道しるべの向こう

ありふれた人生 
もう何も考えまい 
君が欲しかったものも 
僕が欲しかったものも 
生きていくことの愚かささえも…

あの日々から…

2020-08-12 18:19:00 | 日記

途切れ途切れの記憶の中

辿り着こうとしてたのは

僕が目指すべきゴールじゃなかった…

のだと今はわかる



だけど

元々目指していたゴールなんて

僕にあったのだろうか?

たとえあったとしても…










あの日キミが

ヘベレケに酔った千鳥足のボクを見つけて
拾うことなんかしなければ…

道に迷うことなんかなかったと…




これからドライブでもしましょうか?

ドライブ?


ドライブというキミの言葉が
何を意味していたのか
何を求めていたのか…

そして
ボクに何を与えようとしていたのか…


ダメ?
行く?

そうだ!
港へ行こう!
暗い夜の港!
誰もいない!


助手席でフラフラになりながら
酔いにまかせて大声で叫びつつ
盛り上がっていた真夜中の12時半…

酔っていた割には
今でもハッキリ覚えている
なぜかは自分でもわからないけど…









誰もいない夜の港へ
キミはハンドルを切ったはずなのに…

ボクたちが辿り着いたのは
暗い夜の港じゃなかった

いや…
夜の港だったのかもしれない
或る意味で…

今となっては
行くべきじゃなかった
闇の中の港とも言える…



ちょっと気持ち悪くなってきた

大丈夫?

少し横になりたい
どっかで停めて…

じゃあ…
あそこ入るわね?

えっ?
あそこ入るのか?

そう…










こんなに苦しむのなら…

どうして
思いつきで言ってしまったんだろう
夜の港へなんて…

そして辿り着けなかったなんて…

まっすぐ帰ってさえいれば…

何も見えないほど闇の中の港で
溺れることなんかなかったのに…









溺れるとは思ってなかったんだ
最初は…

単なる弾みで飛び込んだだけだと
簡単にそう思ってたんだ…

少なくとも
そのときのボクは…

キミはどう思ってたのだろう?
ボクと同じだったのか?
それとも
そうじゃなかったのか?

今となっては
知るスベもなく…


それから
予想もしてなかった
とてつもない新たな苦しみから
逃れる日々が訪れ…

ボクは…
走り始めた…

毎日…

でも
いくら
走っても
走っても…

むしろ
走れば走るほど…










僕は今もまだ走り続けている

泥沼のような日々
とっくに過ぎて…

あれから何年も経ったというのに…



新しい誰かを見つけて
今は母親になったという風の便り

母親になってしまえば
夜の港で溺れていた過去なんて
とっくに忘れちまって…

毎日が
母親として精一杯の繰り返しだろう

僕の知らない世界で…



それはそれで…

喜ぶべきことなのだろうと
頭でわかってはいるけど…

時の流れに乗り遅れてしまった
往生際の悪いジジイにとっては…

今もなお…









僕は当分
走り続けるしかない

と…

いまだに
逃れることのできない
夜の港を彷徨っていた
あの日々から…




いつまで
走り続ければいいのか?

本当のゴールはどこなのか?

どこへ向かえばいいのか?

頼りない道しるべすら
僕には見つけられず…




たとえ
明日も走り続けたとして…