9.
Yクリニックからの帰途の間、私の耳元にはT先生の言葉が何度も甦った。「行き着くところまで行った結果が乳がんよ」「もっと早く対処していればね…」「このまま冷えを放っておいたら、次は子宮がんが待ってるわよ」 発病してからこの方何度も浮かんでは明快な答えが出せずに頭の隅に追いやっていた疑問、「なぜ私はがんになったのだろう?」という疑問が、T先生によって一刀両断に解けたような思いだった。
一見乱暴な回答のように思えるし、がんに至るまでには長く複雑な過程があったのだろうが、「冷えは万病のもと」という言われを考えると、先生のこの指摘は鋭く核心を突いていると思えた。冷えが血行不良を生み、正常な細胞の生成や活動が衰え、正常な細胞より生長の速いがんが増殖、ひいては病気として発症するのだろう。そう言えば、「女性に乳がんが多いのは、乳房が突起していて血行が悪いため」という説明を、冷えか免疫学の本で目にしたことがある。これはT先生の言葉と根っこでは一致しているではないか。
冷えによる血行不良のもたらす副産物は、私の体の中でがんとしてだけではなく、いろいろな形で現れている。これらは、女性ホルモンを抑えるようになって冷えが進んでから特に顕著だ。具体的には、腰痛や肩こりなど関節や筋肉の痛み。それから、ホルモン治療を2種類併用していた頃、声に張りがなくなり、歌うときに以前のような裏声が出せない時期があった。歌手の綾戸智絵*さんが乳がん治療のために女性ホルモンを抑えたことで一時期声が出なくなったとTV番組で言っていたが、私も同じ現象だったのだろう。声帯も筋肉だから、血行不良が原因だったのではないかと思う。
また、地元のとある友人のかかりつけの眼科医が言ったという言葉が、印象深く思い出される。「毎日10分間蒸しタオルを目に当てれば、私の患者は半分に減りますよ」というものだ。やはり目とて血行不良がさまざまな病気につながるという事実を、端的に表した言葉ではないだろうか。「冷えは万病のもと」という言われどおりだ。
こうして、自分のがんの原因が明らかになったことですっきりし、今後の治療の的を絞ることができたのは、本当にありがたかった。しかし、それは同時に、冷えの人為的原因にもなっている女性ホルモンを抑える治療に、はたまた疑問を投げかけることにもなってしまった。これまで何度も言及したように、ホルモン療法は、女性ホルモンと合体して増殖するタイプのがん細胞を3分の2の確率で抑えることができる一方で、女性ホルモンが司っているさまざまな機能をも抑えてしまう両刃の剣だからだ。冷えががんの原因で、それに対処しないでいるとさらに別のがんになる、と指摘されたにもかかわらず、私はホルモン療法で人為的に体を冷やしてしまっているのだ。事あるごとに突き当たるこの矛盾には、もはやうんざりだった。でも、このうっとうしい両刃の剣の治療と上手につき合うには、当面T先生の指導のもとで冷えをコントロールするしかないだろうと思った。
* 2008年1月現在は綾戸智恵
Yクリニックからの帰途の間、私の耳元にはT先生の言葉が何度も甦った。「行き着くところまで行った結果が乳がんよ」「もっと早く対処していればね…」「このまま冷えを放っておいたら、次は子宮がんが待ってるわよ」 発病してからこの方何度も浮かんでは明快な答えが出せずに頭の隅に追いやっていた疑問、「なぜ私はがんになったのだろう?」という疑問が、T先生によって一刀両断に解けたような思いだった。
一見乱暴な回答のように思えるし、がんに至るまでには長く複雑な過程があったのだろうが、「冷えは万病のもと」という言われを考えると、先生のこの指摘は鋭く核心を突いていると思えた。冷えが血行不良を生み、正常な細胞の生成や活動が衰え、正常な細胞より生長の速いがんが増殖、ひいては病気として発症するのだろう。そう言えば、「女性に乳がんが多いのは、乳房が突起していて血行が悪いため」という説明を、冷えか免疫学の本で目にしたことがある。これはT先生の言葉と根っこでは一致しているではないか。
冷えによる血行不良のもたらす副産物は、私の体の中でがんとしてだけではなく、いろいろな形で現れている。これらは、女性ホルモンを抑えるようになって冷えが進んでから特に顕著だ。具体的には、腰痛や肩こりなど関節や筋肉の痛み。それから、ホルモン治療を2種類併用していた頃、声に張りがなくなり、歌うときに以前のような裏声が出せない時期があった。歌手の綾戸智絵*さんが乳がん治療のために女性ホルモンを抑えたことで一時期声が出なくなったとTV番組で言っていたが、私も同じ現象だったのだろう。声帯も筋肉だから、血行不良が原因だったのではないかと思う。
また、地元のとある友人のかかりつけの眼科医が言ったという言葉が、印象深く思い出される。「毎日10分間蒸しタオルを目に当てれば、私の患者は半分に減りますよ」というものだ。やはり目とて血行不良がさまざまな病気につながるという事実を、端的に表した言葉ではないだろうか。「冷えは万病のもと」という言われどおりだ。
こうして、自分のがんの原因が明らかになったことですっきりし、今後の治療の的を絞ることができたのは、本当にありがたかった。しかし、それは同時に、冷えの人為的原因にもなっている女性ホルモンを抑える治療に、はたまた疑問を投げかけることにもなってしまった。これまで何度も言及したように、ホルモン療法は、女性ホルモンと合体して増殖するタイプのがん細胞を3分の2の確率で抑えることができる一方で、女性ホルモンが司っているさまざまな機能をも抑えてしまう両刃の剣だからだ。冷えががんの原因で、それに対処しないでいるとさらに別のがんになる、と指摘されたにもかかわらず、私はホルモン療法で人為的に体を冷やしてしまっているのだ。事あるごとに突き当たるこの矛盾には、もはやうんざりだった。でも、このうっとうしい両刃の剣の治療と上手につき合うには、当面T先生の指導のもとで冷えをコントロールするしかないだろうと思った。
* 2008年1月現在は綾戸智恵
また万病のもと・・・ついついおしゃれを考えて,置き去りにしまいがちな私です。
母が元気であった頃、良く注意されたことありました。でもその頃は私もまだまだ若く、母の注意に耳を傾けることさえしませんでした。長年苦しんだ腰痛は、そして50歳を迎えて発祥したリューマチは、冷えが一因しているのでしょうか。
いずれにしても、今は大変に気をつけています。
そして今は母の言葉をそっくり娘に伝える私がいます。
takuestuさん、どうぞお大事にね。
腰痛やリューマチも原因は複雑なのでしょうが、もしかしたら冷えも関係あるのかもしれませんね。
人間、自分が痛い目に会わないとわからないものですよね。現在冷えに対して気をつけていらっしゃるのならば、それでよいのではないでしょうか?
私も娘にあれこれ言ってしまっていますが、彼女もまだまだ痛い目に会っていないものですから、わからないようで困っています。痛い目に会わないうちにわかってほしいと願っているのですが...だめでしょうね。
代々同じことを繰り返していくのかもしれません。