あなたに初めて出会ったとき
とても年上には見えなくて…
そんなに美人でもなかったのに
だけど何かが光り輝いていた
みんなと違う何か
僕だけに見えてたんだろうか?
それが何なのか
今でもわからないまま…
まさか結婚していたなんて
子どもまでいたなんて…
世間知らずの僕には知るスベもなく
引き寄せられるように近づいてしまったのが
間違いのハジマリだったと…
幾度か繰り返したもどかしい駆け引き
人目を忍んで愛し合うようになるまでには
それなりの月日も…
半ば強引だった僕のガムシャラな想い
あなたは嗜めることもなく受け入れてくれ…
微かに見える暗闇の中で貪るようにして
あなたの細くて折れそうな身体を
力いっぱい抱きしめ続けるだけだった
あの日
ワイシャツの胸元に付いてしまった紅いベニ
何度拭いても取れなくて…
捨てなければ
今も紅い跡は残ってただろうか?
変わりゆく時代の中
ずいぶん遠いあの日の…
初孫くんの急かすような大声に促されて
慌ててパジャマを着替えた
屋根をオープンにして
暑くなりそうな朝陽を浴びながら
初孫くんと2人の数分間のプチドライブ
自宅に戻ってきて
バックミラーにボヤける誰かの面影に
戸惑いながらガレージに愛車を入れた
なんだか今日は変だと感じながら
いつものジョグへ…
この子をお供にして…
2キロ手前のちっちゃな美容室
キュートな彼女はすでに誰かの後ろに立ち
髪を触ったまま顔を上げることもなく…
僕が走り過ぎたのがわかっただろうか?
わからなかったかもしれないけど…
ザンネンでもあり
ホッとする気持ちでも…
年老いて枯れそうなジジイの頼りない想い
まるで少年のようにビミョ〜に揺れ動き…
たとえ百戦錬磨だったとしても
戦いはいつも初舞台
シナリオどおりに進むことはない
走ってるだけなら
走って通り過ぎるだけなら
こんなにも揺れ動かなかったはず…
この前触れてしまったから
細く小さい肩に触れてしまったから…
今日こそ疲れ切った老体
思うように動かないけれど
惰性の10キロなら息を切らせながらでも…
目を瞑ってでも走れるだろうか?
それが出来ないなら…
いや
たとえ出来なくても…
もうすぐ見えるようになるさ
目を瞑ってても…
風の震える声が聞こえた
もうチョットの辛抱さ…
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