フランスにあって、ポルトガルに無い物…はいくつかある。
そのひとつが、食べられる野生の茸である。
もちろんポルトガルでも今ごろの季節、森を歩けばいろんな種類の茸が見つかる。
色とりどり、姿、形も様々で、探し歩くのはとても面白い。
でも食べられるのは全然ない…とポルトガル人は言う。
以前に数回ほど森に入ってたくさんの種類の茸を採ったことがあった。
それを村人たちに見てもらったのだが、みんな口々に「だめだ、どれも食べられないよ」「こんなの食べたらオエーッだよ」などと笑っていた。
でもこんなにたくさんの種類の茸が自生しているのだから、ぜったいにいくつかは食用に適したのがあるはずだ。
ポルトガルは気候が良くて、食用の作物が豊富に手に入るので、茸など食べようとはしないのだろうか…。
今年も10月の初めにフランスに行ったのだが、パリのムフタ-ル通りの朝市で茸が数種類売っていた。
松茸に形が良く似たセップも並んでいたが、まだ季節の走りなので値段がすごく高くて買うのを諦めた。
一キロで50ユーロ(6750円ほど)以上もした。
フランスの田舎に家を持っている知人によると、門を出ると、すぐ側の道端にセップがいくらでも顔を出しているという。
収穫した野生のセップを、食べきれないのは冷凍保存しておいて、季節が終ってからも時々取り出してスパゲティといっしょに炒めて味を楽しむそうだ。
家の門を出た所に毎年かってに生えてくる茸!それを茸狩りしてどっさり収穫できる!なんともうらやましい環境だ…。
ところがつい最近、ポルトガルのニュースを見ていると、村人たちが茸狩りをしている様子が写った。
場所は北の方の山。
村の老人たちが籠を片手に、棒を持って森の中を歩き回っていた。
時々立ち止まって、「これは食べられる、これは駄目だ」などとカメラに向って解説している。
かなりの知識と年期が入っている様子。
やっぱりポルトガル人も茸を採っているのだ!
老人たちの籠の中はまたたく間に茸がどっさりになった。
そのほとんどは茶色くずんぐりした形。フランスのセップによく似ている。
ポルトガルにも松茸に良く似たムスクロという茸があるらしい…とは話に聞いた事があったが、これがそうかもしれない。
老人たちはそれぞれ籠いっぱいの茸を持って村の農協みたいな所に集ってきた。
自分で食べるのではなく、売りにやって来たのだった。
計りにかけられた茸はその場で箱に詰められている。
驚いたことに奥の部屋には茸の入った箱が山のように積み上げてある。
スペインから商人が買い付けにくるという。
ひょっとしたら、スペインを素通りしてフランスの市場まで運ばれるのかもしれない。
ということは、パリのムフタール市場で私が買おうかな…と一瞬思ったあのセップは、ひょっとしたらポルトガルの森で採れたものかも…?
ムムム~、森に茸狩りに行こう!
でもちょっと待って!
去年日本から買ってきた「茸の本」にこう書いてあった。
「食べられる茸と毒のある茸はとても良く似ている物がある。もし運悪く強い毒茸を食べてしまったら、あなたは一週間ほど苦しんだあげく、確実に死にいたるでしょう…」
上記のTVを見た二日後、茸狩りをした六人のポルトガル人が毒茸に当って病院に担ぎ込まれた…というニュースを流していた。
幸い軽症ですんだらしいが。
彼等もその前にあのニュースを見て、森に出かけたのだろうか?
MUZ
©2004,Mutsuko Takemoto
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(この文は2004年12月号『ポルトガルのえんとつ』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルのえんとつ』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しずつ移して行こうと思っています。)