「平和百人一首」とこのシリーズについての解説は、初回記事と2回目の記事をご参照ください。前回記事はこちらで見られます。
なお、かなづかいや句読点、誤字や脱字等は原文のままとするので、読みづらい点はご了承ください。
平和百人一首
入つ陽に想ひは深し悔ゆるなく 君にとつがむ日は迫りつつ
大阪府守口市北寺方 田古里 文子
敗戦直後の混濁した日本に、8ヶ年の青春を戦に捧げて復員致しました主人との婚約中の歌であります。
疲れている主人には、美しい心情に依存する以外には物心両面かへつて私がいたわりの心を労する状態であろうがこれが大勝を恃んで敗れた戦後の日本女性としての生きる道であると信念致し、すべての夢を捨て、みにくい現状に打ち勝つて誰よりも意義深い美しい家庭を築かうと考えて居りました。
かく憶ひ新たな時、真赤な入日に、すぎこし方、これから苦難を越えて立ち上らうとする先々を思ひめぐらして詠んだ歌であります。
美しき心をもてる君にそひ生きんとすでに心定めぬ
万人の中の一人を夫と呼ぶえにしはただに涙ぐましも
(文子)