒田東高校のドラマ
第四章 幕を開ける少女
甲子園を目指しているのは球児だけではない。
夏の甲子園全国から勝ち抜いてきた球児たちの先頭をあるくプラガール
西宮高校だけに許された憧れの甲子園をめざす少女のドラマ
第五章 世田谷版・七夕物語
高校野球はあくまで人生の通過点。学んだものをどう生かしていくか・・・
都立総合工科の挑戦。
第六章 不可欠なポジション
プレーヤーか裏方か・・・
最後の夏を前にした現実。
いつもスタンドが気になる自分にとって、この一章は胸の詰まる内容でした。
選手の想い、監督さんの想い。
岡山東商業高校ナインの苦悩と勇気の決断のドラマ。
第七章 最後の野球部員たち ~快進撃と亀裂~
少子化を背景に高校の統一化が生んだ選手たちの戸惑い。
千差万別、選手たちにも色々な考え、想いがあるように、指揮官も信念、考え方が違う。
時として、それが選手を苦しめることにもなってしまう。
三重高校、緒方工業、三重農業の三校が統合され誕生した「豊後大野連合」のドラマ。
それぞれのチームや、取り巻く人々には大小はありながらも、それぞれのドラマがあることを知り、
また改めて甲子園という場所が球児にとって、どれだけ大きな存在であるかを考えさせられた一冊でした
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