5.
2006年8月。夏の暑さが苦手な私も、冷えがこたえた今年はありがたかった。暖かいと、やはり体は格段に楽なようだ。
親たちの騒動にも一区切りがつき、フォーラムに参加してホルモン療法に前向きになろうと思った私は、以前からかかってみたかった漢方医の門を叩くことにした。ホルモン療法の副作用を漢方薬でコントロールすることにより、ホルモン療法と免疫力のバランスをとるのが一番良いだろうと思ったのと、現在服用している漢方薬が果たして今の体調に合っているかどうかを確認しておきたかったのだ。その漢方薬は、自己処方により主治医のY先生に出してもらっている薬*なのだから。
その漢方医、YクリニックのT医師は、ヨガの先生や鍼灸師までもが信頼して通う名医との評判で、何度かテレビにも出ている女医だ。ヨガ教室のS先生のかかりつけ医でもあった。“先生たちの先生”であるなら信頼度は高いに違いないだろうし、保険診療なのも魅力的だった。
受付で、まずは「漢方診療にしますか?」と訊かれ、質問の意図を確認すると、漢方診療と一般的な内科診療とを選べることがわかった。漢方診療を選ぶと、今度はA4用紙3枚にわたる問診表を渡された。これに答えているだけで、漢方治療が全身を診る治療であることがよくわかる。問診表を書き終え、診察の順番を待つ間受付に置いてあるT先生の著書*をめくってみると、先生自身が若い頃冷えに苦しみ、西洋医学から東洋医学への道に入ったことが記されていた。
T先生は60代後半だろうか、物腰は柔らかいがさばさばした雰囲気の女性だった。元来の冷え症がホルモン療法によりさらに進んでいて辛いことを私が訴えると、先生は最初の冷えを感じるようになったのはいつ頃かと尋ねた。20代後半、2人目を産んだ直後からだと告げると、「そんな頃から冷えを感じ始めてたとすると、行き着くところまで行った結果が乳がんよ」と、ずばっと言い切った。その口調がさっぱりとしてはいるもののあまりに断定的だったので、私が呆気にとられていると、「もっと早く対処していればね……でも、なってしまったものは仕方ないから、これからのことを考えましょう。このまま冷えを放っておいたら、あなた、次は子宮がんが待ってるわよ」と、さらにあっけらかんと続いた。初対面でここまで言い切られては返す言葉もなく、私は笑ってごまかすしかなかった。すると、少し言い過ぎたとでも思ったのか、T先生は私の表情を窺いながら相好を崩してつけ加えた。「なんて、あんまり脅かしてもいけないけど、でも本当よ。とにかく体を冷やしちゃだめよ。ほら、私だって…」と、幅の広いベルト状の布を巻いた足首を見せてくれ、診察室には真夏でも冷房を入れていないと言った。
* 自己処方するに至った経緯は、過去記事: 「第6章 ホルモン療法 25.」 「第6章 ホルモン療法 26.」をご参照ください。
* このとき私が手にした著書は現在絶版になっているので、現在手に入る別の著書の一部をご紹介します: 『「冷え症」を治す』
2006年8月。夏の暑さが苦手な私も、冷えがこたえた今年はありがたかった。暖かいと、やはり体は格段に楽なようだ。
親たちの騒動にも一区切りがつき、フォーラムに参加してホルモン療法に前向きになろうと思った私は、以前からかかってみたかった漢方医の門を叩くことにした。ホルモン療法の副作用を漢方薬でコントロールすることにより、ホルモン療法と免疫力のバランスをとるのが一番良いだろうと思ったのと、現在服用している漢方薬が果たして今の体調に合っているかどうかを確認しておきたかったのだ。その漢方薬は、自己処方により主治医のY先生に出してもらっている薬*なのだから。
その漢方医、YクリニックのT医師は、ヨガの先生や鍼灸師までもが信頼して通う名医との評判で、何度かテレビにも出ている女医だ。ヨガ教室のS先生のかかりつけ医でもあった。“先生たちの先生”であるなら信頼度は高いに違いないだろうし、保険診療なのも魅力的だった。
受付で、まずは「漢方診療にしますか?」と訊かれ、質問の意図を確認すると、漢方診療と一般的な内科診療とを選べることがわかった。漢方診療を選ぶと、今度はA4用紙3枚にわたる問診表を渡された。これに答えているだけで、漢方治療が全身を診る治療であることがよくわかる。問診表を書き終え、診察の順番を待つ間受付に置いてあるT先生の著書*をめくってみると、先生自身が若い頃冷えに苦しみ、西洋医学から東洋医学への道に入ったことが記されていた。
T先生は60代後半だろうか、物腰は柔らかいがさばさばした雰囲気の女性だった。元来の冷え症がホルモン療法によりさらに進んでいて辛いことを私が訴えると、先生は最初の冷えを感じるようになったのはいつ頃かと尋ねた。20代後半、2人目を産んだ直後からだと告げると、「そんな頃から冷えを感じ始めてたとすると、行き着くところまで行った結果が乳がんよ」と、ずばっと言い切った。その口調がさっぱりとしてはいるもののあまりに断定的だったので、私が呆気にとられていると、「もっと早く対処していればね……でも、なってしまったものは仕方ないから、これからのことを考えましょう。このまま冷えを放っておいたら、あなた、次は子宮がんが待ってるわよ」と、さらにあっけらかんと続いた。初対面でここまで言い切られては返す言葉もなく、私は笑ってごまかすしかなかった。すると、少し言い過ぎたとでも思ったのか、T先生は私の表情を窺いながら相好を崩してつけ加えた。「なんて、あんまり脅かしてもいけないけど、でも本当よ。とにかく体を冷やしちゃだめよ。ほら、私だって…」と、幅の広いベルト状の布を巻いた足首を見せてくれ、診察室には真夏でも冷房を入れていないと言った。
* 自己処方するに至った経緯は、過去記事: 「第6章 ホルモン療法 25.」 「第6章 ホルモン療法 26.」をご参照ください。
* このとき私が手にした著書は現在絶版になっているので、現在手に入る別の著書の一部をご紹介します: 『「冷え症」を治す』
私も身体を冷やさないように30を過ぎてからは、冷たいものは控えるようにしています。
水は夏でも常温で飲むようにしているので、硬度の高いのはちょっと苦手です。
食べ物では黒いものや色の濃いものを中心に摂るようにしています。
自転車に乗り始めた頃は、思い切り身体を冷やしてしまいお灸をされても何も感じないほどひどい状態になったことがあります。
とにかく身体を冷やしっぱなしにしないようにして、鍼灸の力も借りながら自転車に乗り続けています。
良い先生に巡り合えてよかったですね!
男性は女性に比べると暑がりが多い(少なくとも私の周りでは)ようですが、やはり冷えに気をつけていらっしゃる人もいるのですね。感心!
黒いものや色の濃いものですか...海藻や緑黄色野菜など、そうですね。なるほど、そういう覚え方があるのですね。
スポーツマンで見た目は健康そのものに見えても、やはりその人なりの健康管理をしているのでしょうね。
今年は藤之助さんに私の知らない世界を覗かせていただきました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。良いお年を!